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ハロウィン祭りでワイワイ2

という事でいつもの面々は揃ってハロウィンイベントに来ていた。

小さな商店街はカボチャや絵に描いたコウモリ、月や影絵のような建物がそこらに貼り付けられていた。仮装した子供達が商店街を回りお菓子をもらっている。


「健全なハロウィンだわね」

「ん?健全ではないハロウィンはあるのか?」

ウカの言葉にリガノは首を傾げた。

「ええ。仮装大会になってるだけのわけわからない集まりも都会に行けばあるのよ」

「ほう……」

リガノはウカの言葉に興味深そうに頷いた。


「ねー!ねー!かわいいカボチャがある!!」

少女のイナは始終気分が上がっておりかわいくアレンジされているカボチャを細部まで眺めていた。

「サキ様に会うんでしょ……」

ミタマは話を元に戻した。


「そうだわ!探しましょう!」

ウカはとりあえず辺りを見回した。サキは人間に見える神だから霊的着物にはなっていないはず。

霊的着物を着ると人間に見えるサキでも人間には見えなくなってしまう。

人間のイベントに参加しているのだから人間に見える格好をしているはずだ。


「……まさかお菓子もらって歩いてる方じゃないはず……。年齢的には高校生よね?」

「それくらいの外見をしているみたいだね」

ミタマもウカにならってサキを探す。

ちょうど商店街の一角で子供の集団が群がっていた。よく見るとお菓子を配っている若い女がいた。黒い長い髪をウェーブで流し、ネコのような愛嬌ある目をしている。


「あ!」

ウカはすぐに気がついた。


「サキ様だわ!!」

「では行くか?」

リガノはカボチャに食らいついているイナを引っ張りながら尋ねた。


「行くわよ」

「ウカちゃん、捕まえないでよね」

走り去るウカをミタマとリガノは慌てて追いかけた。イナもなんだかわからずついていく。


「サキ様!覚悟!」

「ウカちゃん!!落ち着いて!」

言葉が色々とおかしいのでミタマが飛びつく勢いで制止する。


「かたきみたいになっちゃってるから!」

ミタマ達の声でサキが顔をあげた。子供達にお菓子を配ってから意気揚々とウカ達の元へやってきた。


「えーと、稲荷ちゃん達かい?元気だねぇ。お菓子をもらいにきたんだろう?」

サキは微笑みながらサバサバと尋ねてきた。


「はーい!そうでーす!イナチャンにちょーだい!!」

すぐさま声を上げたのはイナだ。

ウカはすばやくサキが持っていたクッキーをイナの手に置くとさっさと話を進めた。


「これで静かになる。それでサキ様、ちょっと大事な話がありまして……」

「大事な話?なんだい?」

「この辺の神社をまわってお願いをしているらしいおじいさんの願いをまだ聞けてないんです。厄神の神社まで行っているみたいで……」

「……」

サキはウカの言葉に顔を曇らせた。


「あ、あの……」

「そいつは賽銭泥棒だね」

「え?賽銭泥棒?」

ウカは驚いて聞き返した。


「そうさ。律儀に盗みますよって報告して盗むんだよ。どうも人気のない神社ばかり狙うらしいよ」


「なんでまた……私達底辺を狙ったって何にもないのに……」


「片っ端から回ってるらしいんだ。たまに人気(ひとけ)がなくても銭を投げて願いにくる人間が沢山いる神社もある。ただ同じとこばかりまわるとバレるから微妙にルートを変えたりしているみたいだけど。有名なじいさんさ。あたしはそこまでして小銭を集めなければならないほどに生活が困っているのかと黙認している状態だよ。ほら、杖もついてるじゃないかい?」


「……たぶん同じおじいさんだわ……」

サキの言葉にウカは深く頷いた。

その後すぐにミタマが気がついて声をあげた。


「そうか!だからアイツ、怒ってたんだ!!」

「え?アイツ?誰よ?」

ウカはよくわからず眉を寄せて聞き返した。


「風渦神だよ!あそこの神社は厄を持ってこないでくださいと願う神社!賽銭箱は一応ある。アイツも堂々と中身を盗まれたんだ」

ミタマは興奮ぎみに言葉を紡ぐ。


「賽銭箱の中身を……風渦神の神社は確かに不気味だから人がいないわね。だからああ言っていたのか。お前らがなんとかしないから俺のとこにきたじゃねーかって……でも……願い事を叶えないから怒っているとも言っていたわね」


「え?じゃあ、本人は気がついてないの?」

ミタマは驚いたように聞き返してきた。

「そんなの私がわかるわけないでしょ!もう聞きに行きたくないし」

「だよねー……」

ミタマはため息をついた。


「まあ、なんだかわからないけどさ、彼らがなんか……」

サキは苦笑いで隣のお店にあったお菓子ボックスを指差す。机の上にお菓子ボックスがあり、その前に「ご自由にどうぞ」の紙が置いてあった。いつの間にかイナがお菓子を暴食しておりリガノが止めている。


「ちょっと……なにやってんのよ……」

「イナの食欲が止まらん……怖い……。誰か止めるの手伝ってくれ」

リガノは困ったようにイナを引っ張っていた。


「ぐっだぐだじゃん」

ミタマは冷や汗をかきながらはにかんだ。


「えーと……」

サキが困惑しながら再び口を開いた。


「じゃあ、君達、なんか暇そうだから賽銭泥棒について調べといておくれ。あたしは帰るよ」

「じゃ」とサキはあきれたため息と共に手を振り去っていった。


「……」

ウカとミタマは呆然と立ち尽くした。


「……え?」

サキがいなくなり我に返ってきたウカは疑問の声をあげた。


「……ちょっと待って……え?」

「僕を見ても……」

ウカは半笑いのままミタマを仰ぐ。


「サキ様、なんて言ってた?」

「賽銭泥棒について調べてねーって」

ミタマの言葉にウカは再び沈黙した。


「ねぇ、私、なんかサキ様にやったかな?失礼とか」

「……まあ失礼すぎたよね」

ミタマはさらに苦笑した。


「おい!お前達!ぼーっとしてないでイナをなんとかしてくれ!」

リガノの悲鳴が聞こえたので二人はイナを見た。


「あー!あっちにも無料お菓子!」

イナは目を輝かせながら少し先の八百屋前にあったお菓子ボックスを見つけていた。


「もういい加減にしなさい!!……クソッ!なんでどれも『お一人様一個まで』と書いていない!」

リガノはイナを抱えてなんとかイナの食欲を抑える。


「まあ、こんな食べる稲荷がお菓子を全部持ってくなんて誰も考えないから」

ウカは頭を抱えた。


「……だね。じゃあ帰ろうか。イナになんか食べさせよう!」

ミタマはリガノと頷いた。


「イナ、今日は鍋なのだ。食べるか?」

リガノは冷や汗をかきつつイナに尋ねる。

「食べるー!」

イナはすぐに鍋の単語に食らいついた。


「はあ、じゃあ帰りましょ……。なんか大変な事になっちゃったし。でも挽回のチャンスだわ!」

ウカは鼻息荒く頷いた。


「またいきあたりばったりになりそう……」

ミタマが心配の声を上げるがウカは鼻歌を歌いながら先に歩き出したリガノとイナを追った。


この後事態は不思議な方向へと行く。彼女達は少しだけやる気になっていた。

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