163話 作り直しました!?
「ごめん、リーセ」
俺は魔法工房から、直したベイロンのブレスレットを木の器に乗せて見せる。
ほつれを直し摩耗した部分を削り、編みなおした組み紐。そして砕けていたのを再び一つに組み合わせた宝石類。全て、血などは洗い流した。
しかし、宝石には欠けていた部分が残っていたり、そもそも無くなった宝石もあるようだ。
結果として、ブレスレットとしてはなんだか不格好になってしまっている。宝石も欠けた部分から簡単に割れてしまうだろう。
リーセは首を横に振る。
「ううん。こんなに綺麗に直ると、思わなかった。ありがとう、お兄ちゃん」
ぺこりとリーセは頭を下げる。
ユミルも口を開く。
「ここまで綺麗に直ったのは大したものじゃ。さすがじゃのう、ヨシュアは」
そう褒めてくれるが、俺はやはり心残りだ。
そんな中、リーセは俺に別の袋を手渡した。
「お礼は……これで足りる?」
袋の中には、綺麗な石や水晶が集まっていた。
「これは……リーセが集めたの?」
「うん。お父さん、色々な場所に行くから。色々な場所の石。だけど、水晶以外はお金にならないって、さっきお店で」
たしかに河原で落ちていそうな石も多い。
「……これは受け取れない。それに、お礼も大丈夫だ」
「でも」
「いいんだ、リーセ」
俺が呟くと、エクレシアも首を縦に振る。
「この石はあまり見ない石だから、大事にするといい。たまに森に落ちているが、動物を癒す石でな。よく兎が抱えていたのを見た」
「そうなの?」
「ああ。もともとは、キュアツリーという木が枯れると、その実が徐々に石のように固くなっていく」
エクレシアの声に、俺はピンとくる。
「キュアツリーの実の化石……キュアストーンか! 形だけじゃまず見分けがつかないが」
「実が石になるのはこれぐらいだから、そのキュアストーンとやらで間違いない。三個……いや、五個もあるな」
「一個で、ちょっとした宝石ぐらいの価値はあるやつだぞ。すごいもの見つけたな、リーセ」
俺が言うと、リーセは顔を明るくした。
「うん! だったらやっぱりこれをお礼に」
「いいや、リーセ……それよりももっといいことを思いついたぞ」
「いいこと?」
「このキュアストーンや他の石を使って、このブレスレットを作り直すんだ。俺が石に穴を開けるから」
「で、でも……これは」
リーセはベイロンの物を勝手にいじっていいのかと思っているようだ。
そんなリーセにエナが笑顔で言う。
「きっと、お父さんも喜ぶと思います」
「娘の作ったものを喜ばないわけがないのじゃ! 直せば、父も姉も仲直りするじゃろうて!」
ユミルもそう言った。
「私が、お父さんの……うん! 私も直してみたい!」
俺はその声に笑顔で頷いた。
それから、リーセはブレスレットにどういう並びで石を通すか決める。俺は石に穴を開けたりしたりして補助に徹するのだった。




