表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/253

77話 謎の儀式でした!?

「おお、なんだかわくわくする場所だな!」


 メッテは城壁の前に並べられた的を見て声を上げた。


 ここは訓練場だ。

 エルフと思しき女性を助けた次の日、俺は村の北側に訓練場を設けた。

 高い木の板で囲まれた空間に的を並べ、武器庫となる小屋も建ててある。


 俺は喜ぶメッテに答える。


「ここなら、思う存分訓練できるだろう?」

「ああ。モープが突然飛び出して、矢が刺さりそうになることもない!」


 メッテは嬉しそうに言う。

 もともとこの訓練場はメッテが要望したものだ。


 亜人が増えたこともあり、武器の訓練をするスペースが村になくなってきていた。

 加えて、モープや亜人の子供は自由奔放なので、矢が当たってしまう恐れもあったのだ。


「そうだな。他の訓練……騎乗訓練をするような場所も決めたいな」


 それだけじゃなく、火災を防ぐため調理場や鍛冶場をまとめたりと、区画分けも進めていきたい。


 メッテは頷く。


「ああ……しかし、本当に驚いた。朝頼んだら、一時間もしない内にこれを作ってくれるんだから」

「まあ、特に難しい作業はないからな。これからも何かあったら作るよ。家具もだいたい数が揃ってきたところだし、すぐ対応できるはずだ」

「さすがは我が夫。頼りがいがある! 褒美だ……んっ」


 メッテは俺の頬に唇で触れた。


 ……最近はことあるごとに、これだ。

 恥ずかしいことこの上ないが、周囲に人がいないからまだましだ。


「それ、人前ではよしてくれよ……特に」

「ああ! 特に、姫の前ではやらん!」


 堂々とメッテは言い放った。

 

 イリアが一緒だったら、また口論に発展していただろう。


 そのイリアは今、メルクと交代でエルフの面倒を見ているが。


 俺が恥ずかしがる中、メッテは弓を取る。


「さっそくここで訓練してみるか! あの丸い的に矢を射ればいいのだろう?」

「ああ、そうだ。射撃用の丸い的の他に、槍や剣の訓練に必要な人型の的も作っているから、用途によって使い分けてくれ」

「ほうほう。これなら、思う存分暴れられそうだな!」

「いや、メッテが暴れたら一日と持たないよ……」


 矢は矢じりを付けておらず、剣や槍も刃をつけてない。的もそれなりに頑丈にできている。


 しかし、メッテや鬼人が本気を出せば簡単に壊れるのは確かだ。


「あくまで武器の使い方を教えるのが、ここの主な役目だ。これからも皆の訓練を頼むぞ」

「任せてくれ! ……うん、なんだか騒がしいな?」


 訓練場の外からわあわあと声が上がった。


 同時に、イリアの焦るような言葉が聞こえてきた。


「待ってください! ま、まずは服を着てから!」

「弓っ! 弓っ! 弓矢っ!」


 遅れて響いたのは、聞きなれない声だった。


 しかし……弓って? 

 弓がどうしたんだろう。


 そんなことを思っていると、訓練場の門がばんと開く。


「弓っ!?」


 門に立っていたのは、長い金髪の女性だった。


 河で救出したエルフだ。

 もう目覚めたようだ。


 エルフは服も着ないで、まるで獲物を探す獣のように鋭い視線を周囲に送る。

 ようやく目を留めた先にあったのは、メッテの弓だった。


「ゆ、弓ぃっ!」


 エルフは一目散にメッテのほうに飛び出した。


「な、なんなんだ!? こいつは!?」


 あのメッテがビビるように、身を引いている。

 エルフはその隙を突くように、弓を奪取した。


 そして両手で仰々しく弓を掲げると、感極まった顔で叫ぶ。


「弓ぃっ!!」


 まるで神を崇めるかのようなエルフに、俺とメッテもぞっとしてしまう。


 イリアとメルクがやってきたのは、そのすぐ後だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術大学をクビになった支援魔術師←こちらの作品もよろしくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ