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一月のこと1

 雪が降り寒い冬。

 静かな高台の稲荷神社は雪の降り積もる音が聞こえそうなほど静か。

 いや、この神社はいつも静かか。

 「ウカちゃーん、寒いね。今年の稲荷ランキングどうするー?」

 神社の扉の前で話しかける青年は気だるそうに伸びをした。

 青年は銀色の髪にナイトキャップを被り、羽織に袴というわけのわからない格好だ。

 「サムイ、ユキ、フッテル」

 神社の中からだらけきった少女の声が聞こえる。

 「……ねぇ、ウカちゃん、日本に初めてきたどっかの原住民みたいな言い方やめてくんない?」

 「サムイ、ユキ、ナンモシタクナイ」

 「うん、僕もなんもしたくないから遊びにきたようなもんだけど……顔くらい出してよ」

 ナイトキャップの変な青年が声をかけるとウカと呼ばれた少女が扉を開け、顔を出した。

 ピエロが被る帽子を被った金髪の着物を着た変な少女だった。

 「あー、ミタマくん。ユキ、フッテル」

 「知ってるよ……。雪の中歩いてきたからさ。で、稲荷ランキングが……」

 「なんだっけ? それ」

 ウカと呼ばれた少女は首を傾げた。

 「いや、いつも頑張ってるアレを忘れたの? たくさんいる地域、地域の稲荷神達が信仰と絆をどんだけためられたかを競うランキングじゃないか。で、ここ百合組地域の稲荷達はすべてが底辺だから作戦会議で上位に食い込もうって感じでさ」

 「あー、昨日話したやつね。ユキ、フッテル」

 ウカは雪が降ってるから今日はやる気がないようだ。

 「うん、まあ、今日はいっか」

 百合組地域、ウカに続き、ミタマも実はやる気のない稲荷神である。

 「私達、どこまでもポンコツな気がする」

 「ん? トンコツ?」

 「ミタマくん、ポンコツだよ。私達は豚さんではなく、どちらかといえばキツネ寄りでさ」

 「ああ、ポンコツ……」

 ミタマは「なるほど」と頷いた後、眉を寄せた。

 「ちょ、それでいいの!? 自分達でポンコツって言ってていいの?」

 「良くないけどー、ユキ、フッテル」

 ウカは降り積もる雪を指差してから畳の部屋の真ん中にあるコタツを指差した。

 「みかんでも」

 「いいねぇ。お鍋にお餅やりたい」

 「じゃあ、百合組皆、呼ぶ?」

 「そうしよう! あ、イナは爆食だから沢山食材いるよねー。リガノに食材持ってきてもらおうか、ミノさんは来るかなあ」

 「くるっしょ、食う寝る好きだし」

 ウカとミタマは勝手に宴会の話を進める。百合組稲荷はお仕事のやる気は壊滅的だが楽しいことへの動きは早い。

 「じゃあ呼ぼう!」

 ミタマは神々のテレパシー電話を使い、この地域の稲荷に電話をかけた。

 「どう? 来そう?」

 「皆、秒で来るっぽい」

 ミタマは苦笑いで答えた。

 こういう時だけ百合組稲荷は団結力が強い。

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