2. デスゲームにドン勝した作者様から学ぼう
・デスゲームにドン勝した作品とは?
本文章を執筆しているのは10月19日、デスゲーム最終日である。しかしこの時点、なんならその1週間前の時点で既に勝負は決しており、ラノベ作家による土下座と裸踊りが確定していたのである! 調査を行ってその事実を確認したとき、筆者はついヒエッと言ってしまったものだ。
ではその作品とは? 水垣するめ先生作『学園のアイドルが陰キャラの僕に「女装しろ!」と迫ってくる件について 〜女装したら彼女に愛されすぎて困ってます〜』である。新しめのIDに1作品しか存在しない小説欄。挙げ句の果てにはフォローしている小説家がGMとも繋がりが深い田中ドリル先生と馬路まんじ先生。もはや『私デスゲームやってます!』と宣言しているものだ。
・分析:PV数
さて、当該作品がどれくらい凄いかについては以下の画像を見れば一目瞭然であろう。
なんだこれは、たまげたなぁ……。初投稿日は9月27日。第一回中間報告が9月29日までの集計であり、この時点ではGMの第二回中間報告によれば1136PV(29日までの集計にも関わらず28日までの合計になっているのは単に作者様の勘違いである可能性が高い)。
しかしここから怒濤の猛追を見せる。9月30日にジャンル別ランキングで21位に入ると、日別のPV数が急上昇。10月に入ると3日連続で日別PV1万超えを連発する。その後はPV数は落ち着くも、毎日最低3千PVを連発できる作品へと変貌した。10月19日現在でも日刊ランキングにこそ姿を見せないものの、月間ランキングには鎮座しており(62位)、コンスタントなPV数の獲得はこれが要因であると考えられる。
・分析:投稿頻度
水垣先生はなかなか面白い投稿のしかたをしていたので紹介させていただく。まず、投稿初日である27日の夜。この日は19時から1時間ごと、計3本投稿している。そして30日に跳ね上がるまでは毎日コンスタントに2本ずつ投稿し、10月に入ってからは1日1本に減らしているのである。
また、投稿した時間帯にも注目したい。27日は日曜日であり、このときは夜の19時から投稿を始めた。日曜の夜の時間帯に見るであろう読者の狙い撃ちである。11分というタイミングも注目に値するだろう。28日と29日は12時と18時に投稿。お昼時とちょうど帰宅して電車でスマホを開きそうなタイミングをロックオンしているのだ。
この成果はデバイス別のPVに如実に表れている。閲覧されたデバイスとしてはスマートフォンが圧倒的であり、パソコンからの閲覧に倍近く差をつけている。スマートフォンからの読者を大きく増やしたことが閲覧数の増大に拍車をかけたものと推測される。
・分析:小説そのもの
小説そのものの面白さは人によって異なる。そのため本項目では、できる限り客観的な視点から小説を分析する。
① 文字数について
文字数の平均は2500文字前後。だが、文字数の割には一部分の長さは筆者の感覚ではかなり短く感じられた。その要因として挙げられるのが空けられた改行と、文章の軽さだろう。筆者も見やすさや文章のまとまりを意識して改行を1つ入れている。だが、今回着目したいのは軽さだ。
② 文章の硬さについて
第1話を丸ごと文体診断ロゴーンに投入してみた結果、文章評価の項目においてすべての項目がAという非常に優秀な結果を生み出していた。筆者の作品の一部分を入れた場合、文章の長さが長すぎるという結果だった。その通りだと思います。
注目すべきは一文の文字数だ。筆者の作品の場合、一文の文字数が平均37文字なのに対して、この作品の平均文字数は25文字。12文字の差とは以下のようになる。
・37文字
彼はとても面白い動画配信者であると同時に、有名なダ○ソ実況配信者でもある。
・25文字
彼はとても面白く有名なダ○ソ実況動画配信者である。
上記の文章は意味としてはほぼ同じ意味である。だが、文字数が圧縮されていることでねっとり感が薄れる。『小説家になろう』において求められているもの。それはスナック菓子のように気軽につまめるような作品である。このような傾向が続く以上、一文は短いほうがよい。
軽さという意味では地の文もそうだろう。主人公の一人称で語られる作品ならば重苦しい文体は好まれない。なろう読者が文章を咀嚼するときに、ステーキのような硬さは求められていないのだろう。それがたとえ超高級サーロインステーキであったとしても、である。
③タグについて
本作は現実世界(恋愛)ジャンルに投稿されており、タグは以下の通りである。
日常 青春 ラブコメ 女装 男主人公 あまあま ハーレム 後輩 美少女 コメディ 視覚的百合 ざまぁ 隠れイケメン 恋愛
やはり目を引くのは女装だ。10月19日現在、女装で検索してヒットする作品はわずかに1703件。独自性という意味ではこれ1つで十分賄えるだろうが、これだけでは1ヶ月で初投稿の作者が10万PVには到達し得ないだろう。
ここで馬券の話をしたいと思う。馬券といえば様々な買い方が存在する。単勝一点買いから三連単まで様々存在する。しかしプロは馬券を買うにあたって、1つの買い方に絞らない。それは複数頭流すだけではなく、買い目すらもばらけさせることで損失を抑えるのだ(ex.三連単だけでなくワイドや馬連も抑える)。
この小説も同じである。この小説における一番の推しポイントは間違いなく『女装』である。本人の活動報告も確認したが、作者の女装推しの力は間違いなくある。だがそれだけではデスゲームを生き残れない。だから、流行のタグを取り込んだのだ。
ハーレムものはなろうの十八番である。視覚的百合は百合でヒットする。百合要素を求める人にとっては地雷かもしれないが、その分目につく可能性は多少は高くなる。
そして『ざまぁ』。序盤だけ読めばざまぁする流れには見えない。だが、話は確かにその流れを見せている。ハーレムとざまぁという二大巨頭をタグで誘因することで、閲覧数の増大を図ったのだろう。
確かに『女装』だけで見ればニッチな小説としてなろうの奔流に押されていただろう。だが、ここにハーレムやざまぁといったなろうの流行ジャンルを取り入れることで、本作の独自性を殺すことなく、それでいてたくさんの人に見て貰うことができる。ジャンル推しの鑑と言っても差し支えない。
④総括
本作は、徹底的になろう読者にウケるような構成で作られている。小説の面白さは別として、PV数を獲得するということ一点においては本作は後続兄貴達の教科書たり得るだろう。
・個人的感想
本エッセイ執筆にあたり、10月19日現在投稿分まで目を通している。その上で、筆者が感じた面白さに関する事柄を一切排除して書き上げた。なのでここからは筆者個人の感想。
女装男子いいよね……。筆者も女装を嗜んだことがあるのでよく分かります(?)。可愛い男の子にはメイド服を着せよ、古事記にもそう書いてある。
・おまけ
自作とドン勝作を比較してみた。
あ、悪魔たん……
分析した小説はこちらになります。
https://book1.adouzi.eu.org/n3192gn/




