187話 助っ人がきました!
「ノワ族も魔法が使えるようになったんだ。もう、あのミミズを気にする必要もないんじゃないか」
メッテがそう呟いた。
今俺たちは、ノワ族の村……ノワール村と名付けた村の周辺を歩いている。
開けた草原だから、遠くまで見渡せる。
それだけ見つかりやすいということでもあり、何度かボアがこちらへ突撃してきていた。
ノワ族も皆で囲み魔法でボアを倒している。たしかにメッテの言う通り、キラーワームをそこまで心配することもないかもしれない。
だが、この付近では見られなかった魔物だ。しかも、魔王軍がよく使う魔物なのだから心配にもなる。
魔王軍は、この近辺にも勢力を拡大しようと目論んでいるのかもしれない。
そんな中、アスハが東からやってくる。
「ヨシュア様、ただ今戻りました」
「アスハ、悪いな」
アスハは、ノワ族との同盟についてユミルディアとフェンデル村に伝えてきてくれた。
「ノワ族については、ユミルディアからさっそく道を伸ばすようです。それから食料や物資を村から送ると」
「そうだったか。それで、セレスはキラーワームについて何か言っていたか?」
「モープさんたちのように、魔王軍で飼われていた魔物だそうですね。気になるそうなので、自分もこちらに来たいと……あれですね」
アスハはユミルディアのほうに顔を向けた。
俺もそちらへ視線を向けると、近くなってくる土埃が見えた。
紫色に輝く屋根付きの馬車……あれは、モープ用の馬車だ。
「メッメー! 止まるっす!」
馬車はあっという間にこちらへ到着する。
開く馬車の扉からまず出てきたのは、エクレシアだった。
メッテがそれを見て訊ねる。
「エクレシア? なぜ、ここに?」
「土の中の敵と聞いてやってきたんだ。ここは私の出番だろう?」
「なるほど。植物を使って、あのミミズを見つけるわけだな!」
何も言っていないのにエクレシアは察してやってきてくれたらしい。
たしかに、キラーワームを探すならエントたちの力を借りるべきだ。彼らは植物の根を自在に操ることができる。
俺はエクレシアに訊ねる。
「植物を植えたりしていたんだろう? よかったのか?」
「ただの散策なら急がないさ。でも、ここの住民の命にかかわることだ」
「エクレシア……ありがとう」
「気にするな。それに、やることがなければ私も東は見てみたかった」
次にセレスとモープ数体も出てくる。
「メッメ! うちらも調査に協力するっす!」
「セレス……お前たちは、草を食べたいだけだろ?」
メッテがそう言うと、セレスはちっちっと答える。
「メッテちゃんはこの前の王都でのことを忘れたっすか?」
それを聞いたメッテは、思い出すように言う。
「……魔王軍同士で使われる信号か。スケルトンはお前たちを襲わなかった上に、道まで教えた。」
セレスはこくりと頷く。
「そっす! 一匹捕まえてもらえれば、敵の根拠地まで案内させることができるかもしれないっす!」
「なるほど、お前もよく考えているんだな」
「ただの草を貪る羊と侮らないで欲しいっす! もちろん、ここの草も食べさせてもらうっすけどね!」
そう言うとセレスはまず味見と、他のモープと草をむしゃむしゃ食べ始めた。
それを見たメルクが呟く。
「一番の目的は草を食べること」
「まあまあ。皆さんが来てくれたことで、調査が円滑に進みます」
イリアの声に俺は頷く。
「ああ。それじゃあ早速調査といこう」
そうして俺たちは調査を始め……ようと思った時、メルクが何かに気が付いたように耳を立てる。
「どうした、メルク?」
「……セレス。何か、隠している?」
メルクはセレスに顔を向けた。
「メ? 何も隠してない……いや、言われればなんか背中が重いっす」
「隠れている」
そう言って、メルクはセレスのもふもふ毛の中に潜っていく。
やがて、ぴょこっと背中から顔を出すと、隣にもう一匹這い出させる。
「……お前は!」
メルクの隣には、小さな狐の顔があるのだった。




