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[完結]捨てられ聖女と森の主・妹のためにと捨てられたんですけど?  作者: 安ころもっち


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64.ニコレッタ、結婚の儀に出席。

私は17となった。


そして王太子ローランドは18となり侯爵家の令嬢と結婚することになった。


ローランドについては何度も陛下からあれやこれやとお誘いがあったが、当然の如く断り続け、ローランドの年齢的に遂に諦め幼馴染の侯爵家の令嬢との話がまとまったようだ。


この年まで婚約者を持たなかった異例の事態に心配の声がチラホラ上がっていたようで、王国民たちは満を持しての未来の王妃様の誕生に盛り上がっているようだ。


結婚の儀は盛大に行われる予定だ。

私達も祝福を与える聖女として参加する。


当然万が一の護衛任務も兼ねている。

帝国からのやっかみはすでにないが、国内ではまだ不穏な輩が残っている可能性が高いという。王位継承権を持つのは今やローランドは唯一人だから仕方のない事だろう。


大っぴらには言えないが、いまだに幽閉されているレアンドロを支持する派閥もあるという。王族も御貴族様も過去のしがらみやらが有るようで大変だなと思った。


結婚の儀は滞りなく進み、私達が式典の時の様に派手な演出で祝福を与える雰囲気を醸し出し、盛り上がってきたところで口づけをして無事終了した。


私は、若干の緊張感の中、滞りなく終わった結婚の儀に安堵する。

王太子とはそれほど頻繁ではないが、関係が希薄ではなかったし可愛い奴だとも思っていたので、口づけの際は思わず頬を涙がつたっていた。


年齢的にはローランドの方が上なのだが、弟のような、むしろ通り越して親戚の子が嫁を貰ったような、そんな感情が溢れ出しながら心を熱くさせて眺めていた。


その後の王家の晩餐会にも招待され、王族とお相手の侯爵家の面々とも一緒に夕食を食べる。


フランス料理の様に見た目も楽しいフルコースでお腹を満たす。

もう前世のレストランの味の記憶などは薄れているが、それよりも遥かに美味しいなと自信を持って言える味であった。ちなみに、前世ではフランス料理のフルコースは食べたことすら無い。


お相手の令嬢もその御両親もとても温和な雰囲気で、これなら安心してローランドを任せられると、謎の上から目線でお相手さんの所作の一つ一つにうなずいていた。


多少の不安もあった結婚の儀もこれで無事に終了である。

そう考えてもうそろそろお(いとま)させて頂こうと腰を揚げた時、扉を乱暴にノックする音が響いた。そのまま扉を開けたのは見たことは無いが聖騎士団の金のラインが入った鎧を纏っている男性騎士であった。


慌てた様子の男の話では、外には大量の魔物が突然出現し街で暴れているという。各隊の面々が討伐に向かっているが、戦況は思わしくないようだ。

私達はすぐに外へと飛び出すが、城の外はひどい状況であった。


目に映る魔物は5体程度だろうか?

その魔物の姿に心が冷たく凍り付くような不快感を覚えた。


筋肉質な左手はオーガ?右手のぶっとい腕はオークかな?顔は狼顔だが尻尾にはビッグバイパーのような蛇の首が3つ生えている。周りを見ると余った部位を継ぎはぎしたような違う組み合わせの魔物たちが暴れ、建物を破壊している。


いわゆるキメラというやつだろう。

魔力も5000を超えている。


私達の敵ではないが、一般の兵達には到底抗うことはできないだろう。


「陛下、みんなには撤退の指示を。ここは私達に任せて下さい!」

肩を上下させて私の後を追ってきた陛下にそう伝えると、フェル達に「行こう!」と声を掛ける。


目の前では、狼顔のキメラを取り囲んでいた聖騎士団がなぎ倒されていた。

そのキメラを手の中に生成した魔力の剣で縦に切り裂く。


「あなた達も皆に撤退を指示して!」

そう言って周りを見渡すと、すでに他のキメラはフェル達三人により倒され、クラリスは抜いた剣をどこに向けたら良いかとオロオロしていた。


カッコ良く登場して撤退を告げた私の言葉は、今やなんの意味も持たなかった。

このまま森に帰ろうかな?


顔を赤く染め少し泣いた私は、突然空に強い魔力を感じて見上げた。


その空の一部に亀裂が生じ、そこから這い出るように出てきた魔物の姿に吐きそうになった。

大きな目玉に無数の触手、体のいたるところに魔物の顔が張り付いている。そして、所々に人の頭や手足と思われるものも突き出ていた。


気持ち悪い。

全身に鳥肌が立ったその醜悪な見た目の魔物を鑑定すると、その魔力値は3万を超えていた。


そして、気付けばその魔物の隣には白衣を着た男が立っている。


「今この瞬間より、王国はこの私が貰い受ける!」

高笑いしながら風の魔法により広範囲に響く声でそう宣言する男。


「全てを無に変えられたくなえれば、俺様に従え!そうすれば俺様の手足となって働く栄誉をくれてやろう!」

そんなバカな宣言をしたことで、私の心が幾分平常心を取り戻す。


「残念。私の方が強い」

目玉の魔物の前に転移した私が、そう言ってその目玉の魔物を一刀両断……


手に持つ魔力の剣を目の前の魔物にたたきつける寸前、目玉の魔物の触手が膨れ上がるように全方向に鋭く伸びる。すでに結界はオンにしているが、反射的に手を止め目の前にさらに結界を作り出す。


だがその結界も、体に纏っている結界もあっさり貫かれたことを、胸に広がる痛みで実感した。


「魔法の無効化。その魔物の特殊能力だ」

血を吐き意識を失ってゆく私が最後に見たのは、私をあざ笑う男が、目玉と一緒に切り刻まれる光景だった。



私は目を開ける。

最初に見えたのは涙ぐむマルティナの顔だった。


私はぼんやりした頭で、自分があの魔物にしてやられたことを思い出す。

すぐ近くにフェルが丸まって寝ており、それに寄りかかるように人型ディーゴが眠っている。


カーリーとクラリスはなぜか床に正座でこちらを見ている。クラリスは私と目が合うと号泣して下を向き嗚咽を漏らしていた。


一番冷静だと思われるカーリーに話を聞くと、私が触手に貫かれた後、人型になったフェルが全力であの男を魔物ごと殲滅し、ディーゴが「なんで俺の結界まで貫けるんだよ!」と焦った様子で私を抱きかかえ、駆け付けたカルロの指示でこの神殿までやってきたそうだ。


天井に大穴をあけて……


幸い聖魔石のペンダントによりすぐに体の修復作業が行われたようで、胸にかかっていた聖魔石は全て空になってしまった。マルティナが駆け付けた時にはほぼ傷は癒えていたのだという。


それからマルティナの治癒により完全に傷を治し、数時間がたちやっと私が意識を取り戻したという。


ここに来た際にはカーリーが主様を守れなかった反省の意味をこめた正座し、クラリスは盾にすらなれなかったとカーリーの隣に正座した。

フェルはかなり狼狽えており私に縋り付いていたそうだが、すでに回復しているのは分かっている様子で、ベッドの横をウロウロしていたが、2~3時間たってから落ち着きを取り戻し元の姿に戻って寝ているようだ。


そして、エレオノーレは目を覚まさない私をそっと撫で、思わず涙したところで私が目を開けたので、涙が止まらなくなったという事らしい。


男の素性は分らないが、私が鑑定で見た名が明らかに日本名だったことを起きてきたフェル達に告げ、どうやら転生者だったのだろうと結論づけた。

このことは陛下には報告しなかった。

同じ転生者だとバレた時、私が危険視されない保証はどこにもないのだから。


今回の事件では、物損や負傷者は出たものの、幸い死者はいなかったと聞き安堵した。

そして、王都を救った英雄として、暫くは聖女様バンザイ、神獣様バンザイと、集まった国民たちによる大きな声が数時間続いていたと聞いて、益々街に出にくくなった気がした私だった。

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