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186話 魔法が上手な種族でした!?

「すごい上達ぶり」


 メルクは黒猫たちを見て、目をパチクリさせる。

 魔法を教わった黒猫たちは火を起こし、風を吹かせ、雨や雪を降らせていた。


 ノワ族の黒猫たちには、例外なく魔法の才能があった。杖を握らせれば、誰でも何かしらの属性の魔法を使えたのだ。


 フェンデルの亜人たちの中には全く魔法を使えない者も少なくない。むしろ、各種族の中で魔法を使える者のほうが少ないのだ。


 それと比べると、ノワ族は特殊だ。


「にゃにゃ! こんなすごいにゃ! 水が無限にでてくるにゃ!」

「もう、川まで水を飲みに行かなくて済むにゃ!」

「しかも泥水じゃないから綺麗で美味いにゃ!」


 黒猫たちは特に水が手軽に得られるようになったことが嬉しいようだ。


 火や風はいまいち使い道が分からないのかもしれない。


 イリアがそれを見て呟く。


「まずは大成功ですね。メルクさん、アスハさん、お疲れ様です」

「さっそく王都で手に入れた魔導書が役に立った」


 メルクの声にアスハが頷く。


「各属性の基礎魔法を教えることができましたからね」


 メルクたちは王都で手に入れた魔導書で、各属性の初歩的な魔法をまずまんべんなく学んだ。


 魔法への理解を深めるためでなく、フェンデルの子供たちに教えるためでもあった。


「私も魔法を使えればいいんだがな、全く羨ましい」


 メッテは魔法を使うノワ族たちを見て言った。


 メルクがそれに答える。


「メッテは魔法なんていらない。強い」

「それはそうだが、やっぱり一度はどかんと大きな魔法を使ってみたいぞ」


 心底羨ましそうにメッテはそう言った。


 そんな中、ローナがやってくる。


「にゃにゃ。まほーってのは本当にすごいにゃ……」

「すごいのはノワ族。それにローナはどの魔法も上手く使える」


 ノワ族の中でも、ローナは苦手な魔法がないようだった。


 普通は火魔法だけ上手いとか、水魔法しか使えないとか、そういう人間や亜人のほうが多い。そもそも、イリアとメッテのようにあまり魔法が使えないという者の方が多数派だ。


 俺も生産魔法以外はそこまで得意じゃない。

 いや、生産魔法を上達させていく過程で、他の魔法もある程度は強くなっているようだが。


 でも本当に最初は、指先に火を灯すのが俺もやっとだった。俺は生産魔法に適性がある【魔工師】の紋章を持っていたからだ。


 俺はローナにこう言う。


「ともかく、魔法はこれからも練習するといいと思う。フェンデルに学校がある。そこには他の魔法の使い方が書かれた本があるから、よかったら来てくれ」

「にゃにゃ。ぜひ行きたいにゃ!」

「それじゃあユミルたちドワーフに頼んで、ここまで道を伸ばしてもらうのもいいかもな」


 そのほうが行き来も楽になる。


 とはいえ、この周辺ではまだまだボアも多い。デビルスネークもいるし、さっきのキラーワームもいる。いくらか道の安全は確保したほうがよさそうだ。


 そうだ、キラーワーム……普通は魔王軍との戦いでしか見られない彼らが何故ここにいるのか。一応、調べておいたほうがいいだろう。


「ローナ。これで食料は得やすくなったな?」

「にゃあ。メルクとアスハから魔法を使った食べ物を集める方法を教えてもらったのにゃ。これでいっぱい食べ物が獲れるのにゃ!」

「それはよかった。それでこれからなんだが」

「にゃ! どーめいの話かにゃ?」


 ローナは魔法を学ぶ傍ら、メルクたちからフェンデルについて聞いていたようだ。


 俺が頷くと、ローナは即答する。


「ローナたちもフェンデルどーめいに加えて欲しいのにゃ。助けてくれたり魔法を教えてくれたお礼に、ローナたちもどーめいに恩返ししたいのにゃ! せひ、仲間にしてほしいにゃ!」


 俺とイリアたちは顔を合わせると、それに首を縦に振った。


「ありがとう。これから、よろしくな」

「にゃあ、こちらこそよろしくにゃ!」


 こうしてフェンデル同盟にノワ族が加わった。


 それからいくらか取り決めをした後、俺たちはノワ族の住処の周辺を探索することにするのだった。

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