ハロウィン祭りでワイワイ1
風が冷たくなり、朝晩は冷え始めた十月。知らぬ間に秋の虫が鳴き、とっても風流だった。
ピエロの帽子が特徴的な稲荷神の少女ウカは神社内の霊的空間で布団にくるまっていた。
「なんかさっぶ……今日はお鍋とかうどんとか食べたいなあ……」
「ウカちゃん……カムハカリには行かないの?」
ウカと同じ稲荷神のミタマはゴロゴロしているウカにため息をついた。
「なんかさー、私達の上司の冷林様じゃなくて、現太陽神トップの霊的太陽の頭、サキ様だけ捕まえればいい気がしてきた」
「捕まえるとかいっちゃダメ! 冷林様に助けを求めるんじゃないの? え? カムハカリに行かないならどうするの? サキ様に会っておじいさんのことを頼む? 風渦神の事があってやる気が出たんじゃ……」
ミタマは呆れた顔でウカを見据えた。
「だからカムハカリに出発しそうなとこで割り込むの。冷林様は丸々カムハカリにいるけど、サキ様は忙しいから十月丸々あっちにいないでしょ? たぶん。もしかしたら早い段階でトンボ返りみたいにするのかも!」
「まあ、本来はダメなんだろうけどサキ様ならやりそうだ……」
ウカは布団から出ず、やる気だけはあった。
「と、その前にさ、布団から出ようよ……」
「あ、そうだ。ハロウィンだわ!」
ウカは思い出したように声を上げた。
「ハロウィンだから何?」
ミタマはあきれつつ尋ねる。
「お菓子ちょうだいってサキ様にねだりに行くついでに例の件を話せば……」
「……ちょっとよくわからない……」
「だーかーらー」
ウカが詳しく駄策を説明しようとした刹那、キャスケットを被った青年稲荷のリガノがお買い物袋を抱えて帰って来た。
「太陽の市場に行って野菜を買ってきたぞ」
リガノは買い物袋内を見せた。ネギやらニンジンやら白菜やらがごっちゃに詰め込まれている。
「あー、ごくろー」
ウカ達は人間には見えない。別に食事をしなくてもいいのだが腹は減る。そこでそういう神々用にスーパーが用意されていた。あちこちの霊的空間内で木種の神々などが運営している。
「干し椎茸で出汁をとって鍋にでもしようかと」
「わーい!」
気がつくといつの間にか料理担当がリガノになっていた。
「ああ、そうだ」
リガノは思い出したようにウカ達に振り向いた。
「ん?」
「サキ様が近所のハロウィン祭りに参加するようだ」
「なんだって!?」
ウカとミタマは驚いて目を見開いた。
ちなみに太陽神のトップである輝照姫大神サキはアマテラス大神から『こちら』の世界を任されアマテラス大神の神力を一番持っている少女なのだ。なぜか人間の目に映る神でもある。
「じゃあ、行かなきゃ!変な計画たてて捕まえる必要ないわね!」
「また捕まえるって……はあ……」
ウカはようやく布団から出た。現在お昼近く。少しだけ暖かくなっているからかすんなり起きた。
「イナを連れてこうか!子供だし!サキ様からお菓子もらいにいくってな感じで」
「サキ様、ほんとすんません……」
無礼なウカにミタマは心から謝罪した。
「で、行くならばどうする?仮装するのか?」
「うちら、このまんまでもよくない?」
リガノの言葉にウカは軽く笑った。
その後すぐにチビッ子少女の声が響いた。
「こんちはー!今日は近くでハロウィン祭りが……」
「イナだ!」
ウカが叫んだ時、かわいらしい幼女の稲荷が引き戸からひょっこり顔を出した。




