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五月病いなり1

挿絵(By みてみん)

 五月。

 新しい元号に変わり、新しい時代が始まった。

 新元号になって早々、真夏日が到来した。風があり、若草色の木々が揺れるが涼しさはなく、直射日光で顔がやられそうだ。


「あっつーい……」

 稲荷神のウカは掃除されていない廃墟のような自分の神社で太陽を恨めしそうに見ていた。


「てか、掃除する気にもならない……」

 ウカの神社は人が参拝にこないため、管理されておらず自分で掃除をするしかない。


「社も新しくしたいなあ……。ちゃぶ台と畳のせっまーい部屋じゃなくてもっと広くて冷暖房完備でお姫様みたいなベッドに天蓋つけて!専属のシェフにシステムキッチン! ワインかなんか嗜みつつ夜景をバックに露天風呂を楽しむ……」

 ウカはひとりで盛り上がり、やがてため息をついた。


「はあ……一回、人間みたいに生活してみたい」

「ウカちゃーん! 遊びに来たよ。ありゃ?」

 グダグダしていたウカの前に現れたのは穏やかな青年稲荷ミタマだった。


「あー、ミタマ君。調子は?」

「ダメダメー。やる気出なくてね……」

「だーよねー」

 ウカとミタマはお互い魂の抜けた声を出した。


「あれぇ!? ウカちゃーん、ミタマ君! グッデクデ!」

 今度は元気な少女稲荷イナが現れた。後ろには寡黙で真面目な青年稲荷、リガノもいる。


「あー、また結局同じメンバー……。イナとリガノは最近なんか活動してる?」

 ウカの質問にイナもリガノも首を横に振った。


「なんかいいお天気だからお昼寝がねー!」

 イナが苦笑いでウカとミタマを仰いだ。

「やる気の出し方がわからん」

 リガノは真面目な顔で真面目に答えていた。


「まあ、結局のところ……」

 ミタマが渋い顔で頭をかく。


「皆、五月病だね!!」

 ミタマの言葉を続けるようにウカが元気よく声を上げた。


「あははは!!!」

 そしてとりあえず目を合わせて笑いあってから

「はあああ……」

 と深いため息をついた。


「こんなんじゃダメだよ!」

 イナが真剣な顔で叫んだ。

「じゃあどうする?」

「とりあえず、やる気を出す方法をネットで検索する?」

「人間くさいな……」

 ミタマの発言をリガノがため息混じりにつっこむ。


「頑張るの、六月からでいいか」

「おいおい……」

「五月は休息月? やばいやばい! ずっとこうなるよ!」

 ウカの発言にリガノとミタマは同時に声を上げた。


「だよねぇ……。あ、イナちゃん、リーダーでしょ!なんとか考えてよ。楽なやつで」

「えー!! ま、まあ私が同盟を組んだから私がリーダーか……。うーん……」

 ウカに問い詰められイナは首を傾げて考えた。


「か、怪現象を起こしてみる……とか?」

「いたずら? おもしろそう!!」

「待て待て! 縁結びとか食物神とかなのに怪異はどうなんだ?」

 喜ぶウカを慌ててリガノが止める。


「……まあ、地域の稲荷はなんでもありだし……たたりとか恐れられて祭られたりとかもあるよ」

「それは信仰心とは離れるんじゃないかな? 稲荷ランキングは信仰心だよ?」

 ミタマの意見にウカ達は頷く。


「まあ、確かに……じゃあどうする? やる気が起きないんだけど……。あ! やる気の神様にお願いしてみるとか……?」

「やる気スイッチ探そう!! よーし!」

 ウカとイナがそれぞれ声を上げた。結局はやる気から出すことになった。


「嘘だろ……信仰心どころか……やる気から……」

 リガノは頭を抱えた。


「じゃあ、リガノ君はあれだね。『やる気出す方法』をネットカフェで検索だね。あははは……」

「嘘だよな……?」

 ミタマの乾いた笑いにリガノは深いため息をついた。


「まあ、やる気出さないとできないことだからさ」

「……まあ……そうだな。うむ」

 結局のところ、やる気の出し方を色々と試している内に五月の半分が終わった。


 ウカ達はため息をつき、同時に「一体何をしていたんだ……」と声を上げるはめになった。


 見てわかる通り、彼らはこうだから落ちこぼれなのである。

 前半はこんな感じで終わってしまった。

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