2月は節分1
「鬼はー外ー!」
よくわからないがウカはてきとうに社の内部で大豆を投げる。
「ちょ、ウカちゃん? 部屋に豆投げる? 普通外じゃない? 鬼は外って……」
なんとなく遊びに来たミタマは部屋が豆だらけなウカの社をあきれた目で見つめた。
「あ、ミタマくんじゃん。寒いから部屋でやってんの。てきとーに。豆は後で回収しておいしいおやつにしてもらうんだからー」
「……自分でするんじゃなくて、してもらうのね。あれかな、リガノとか?」
「そそ、そろそろ来るでしょ」
ウカが豆を集めだし、ミタマがため息をついた頃、リガノが現れた。
「……何をするべきかわからなかったから……来たぞ」
「うわあ……ウカちゃんの都合いい時にきた……。それだから使われるんだよ……」
「……?」
眉を寄せたリガノにウカが集めた豆を見せ、満面の笑みで言った。
「これを衣にして揚げ物とか、チョコまぶしてみるとか、なんかおやつ食べたーい」
「ほら、きたよ」
ミタマはあきれた顔のまま、ウカの部屋のコタツに入り、みかんをむきはじめる。
「おやつ……だと! まあ、少し考えてみるか……。我ら稲荷神、邪気祓いに魔目を食って大丈夫だったか……」
「ま、ダメだったらお腹壊すだけよ、心配ないし」
ウカはミタマの向かいに座り、コタツに入った。
「軽いなあ」
「なんかさ、鬼でも出ないかなあ。やっつければ信仰心上がるんじゃね? モモタローみたいにー。あ、陰陽師?」
「やめてよ、ウカちゃん。太陽神系列の僕達が鬼を出そうなんてさ」
ミタマはため息をつきつつ、さらにみかんをむきはじめる。
「こんにちはー! 暇だったから遊びにきたー! まださっむーい!」
外から元気な少女の声が響いた。
「あー、イナまできた……」
「ねー、ねー、なにしてんのー? なんかおやつあるー?」
イナはウカの社へ自分の家のように入り込み、何やらやっているリガノを覗いていた。
「はあ、また結局さー」
「さっみー! コタツ入れて~」
ウカが話している途中でキツネ耳の赤いちゃんちゃんこの青年がコタツに入り込んできた。
「全員集合しちゃうわけよ」
「ミノさんまできちゃって……」
ミタマがため息をつきながら横になる。
「はあー、寒いとやる気でないねー」
「ねー」
ミタマの一言に稲荷一同は頷いていた。そしてミタマはまた、みかんをむきはじめる。
「あ、みかんむきすぎたわ。三つも無心でむいてたよ……。食べよ」
のそのそとみかんを食べ始めたミタマにお怒りな声が響いた。
「まてまてー! やる気がなさすぎるぞ! お前ら!」
「えー……誰?」
ウカの社に入ってきた神を稲荷達は眠そうな目で見上げた。




