表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/73

31.学園へ

「……まさか、俺の目線でこの制服に手を通す事になるとは」


 たった2日だけど、ずっと見ていたこの制服。アルフォール王国が運営する学園、アルフォール学園の制服。白を基調として、所々に青のラインや黒の装飾がされている。


 俺がその制服に腕を通して鏡を見ていると、コンコンと叩かれる扉。返事をすると入って来たのは、母上だった。


「あら、ジーク、似合っていますね! さっきグルディスの着替えた姿を見て来ましたけど、2人とも似合っていてカッコいいです!」


 母上は笑顔でそう言ってくるけど、自分はあまりそう思わなかった。その後ろにはニコニコとしたクロエとメルティア、エンフィが立っていた。


 クロエとエンフィは俺と同じように制服を着ている。2人とも似合っておりとても可愛い。


「うふふっ、とてもお似合いですわ、旦那様。ずっと見ていても飽きないぐらい」


「はい、お似合いです、ジーク様!」


「ははっ、ありがとうな、2人とも。クロエもエンフィも似合っているぞ」


 俺の言葉にうふふと笑みを浮かべながら抱きつこうとしてくるクロエと、顔を赤くするエンフィ。そんな2人を見ていると、メルティアが


「王妃様、そろそろジーク様の出発のお時間になります」


「あら、もうそんな時間? グルディスも先に行っちゃいましたし。でも、後で陛下と私も入学式に行きますからね」


「はい、お待ちしております、母上」


 俺の言葉に笑顔で手を振って部屋を出て行く母上。俺やクロエたちも学園に行く準備を始める。まあ、荷物は学園で配布されるから持って行くものは殆ど無いのだけど。


「ああっと、これもつけておかないと」


 俺は父上から貰ったブレスレットを腕につけて部屋を出る。メルティアが既に馬車を準備してくれていたので、その馬車の中に俺、クロエ、エンフィがはいる。メルティアは留守番だ。


 学園のしきたりとして、学園内ではみんな一生徒、「自分の事は自分でしなさい」というのがある。これは、貴族だけでなく、平民もいるからだそうだ。


 まあ、そうは言っても、完璧に貴族平民が一緒になんて事は厳しいから、学園で雇っている侍女などがいたり、食堂なども分かれていたりしている。


「クラス分けはどうなるのでしょうね? 出来れば旦那様と同じクラスが良いのですが」


「まあ、そこはどうなるかはわからないよ。平等にはわけるようだけど」


 クラスも貴族平民を混ぜるはずだ……そういえば、攻略対象たちは全員同じクラスだったな。セシリアは別のクラスで、ヒロインも攻略対象と同じクラスだったな。


 ヒロインも見ておかないと。前世ではあまりヒロインに興味がなかったせいで顔があまり思い出せない。ピンク頭しか記憶に無い。そんな事を考えていると


「あら? あらあらあらあら? 旦那様ったら一体どの女を考えているのですか?」


 俺が別の女性を考えていた事を察知したクロエが詰め寄ってくる。その光景をエンフィは苦笑いして見てくる。


 しばらくそれをしていると、馬車が止まった。どうやら学園に辿り着いたようだ。俺たちが降りると、周りには他の貴族たちの馬車が停まっている。そして、そこから降りてくる貴族たち。みんな、当たり前だが同じ制服を着ていた。


 ……今日からゲームの物語が始まるのか。これから4年間、この学園で過ごす事になるが、この4年間が勝負だ。


 兄上やセシリアの様子だと、このまま婚約破棄は逃れられないだろう。その事で兄上を殴り飛ばしたい気持ちはあるが、そんな事しても変わらないだろう。


 それよりも、俺はもっと力を付けないと。今のままでは全然力が足りていない。


「旦那様?」


 自分の手をジッと見ていると、覗き込むようにクロエが尋ねてくる。俺は何でもないと言って学園に向けて歩き出す。


 学園は3つの塔に分かれて出来ている。訓練塔、魔法塔、学問塔の3つに。そして、それらの塔を繋ぐ真ん中に教師や生徒が集まる建物がある。他にも色々な施設はあるが、よく使うのがこの3つの塔だ。


 みんなが真ん中の塔へと向かっている。その流れに俺たちもついて行く。ゲームで見る事はあったけど、この目で実際に見ると、また見え方が違うな。


 少し、周りを眺めていると「きゃぁっ!」と、悲鳴が聞こえてきた。声のした方を見ると、地面に荷物を散らばせている少女と、その前に偉そうに立つ少年たち。


「おい、お前どこ見て歩いているんだよ。お前がぶつかったせいで、僕の制服が汚れたじゃないか」


「で、でも、よそ見をしていたのはあ、あなたの方で……」


「はぁ? 何お前。平民であるお前が、貴族である僕に文句言うわけ?」


 ……はぁ、なんてテンプレなんだよ。しかも、この光景って


「何をしている、お前たち」


 そこに、先に塔に入っていたのであろう、兄上が声を聞きつけてかやって来た。隣には宰相の息子で緑髪のメガネをかけた少年、攻略対象の1人で、メーテル・ローデンベルグが付いていた。


 ……この光景を見ると、ようやく実感する。ゲームが始まったのだと。

良かったら、評価やブックマーク登録などよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ