76.ニコレッタ、誘拐犯を追う。
無事に出産を終えた私。
主従の関係となったディーゴとも何ら変わらない生活を送っている。
男の子はリク、女の子はソラと名付けた我が子はすくすくと育っている。
出産時は19だった私も20となった。
2人は生後半月である程度の単語をしゃべり始め、タタタと安定して歩き回るようになっている。
さすが我が子!
まあ人間か獣人か神獣か分からないからね。
鑑定では一応人間って出るけど、魔王ユミも人間って出てるけど200オーバーの存在だし……何より私もいまだに人間って出るけど、人である自信は無い。
そんな我が子は今も微力ながらも魔力を放出し、キャッキャと笑っているのを見て、末恐ろしさを感じた。
エレナもイレーネも元気に出産したようだ。
エレナのところは女の子が生まれ、跡取りを作るべくまた励んでいるとエレナが照れながら言っていた。
イレーネは男の子を出産。
未来の王様が誕生したことに、王国民も盛り上がっているようだ。
私の体調はすっかりと回復し、エレナ達の子供が落ち着いてから女子会をしようと計画している。
今はお互い育児で手一杯である。
エレナとイレーネは極普通の育児なのだろう。
夜泣きが大変だとか、おしめや授乳がと愚痴が書かれた手紙が定期的に届いていた。
私は逆に夜はしっかり寝れるのだが、あっちこっちと移動する2人にあたふたしている。もちろんフェル達も見てくれてるが、万が一にも魔物のいるエリアに突入していかないか心配になって落ち着かない。
フェルの魔力入りの魔石をボタンに加工して、衣服にいっぱい付けているので魔物は逃げて行くはずだが、それでも全然安心できない。
「ニコ、心配しすぎだろ?」
「いやディーゴ、魔物だって命の危険を感じたら一矢報いてって事もあるでしょ?」
「そもそもそんな近くまで接近する前に逃げ出すって」
「でもさー、私の目の届かない範囲に居ると、心配で心配で……」
「ソラは俺がしっかり見守ってるし、リクはカーリーがちゃんと見てるって!」
「そうなんだけどさー」
こんなやり取りを日常的に何度も繰り返している。
嫌な顔をせずに毎回こうやって返してくれるディーゴには感謝しかない。
どんなに強くなっても、私の心は弱いままだ。
そんなある日の夕方、拠点にカルロが訪問してきた。
カルロも、一緒に来た騎士達も気まずい空気を漂わせている。
拠点の庭で話を始めたカルロ。
私の隣にはフェルが座っている。
「ティナちゃんっていただろ」
「あ、えーっと、孤児院の転移使えた女の子だよね?」
「どうやら攫われたらしい」
「えっ!なんでよ!」
「なんでと言われたら、多分だが転移能力があることがバレたからのようだ。攫った連中の素性は分からない。なのでここに相談しに来た」
カルロにそう言われ、確かに転移は悪用できる能力だし、実際以前はそれを悪用し貴族を殺している……
でも、一体誰が……ん?相談?
「ニコちゃんは彼女、ティナちゃんにあの聖魔石のペンダントを渡してたって聞いたけど、本当かい?」
「あ、うん。念の為にと思ってたけど、攫われたんなら意味なかったよね」
「いやそれが、今日はちょっとこれなかったが姉さんが、カーリー様ならあの聖魔石のある場所をある程度感知できるんじゃないか?と言い出してな。そんなこと、できるわけないとは思ったのだが念の為な」
私は、それを聞いてカーリーならなんかできそう。と思った。
「ちょっと待ってね」
カーリーに念話でそのことを伝えた。
すぐにリクを肩車して戻ってきた執事カーリー。
「主様の作った魔石であれば近くにあれば感知できますとも。下僕としては当然のことです」
「それは、良かった」
カルロが引きつった表情をしているのは、肩に乗ってるリクが下僕下僕と言いながらキャッキャしてるからである。将来が心配だ。
「さすがカーリー。どのぐらい近づけば分かるの?」
「凡そ1キロぐらいの範囲なら可能ですゆえ、今からちょっと確認してまいりましょうか?」
「じゃあお願い!あの子に何かあったら大変だから!」
「リク様、主様の方へ……」
カーリーが私の前に膝をつくとぴょんと飛び降りて私に抱きついてきた。
この子まだ1才になってないんだけどね?
まあ元気であれば良いか。
「では主様、少しお待ちを」
次の瞬間にはカーリーは目の前から消えていた。
その後、ディーゴも戻ってきてソラも合流。
2人とおままごとして時間をつぶす。
私はパパ。リクがおじいちゃん。ソラとディーゴは近所の迷惑なおばさんらしい……理解不能だった。
丁度、街の警察官をやらされたカルロが家に怒鳴り込んでくるシーンでカーリーが帰ってきた。
恥ずかしさに動きを止めたカルロに、リクが容赦なく「ごようだー!はどうしたの?」と言っていた。
「2人とも、そこにおすわりしてカーリーのお話聞く?ディーゴと遊んできてもいいよ?」
2人はディーゴと一緒に外に出ていった。
「主様。王都の中心街にいくつか反応がありましたが、把握していない物が1箇所だけございました」
「ほんとか!」
カルロが嬉しそうだ。顔はまだ赤い。
「じゃあ行こう!」
「いや、ニコちゃんは留守番しててくれないか?後は俺達がやりますから、カーリー様、場所の案内だけお願いできますか?」
「えっ?私も行くよ。相手は人攫いでしょ?私も怒ってるんだよ?」
「ですが……」
カルロは私とフェル達に視線を彷徨わせている。
「カルロ、ニコの体ならもう大丈夫だ。ニコ、無理はするな」
「うん。分かってる」
「ニコちゃん、皆様も、ありがとうございます!」
カルロが深く頭を下げる。
こうして、私達は王都へ向って走り出した。
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