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4月は花見!2

 「えー、なんかもう暑くない?」

 桜がきれいな原っぱにシートを敷いて重箱を並べていると汗をかいてきた。

 目の前は川で風は心地よい。

 スズメなどの鳥が桜の花弁を良い感じに散らしている。

 「花鳥風月だね」

 「月ないけどね」

 ミタマの発言にてきとうに答えながらウカは料理をつまんでいく。

 「うっま!」

 「あ! イナも食べるー!」

 「俺も!」

 料理を食べ始めたウカに負けまいとイナもミノさんもがっつき始めた。

 「うめぇ! 来て良かった!」

 「おいなりさーん! おいなりさーん!」

 「……花は見ないのか」

 あきれたリガノは料理をつまみながら桜を眺める。

 今日は平日だが、花見客が多かった。隣の団体花見客を見て、リガノはお茶を吹き出した。

 「ちょっとリガノくん、汚いんだけど」

 ウカがため息混じりにリガノを見るも、リガノはむせながら隣のシートを指差した。

 「えー、なに? ……あ」

 ウカはてきとうに隣を見て固まった。時神達と太陽神サキがお花見をしていた。上司の紅雷王プラズマ、太陽神サキが両方そろっている。

 「やっばっ! 撤収!」

 のんびりしているミタマとイナ、ミノさんに撤収を呼びかけた時プラズマが、来るのを予想していたかのように立ち上がった。

 「やあ、稲荷神、楽しいか? 桜がきれいだもんなあ?」

 「え、あー、そうっすね?」

 青い顔をしている稲荷達に代わり、ウカがてきとうに返す。

 「別に強制はしねぇけども、稲荷ランキングは大丈夫だったのか?」

 「そ~う、そう! 私なんて名前が一番上に……」

 「ウカちゃん、皆一緒だって、ひとりだけ逃げないよ、わかってるよね?」

 ミタマに突っ込まれたウカは唸りつつ苦笑いをプラズマに向けた。

 「まあ、そういうことで……」

 「どういうことだよ?」

 プラズマに尋ねられて冷や汗のまま後退りするウカ。

 それを見たサキがてきとうに答えた。

 「まあまあ、プラズマくん、稲荷ちゃんらは去年、なかなか活躍していたじゃないかい。あたしは見ていたよ。あたし達だって、結局どっちが稲荷ちゃんらを管理するかわかってないし、去年はプラズマくん、放置してたんだからあんまり強く言わなくても」

 「俺は時神の管理で精一杯なの! アマテラス様の子孫だから仕方ないけどな……。稲荷はどうなんだ? 俺達高天原北の頭、北の冷林(れいりん)……安徳帝の管理になるから俺が見るのか? それとも、アマテラス様の力を受け継いだ太陽神の管理なのか?」

 「さあ?」

 「さあって……あんたな……」

 プラズマがあきれ、サキは笑う。

 「まあ、あたしは太陽神をまとめてて、霊的太陽から動かないから、慕われてても何にもできないよ? アマテラス様の子孫のプラズマくんが管理するべきなんじゃないかい?」

 「またそういう……」

 プラズマとサキが話している間に、稲荷達は風呂敷を畳み、シートを回収してさっさと逃げ出した。

 「あー、びっくりした……」

 河川敷とは別の山桜の下に再びシートを広げたウカは大量の冷や汗をぬぐいながらいなり寿司をつまんでいた。

 「びっくりしたね……」

 ミタマもおかずをつまみつつ、おにぎりを食べていた。

 「と、いうか……」

 イナはいなり寿司をウカと奪い合いながらつぶやく。

 「イナ達はさ、誰の下についてるの?」

 「それな」

 ウカはいなり寿司を口に放り込みながら答えた。

 「太陽神サキじゃねぇんだなあ? わかんなくなってきたぜ、俺。あ、まあ、元々知らねぇけど。アハハハ!」

 ミノさんは呑気に笑い、サトイモの唐揚げを食べながらお酒を飲み始める。

 「ミノさん、私にも」

 「えー……はい」

 ウカが猪口を出してきたので、ミノさんは渋々注いだ。

 「ウカちゃん、飲み過ぎないでね、面倒くさいから」

 「そうだ。ウカは飲み過ぎると面倒くさい。花見だから嗜むのはいいが」

 ミタマとリガノがそれぞれウカに言いながら猪口をミノさんに差し出す。

 「おたくら、自分でやれよ……」

 ミノさんは文句を言いながらミタマとリガノにお酒を注いだ。

 「イナも!」

 「あんたは麦茶にしときな。お酒はまだ早い」

 「えー! イナも飲みたいー!」

 騒ぐイナを押さえといて、ウカは猪口の中身を飲み干した。

 「はあ、いいお酒~。桜もきれいで最高の花見。プラズマのことは忘れよ?」

 「忘れるの? まあいいけど」

 「見なかったことにするか」

 ウカにミタマとリガノが賛成した。彼らはだいたいウカに従う。

 「さあ、花見、始めよう!」

 イナが手を上げ、稲荷一同も一斉に手を上げた。

 「そこらに咲く桜もいいものだ」

 「この野桜さ、型にはまらない僕らみたいだよねー、好き」

 「……俺達はハマらないといけないとは思うが……な」

 ミタマにリガノは苦笑いで言った後、桜と青空を見上げた。


 観察日記。

 そういえば、上司だと思ってたんだけど違ったみたい。勝手にサキ様、プラズマくんだと思っていたけど、違うのかな? だったら自由にやりまくるのもいいかもね。

 でもなんだろうな?

 プラズマくんみたいな神には従うべきだよなとは本能的に思う。

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