114話 メッセージを残しました!
カモメの鳴き声と潮騒が聞こえる中、俺は目を覚ました。
「ふぁあ……朝か」
皆に枕や掛け布団を作ったが、今では誰もが俺の近くで集まって寝ている。
いつも枕となってくれていたウィズが、俺に挨拶するように頭を撫でた。
「ウィズ、おはよう……皆はまだ寝ているな。あれ?」
俺は門の近くで一人腰を落とすベルドスに気が付く。
「ベルドス。寝ていないのか? あれ、ベルドス」
ベルドスは目を見開いたまま、こちらに向ける。
「ふむ? ああ、おはよう、ヨシュア」
「寝てないのか?」
「まさか。今の今まで寝ていたさ。もちろん、耳と目だけは動かしておいてな。オレたちはこうして寝るんだ」
「そんなことができるのか……いや、ともかく、見張ってくれてありがとう。でも、布団で寝るのも気持ちがいいぞ」
「なら今度試してみるか。ところで、先程アスハが外に行ったぞ」
「島の周囲を偵察してくれているのかもしれないな。俺も、灯台へ行ってくる」
俺は外へ出て、ウィズと共に灯台へ上がった。
そこから島とその周囲を眺める。
今日も快晴で波は穏やか。
船を出しても問題なさそうだ。
「しかし、どこまでも海岸が続いているな。そういえば、帰りに砂も持って帰るか。ガラスが作れるかもしれない」
フェンデル村の家には窓枠があるが、嵌められているのは木製の板の戸だ。
それをガラス窓にすれば、外気を遮断しながら外の光を取り入れられる。戸を開けっぱなしだと、どうにも虫が入ってきてしまうので、いくらかは窓のある家が欲しい。
幸い、今から行く東の海岸には砂が大量にある。
ガラス作りに適した砂を手に入れられるだろう。
「とりあえずは、建物を作れるだけ作っておくか」
俺はウィズと共に、灯台の周囲に家を四軒建てた。
道も石畳で舗装し、その道から海へ向かって石造りの桟橋を伸ばす。桟橋には、船をロープで繋ぎとめられる柱も作った。
「よしよし。これなら、いつでも船を泊められる」
「よ、ヨシュア様、おはようございます!」
後ろから慌ててやってくるのはイリアだ。
「おはよう、イリア。よく寝られたか?」
「はい。いつもなら、ヨシュア様が起きられればすぐ分かるのですが……」
「波の音が気持ちよかったんじゃないかな。俺も、目を覚ますのがちょっと遅かったぐらいだ」
そんなことを言っていると、上空からアスハが現れた。
「ヨシュア様、おはようございます」
「おはよう、アスハ。偵察してくれていたのか?」
「はい。島の周囲と、特に西を。西のほうでは、特にこれといった動きはありませんでした」
「そうか。となると、リザードマンたちはもう心配なさそうだな。このまま、少し東を航海してみよう……だが、その前に」
俺は先ほど作った家の一軒の扉へ向かう。
扉の脇には、前子供が落とした蓑の衣服と、子供がフレッタにあげた木の板を置いておく。
家の中には、肉や魚の燻製、そして堅焼きのパンが入った樽をいくつか置いておいた。
「クラーケンが去ったから、あの子供がこの島に戻ってくるかもしれない。外の服と板を見れば、誰が来たか気が付くだろう」
「食べ物も置いておけば、悪い者じゃないと思ってくれるかもしれませんね」
「ああ。もしかしたら自分の家だったあの地底湖を何とかしてもらいたくて、木の板を渡したのかもしれないしな」
自力で戻ってきてくれればそれでよし。
あるいは見つけて、この島に平和が戻ったことを伝えよう。
もちろん、協力も模索したい。
それから俺たちは白砂島を後にし、海岸沿いを東に航海するのだった。




