72.ニコレッタ、エレナの新居にて
合同結婚式が終わって1ヶ月程たったある日、私達は冒険者ギルドを退職したエレナの住む、王都の城の近くに購入した新居へお邪魔した。
もちろんエレナとカルロの2人で住む愛の巣だ。
私は、皆に迂闊にドアを開けないように注意をしておいた。特にクラリスに。
プライバシーへの配慮、大事。
出迎えた新妻エレナに一緒に食べる用に王都で人気のお店で購入したケーキを手渡した。
さらには「後で食べてね」と蟹身となったシザーハンド、中身を取り出した茹で海老となったシーインセクト、味噌(生殖巣)部分を取り出し茹でた雲丹と思わしきブラックニードルを、私が作ったスチール製の容器ごと渡す。
もちろん新婚旅行と称して北の港町へ行った時の戦利品だ。
拠点の収納ボックスには同じものが大量に入っている。
エレナは嬉しそうに保存用の魔法の箱に収納していた。
そしてお茶の準備と出ていったエレナ。私は居間で待っているとカルロが寝室のあるという二階から降りてきてご挨拶。今日はカルロも久しぶりの非番だと言う。
「邪魔しちゃったよね?やっぱ休みは2人でラブラブしたいでしょ?ホントごめんね?」
私は少しニヤつきながら、戻って来たエレナを揶揄った。
「もう!そんなこと言うけと、そっちだって新婚のくせに」
「あ、うん」
風向きが怪しくなってきた私は口をぎゅっと結び、チビチビと出されたケーキと紅茶を頂いている。
そんな中、カルロが「こんな時になんだが……」と話しはじめた。
なんでも最近、王都内の貴族の屋敷を襲撃する窃盗団が出るのだと言う。だがその犯人の数も分かっておらず、窃盗団と言って良いのかも正直わからないと……
月に1度のペースで貴族家当主が殺され金品が少なからず無くなっているらしい。
襲撃と言っても使用人達には怪我人も出ず、殺された貴族家当主はあまり評判が良くは無い為、義賊なのではと国民が面白おかしく噂を広めているらしい。
実際、屋敷からは当主個人の隠し資産と思われるもののみが奪われ、いくつかの孤児院に多額の寄付が行われているという。
その話を聞いて、関わりたくないとは思った私。
王国としては放っておくこともできず、4人が犠牲になった3週間ほど前ぐらい、つまりは結婚式を挙げた直後ぐらいからカルロ率いる第六隊が調査の任務で動いているようだ。
4人目の犠牲者が出たことで、国には多数の貴族からの苦情がきているそうだ。そいつら全員、後ろめたい何かがあるのかな?と勘繰ってしまう。
相手は本当に証拠らしい証拠を残していないが、何かの魔法を使って侵入から殺害、逃走迄をこなしていることは分かっている。魔法の痕跡が残っていることまでは突き止められたようだ。
それで、特に魔法について深い見識を持つカーリーの知恵を借りたいと頭を下げられた。
結局はその日の午後から4件目の屋敷を確認することになる。
「ニコちゃんごめんね。でも、カルロったら最近全っ然、家にも帰ってこなくて……早く解決してほしいなって」
そう言うエレナに送り出されるが、カルロには冷たい笑顔が向けられている。
2人の平穏な夫婦生活の為にも早く解決してしまおう。
到着した男爵の屋敷は、本当に男爵邸?と思うぐらい大きかった。
殺害現場であった当主の私室の魔力の痕跡を調べると、残っていたのは転移魔法の痕跡だと判明。
実際に窓際から見える場所を確認すると、同じような痕跡が見つかったので、目視での転移が使える術者のようだ。犯行は1人、もしくはその術者が抱えれる2~3人程と予想していた。
そして犯行の日は満月の夜ということも分かっているので、次の満月の夜には、今王都で評判の悪いトップ4の4人の貴族の屋敷にこっそりと張り込みすることが決まった。
そして当日。
上からの態度を取って元の姿に戻ったフェルにびびる男爵。
ディーゴにちょっかいを出そうとして、ディーゴのアイアンクローにより気絶させられたエロ子爵。
別の男爵邸に行ったカーリーは、そもそも最初から認識されずに部屋に潜んでいるようだ。
伯爵の屋敷に潜むことになった私とクラリスは、伯爵が何とかおもてなしをしようとするので、邪魔なので私室の隅っこに結界を張って閉じ込めておいた。
派手な歓迎会なんてばれちゃうでしょうが!
そして、ディーゴから『来たぞ』と念話で連絡が飛んできた。
10分程後、ディーゴのいる子爵の屋敷に到着すると、カルロが用意してくれた魔封じの鎖により捕縛されている女の子が、しょんぼりと項垂れ泣いていた。
到着時には子爵が気絶し床でぐったりしていたので、「この子が?」と確認すると、「俺に抱きついてきたからぶん殴っておいた!」と一言。
ディーゴは護衛に来てるんだよ?バカなおっさんだなーと思った。
それよりの問題はこの子だ。
ディーゴに確認するとやっぱり転移で突然部屋に現れたし、すぐに外を確認したそうだが、他に人はいなかった様なので、やっぱりこの子の単独犯のようだ。
ガリガリに痩せ、恐らく片目が欠損しているのだと思う。
私が近づくと体をビクッとさせ怯える少女。
その反応に胸がキュッと締め付けらたが、私は構わずその女の子を優しく抱きしめ背中を撫でる。
「怖くないよ、大丈夫」
そう言って回復魔法を全身に注ぎ込んだ。
ついでに浄化も追加したのは内緒な話。うん良い香り!
「お話、聞かせてくれる?」
体を少し放し、女の子の顔を見ながらそう伝える。
「なんで?目が見える。お腹も痛くない!足も、手も……」
混乱した様子の女の子は、大きな声で泣きじゃくってしまったので、もう一度抱きしめ続け落ち着くのを待った。
途中で気絶していた子爵が目を覚まし、大声で怒鳴りちらしていたので、すでに合流していたカルロが部屋の外へとつまみ出していた。
泣きながらその女の子、ティナが少しづつ話してくれたのは、最初に被害のあった子爵家の当主の家でこっそり飼われていた奴隷だったらしい。
食事も碌に与えられず毎日いたぶるように痛めつけられていたらしく、最終的に目をナイフで抉られた痛みに魔法が発動。
子爵の腹部は切り取られたように消失し、そのまま倒れ込む子爵が持っていたナイフを奪うと、ついでに子爵がいつも笑顔で見ていた箱を持ち出し逃げ出したそうだ。
窓の外への転移については、窓の外を見ていたらなんとなくできると思って手をかざすと、気付けば外に立っていたそうだ。
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