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108話 灯台下暗しでした!?

 皆が砂浜で寝転んだり、海を泳いだりする中、俺は島の海岸を視察していた。


「ここなら、少し波が高くなっても大丈夫そうだな」


 俺たちが発見した白砂島。

 その浜の一部には、ごつごつとした岩場があった。


 砂浜よりも少し高い場所で、ここなら建物を建てても波が来ないだろう。河口のほうも見れるので、見張り場所としてもよさそうだ。


「見張りもできて、目印になる物……灯台でもつくるか」

「灯台、ですか?」


 皆が遊びまわる中、唯一俺に付いてきたイリアがそう訊ねてきた。


「ああ。村でも、城壁に沿うように塔を作っただろ? あれと、建物自体はそう変わらないかな。岩を積み上げるだけで作れる」


 むしろ灯台だからと、あまり細いものにはしないほうがいいだろう。ほぼ、防衛用の塔と同じ形で立てて、いざというときは籠れるようにしておこう。


「だが、灯台は屋上に大きなかがり火を設けておくんだ。夜や天候の悪い日でも目印になるように」

「遠くからでもわかりやすいように、ということですね。もしかしたら、あの探していた子供も気が付いてやってくるかもしれませんね」

「そうかもな。まあ、魔王軍にも気づかれてしまうかもしれないが」


 とはいえ、魔王軍はまともな船を造れない。進水させれば、すぐに船底から浸水するようなボロボロな船しか作れないのだ。よくて、俺たちが乗ってきた小型の船やボート、いかだを作れるぐらいか。


 投石器やバリスタなどの複雑な機構の物も、魔物は作るのを苦手とするようだ。


 ただ、海に住む魔物もいる。

 しかし、魔王軍に属さない種族が多く、海における魔王軍の影響力は非常に低いのが現状だ。海から大軍を送り込んでくることはまずない。


 とはいえ、もし大軍がやってきたとしたら……尚更、監視網は広くしておくべきだ。


 俺は手早く魔法工房で石造りの塔を組み上げ、それを岩場へと建てる。


 高さは十ベートルちょっと。最後に屋上に柱を立て、丸い屋根を被せる。その下でかがり火を焚けば、雨の日も濡れない。


「よし、ちょっと上がってみよう。島の全体も見渡せるはずだ」


 俺はイリアと共に、灯台の屋上へ上がった。


 灯台の中は村の塔や風車のように螺旋階段があり、下部には少し寝泊まりできるような空間もある。


 階段を上がり屋上に出ると、まず目の前に飛び込んできたのはどこまでも続く青い海だった。


 イリアは屋上の手すり壁から、周囲を眺めた。


「船の上で見るよりも、遠くまで見えますね! こんなに、綺麗な場所があるなんて……」


 イリアの目は水平線と、波が打ち寄せる大陸の海岸線に向けられていた。


「ああ。本当に景色の良い場所だな」


 周辺には人里というものが全く見えない。

 亜人が海沿いに集落を築いているのではと期待したが、河口から東西に延びる長い海岸線には人工物のようなものは見えなかった。


 どこまでも続く自然の風景。吹いてくる潮風と聞こえてくる潮騒が心地いい。


「フェンデル村の近くもいいけど、ここもいいな。これからもたまに遊びにこよう」


 別荘じゃないけど、そんな場所があってもいいと思う。


 イリアも、はいと嬉しそうに頷いてくれた。


「しかし、これからどうするか。西に行けば、人間の南の都市がある」

「でも、今は魔王軍の支配下にあるのでしたよね?」

「ああ。だから、西に行けば行くほど、魔王軍と鉢合わせになる可能性が高くなる。ここはやっぱり東かな……うん?」


 俺は下の方で動く影に気が付く。


 メルクとアスハが、島の内側に向かって歩いていた。


「島の探検かな。すぐに終わっちゃいそうだけど」


 ほぼ円形で、一番長い場所で二百ベートルほどの島。

 小さな島ではあるが、多少の平地や小川も見えるので、ちょっとした町を作れるぐらいの広さはある。


 ……だが、ちょっと妙だな。


 島の中央が一番高く、そこから島の外側になるにつれ低くなっている。しかし、山肌にあたる場所が、ずいぶんと綺麗な平地になっている部分がいくらか見えた。


 まるで人工的に切り開かれたような平坦な場所だ。

 木もあまり生えてないし、剥き出しの岩場も結構多いというか……あれ?


 俺は、地面の一部にうっすらと線が生えているのが見えた。


 よく目を凝らすと、その岩場は長方形の石材が敷き詰められている場所だった。


「石畳?」

「村でヨシュア様が作られた水路に似てますね」

「ああ。誰かが、ああして岩を敷き詰めたんだ。もしかして誰かが住んでいた?」


 他に構造物のような物は見えない。


 しかし、メルクがやがて島の中央、一番高くなった場所で足を止めることに気が付く。

 

 アスハが見守る中、メルクは前脚で石畳をぽんぽんと叩いた。


 すると、


「開いた?」


 メルクの叩いた石畳の場所が開く。


 メルクは自分でも意外だったのかそこから即座に身を引く。

 そしてどうすればいいかと指示を仰ぐようにこちらをじっと見つめるのだった。

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