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【書籍化】第二王子の側室になりたくないと思っていたら、側室ではなく正室になってしまいました  作者: 倉本縞
本編

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13/55

13.第二王子の側室にはなりたくない

「ジグモンド様、ご機嫌うるわしゅう。……あー、あの、そろそろ授業が始まりますので……」

だから因縁つけるのやめてください。と言外に訴えてみたが、


「ああ、すまない。ただ一言、君にお祝いを言いたくてね。婚約おめでとう、エリカ」

わたしはうっと息を詰めた。

いったいどこから婚約の情報を得たんだ。ほんとこの王子、怖いんですけど。


「てっきり、口から出まかせを言われたものとばかり思っていたが、本当に婚約をしていたとはね」

「まあ、ほほほ」

わたしは引き攣り笑いしながらも、はったと王子と向き合った。


「嫌ですわ、ジグモンド様に偽りなど、どうして申しましょうか」

「なら、教えてくれ、エリカ」

ジグモンド王子は、口元を歪め、言った。


「君の婚約相手は、誰なんだい? もう婚約が決定しているなら、教えてくれてもいいだろう?」

「ほほ、ジグモンド様、困りますわ」


わたしは震える足を踏ん張り、王子を見た。


兄は、王子はルカーチ家へは手出ししないだろう、と言っていた。

報復するなら、ナーシル神官だと。


なら、絶対に、ナーシルのことは教えない。

たとえ鞭打たれたって、ひと言だって口にするもんか。


「お相手の事情で、卒業まで公にはできない、と申し上げたはずですわ」

「……僕が命令しても?」

王子の言葉に、恐怖で心臓が縮み上がった。

王族の命令に逆らえば、最悪、反逆罪と見なされる。


「エ、エリカ……」

ララが震えている。

わたしはララを背中に隠し、大きく息を吸って言った。


「まあ、ジグモンド様、おかしなことを仰いますのね」

「……なんだと?」

王子が目を細め、わたしを睨んだ。まるでわたしを憎んでいるような表情だ。やな感じ。


「なぜ、ジグモンド様に、わたしの婚約者についてお教えせねばなりませんの? 国王陛下、もしくは王太子殿下のご命令なら、従いますわ。貴族の婚姻は、陛下もしくは第一王位継承者である王太子殿下のご裁可が必要ですもの。……ですが、第二王子殿下には、わたしの婚約について、何の権限もございませんわ。違いましたかしら?」

要は、あなたに何の権利があって人の婚約に口突っ込んでんですかあ? そんな権利ないですよねえ?

……という意見を、精一杯、貴族令嬢っぽくおしとやかに言ってみたのだが。


ジグモンド王子は、青白い顔で黙ってわたしを見つめた。

その冷え冷えとした眼差しに、思わずダッシュで逃げ出したくなったが、わたしはナーシルのことを思い、何とかその場に踏みとどまった。


わたしのせいで、こんなややこしい事情に巻き込んでしまったのだ。

せめて、その身の安全くらいは、わたしが守ってやらねば。


「……そうか。これは失礼した。僕はしょせん、側室腹の第二王子、君の婚約についてどうこう言う権利などなかったね」

ふふふ、と笑うジグモンド王子を、わたしは黙って見つめた。


「君の婚約を、心から祝福するよ。……卒業までの三ヶ月間、楽しい学園生活を送り、何事もなく、無事に、婚約することを祈っている」

「……ありがとうございます、それでは御前を失礼いたします、殿下」

わたしは、恐怖で固まったように動かないララの腕を引っ張り、可能な限りの速さでその場を後にした。


「……ま、待って、ちょっと待って、エリカ!」

廊下の角を曲がり、第二王子の姿が見えなくなってから、ララがあえぐように言った。


「さ、さっきのあれ……、ジグモンド様のお言葉、あれって……」

「うん。脅迫された」

「エリカ!」

ララが悲鳴のような声を上げた。


何事もなく、無事に、婚約できると思っているのか。この僕をコケにして。


ジグモンド様のお言葉は、そういうことだ。

わたしは震える手を握りしめた。


「……あの、サディストが」

わたしは低くつぶやいた。


なんだよなんだよ、あのサド野郎。

抵抗できない小姓をいたぶる最低男が、今度は、目をつけた女が言いなりにならないからって、脅迫してくるとか、最低オブ最低じゃないか。


「絶対に、第二王子の側室になんか、ならないんだから」

「エリカぁ……」

ララが涙目になって、わたしの腕をぎゅっとつかんだ。


……うん、わたしも泣きたい。


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