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123話 久々の洞窟でした!

 神殿騎士団の騒ぎを収めた俺たちは、あの後ヴァースブルグで道具や武器を作成した。

 海で手に入れた貝の肉と馬やロバを交換したりもして、翌日俺たちは村に帰還した。


 それから数日、フェンデルでは平和な日々が続いている。


 エルフの村とカッパの島との河川を通じた物資のやり取りも順調だ。移送中にボアやヘルアリゲーターから襲われることもあるが、武器で十分撃退できている。


 魔王軍もあれから、特にこれといった動きはない。東も南も不気味なほど静かだ。


 そんな中、俺は家につける窓ガラスを作って過ごしていた。


「ふう……曇った」


 メルクはガラス板に息を吹き付けて呟いた。


「まるで水が形になったみたいな……不思議ですね」


 イリアもテーブルに置かれた、ガラスのグラスをまじまじと見つめながら言った。


 ガラス板だけでなく、いくつかガラス製品も作ってみた。食器を中心に手持ち用のランプも作ってある。


 また、俺だけでなく、皆にもガラス作りを教えたので、亜人たちの製品もあるようだ。


 実に平和な日々が続いていた。


 だが、突如ものものしい鉄板に覆われた馬車が東から現れる。


「あれは? ドワーフたちの洞窟から来たやつか」


 馬車を操っているのはドワーフのユミルだ。

 俺に手を振っている。


「ヨシュア、おはようなのじゃ!」

「おはよう、ユミル。どうしたんだ、その馬車は?」

「この前の、”爆弾”を持ってきたのじゃ」

「お、おお、あれか」


 白砂島でクラーケンを黒焦げにした、爆発する玉。

 あれを俺たちは爆弾と名付けた。


 防衛用にドワーフたちに五十個ほど作っておいてもらったのだ。


「爆発したら危険だから、こうして紫鉄の馬車にいれてきたのじゃ!」

「なるほど。たしかに、運ぶときはこうした頑丈な箱に入れておいた方がいいな」


 あとで、エルフとカッパたちに運ぶときのために、小さめの頑丈な箱を作っておこう。


 爆弾は強力な武器だ。

 これがあれば、カッパとエルフたちも防衛がしやすくなる。


「ありがとうな、ユミル。ドワーフたちにお礼を言っておいてくれ」

「こちらこそ、いつも美味しい魚をありがとうなのじゃ。そういえば、ヨシュア。ちょっと困ったことがあってのう」

「困ったこと?」

「うむ。実は洞窟を掘り進めていくうちに、奇妙な音が聞こえるようになってのう。皆、武器を腰に提げて掘っているのじゃが、気味が悪くて最近なかなか思うように掘れてないのじゃ」

「へえ、奇妙な音か」


 人間社会でも、坑道や洞窟で奇妙な音が聞こえるというのをよく聞く。深く掘れば掘るほど、音が大きくなるとか。


 耳栓をつけるわけにもいかないしな……


「そうしたら、とりあえず様子を見に行くよ。石切り場のダンジョンも見ておきたい」


 俺の声にユミルは顔を明るくする。

 

「それはありがたい! よかったら泊っていくのじゃ。部屋も用意しておくからの」


 こうして俺たちは、ドワーフの洞窟へと向かうことになった。


 馬車に乗り、橋を渡り、東へ向かう。


 洞窟まではまっすぐと石畳の道が伸びていた。

 これはドワーフとゴーレムが整備してくれた。

 おかげで馬車が非常にスムーズに走れる。


 しばらく走ると、左手に石切り場が見えた。

 あそこはダンジョンが見つかった場所で、一時封鎖してある。

 あれから、あのダンジョンから何かが出てくるということはないようだ。

 今度、中を見てもいいかもしれない。


 そんな中、荷台のメルクが呟く。


「ドワーフたちはどうやって暮らしている?」

「今も洞窟の中で寝泊まりしているんじゃないかな。掘った場所を部屋にして」


 もうずっと見ていないので、ドワーフたちの住処がどうなっているか分からない。


 だが、いつも運ばれてくる鉱石や金属の異常な量を見るに、相当洞窟を掘り進めているのは確かだろう。


 やがて、ドワーフたちの洞窟がある山の麓が見えてきた。


 一見、前と変わらないように見える。


 だが、


「なんか、門みたいのができてる」


 メルクは麓にある、金ぴかに光る巨大な両開きの門を見て言った。


「あれが……洞窟?」


 洞窟の入り口は、まるでどこかの国にありそうな宮殿の入り口のようになっていた。

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