節分の鬼2
今年の方角、西南西を向き、恵方巻を食べる。途中イナが笑わせにきたがウカは我慢して食べきった。
「ぷはー!食べきった!おいしかったー!……イナ!余計なことしないでよ!」
ウカは食べた瞬間にイナを睨み付ける。
「いやあ……なんか笑わせたくなってさ。自爆しないで良かったよ」
イナはお茶を飲みながら、先程自分がやったことに対し、笑いを堪えていた。
「皆、食べたね」
ミタマが手を合わせて「ごちそうさま」をするとお皿を流し台に持っていった。
「ところで……怪現象とは何をすればいいのだ?」
リガノがお茶菓子のお饅頭を並べながらのんびりヤモリに尋ねた。
「そうねぇ……。今日は節分だから『鬼が来たぞ!』とか……。あ、いや……忘れて……。ガラス窓を揺らすみたいなちょっとした事しかできないでしょ」
ヤモリは饅頭をさっそく頬張りながら答えた。
「うーん。ガラスを揺らす……。メッセージ性が皆無だわね」
ウカは唸りながら饅頭を咀嚼する。
「メッセージ性がほしいなら……メッセージにすればいいよ」
ヤモリは思い付かずにそんなことを言い、食べたお饅頭のお皿を台所に持っていってから、伸びをした。
「メッセージにする……怪現象?」
「じゃあ、私は弟さんに接触してみるから場所教えて」
「え?あ、ああ……うん。えーと」
ヤモリは「ごちそうさま」と声をかけると場所を教えてもらってから去っていった。
「メッセージ……」
「ウカちゃん……何するつもり?」
なんだか嫌な予感がしたミタマはウカに恐る恐る尋ねた。
「自ら警察に行くようにする」
ウカは軽く笑うとお茶を飲み干して勢いよく外へと飛び出していった。
「何するかわからんが……追いかけようか」
「そうだね」
リガノとミタマも慌てて支度をし、ウカを追った。
「あー!待って!イナも行くー!!」
お饅頭三個目を口に運んだイナはお饅頭四個目も口にしてから五個目を頬張って彼らを追いかけた。
※※
ミタマ達が賽銭泥棒の家にたどり着いた時、ウカが意気揚々と家から出てきた所だった。
「……な、何したんだと思う?」
「さ、さあ……」
ミタマの発言にイナとリガノは同時に苦笑いをした。庭の柵をよじ登って戻ってきたウカは得意気に語ってきた。
「お風呂に入るところだったみたいでお湯が風呂釜に張ってあったから、おうちにあったオブラートの紙に『自首するように!』って書いて沢山浮かべておいたわ!頭良いでしょ!文字が浮いてるみたいになるわ!怪現象よ」
「……高度なのかなんなのかわからない……」
ミタマははにかみながらつぶやいた。
稲荷神の小さな怪現象は果たして意味を成すのか成さないのか。
しかしこの後、事態は思わぬ方向から解決するのである。
賽銭泥棒との一騎討ちが始まる……。




