22.ニコレッタ、ため息まじりで説明を受ける。
イラっとする私の視界にマリカの背中が映る。
「あなた達はもうお嬢様とは他人になったのよ!それにお嬢様は聖女様なのよ!不敬なあなた達はもう終わりよ!」
マリカが扉の方に仁王立ちして2人に言い放つ。
ちょっとうるっと来てしまったが、その後ろでセレナとジョルジョが、マリカの後ろにしゃがみこみ、肩を掴んでうんうんと頷いているのを見て、何となく涙がスッと引っ込んでしまった。
途中からの状況で判断するとしたら、今回のMVPはおそらくマリカだろう。
「そう言えば、フェル、外に狼いたよね?なんで一声かけなかったの?フェルなら一瞬で解決できた多と思うけど……」
ジョルジョの袖を引いて確認してみる。
「いやー、そうなんでしょうけど、大きくてちょっと怖そうだったので……」
そう言って頬を掻くジョルジョの脛をもう一度蹴っておく。
部屋の窓を開け、「フェル」と声を掛けるとすぐに顔を見せたフェルが窓から飛び込んできた。それに合わせて室内で悲鳴が聞こえる。
私はよしよしと声をかけながらフェルを撫でまわす。
「さあ、誰がこの状況を詳しく説明してくれるのかな?」
そう言って皆に笑顔を向けた。
◆◇◆◇◆
狭い部屋に鎮座するフェルに寄り添うように座り心を落ち着けた私は、部屋の入り口の格子を消すと兄と妹、兵士たちを招き入れた。外に立っていた兵士も呼ばれ、部屋の中に集まるので、結局はベッドの上にフェルと一緒に座っていた。
「ハーイ!ハーイ!私から報告しまーす!」
そう言っているのはセンターで正座をしているジョルジョであった。右手を高く上げアピールしている。
「じゃあジョルジョ、洗いざらい正直に吐くんだ!」
「いや私悪くないですってー!」
「いいから早く教えてよ!」
「はい!」
少し落ち着いたのにイラっとしてしまった私。その心を代弁しているのかフェルがジョルジョに殺気を飛ばし、ジョルジョはまた土下座をしていた。暫くしてようやく普通に話しだしたジョルジョにより、何となく流れは理解できた。
一通り話を聞いたところで、マルコとファビオラが私に向かって「お前ばっかりずるいんだ!」とか「チヤホヤされたかったの!」などと、好き勝手に騒ぎ始めたのでフェルが睨むと口を閉じた。
今回は殿下が私を手籠めにして結婚。王太子は聖女と子を生しハッピーエンド。ついでに兄と妹も王族ということで両親の罪からも逃れる。というシナリオだったらしい。
それらを手引きしたのはもちろん兄と妹だった。
殿下が「こんな薄汚れた場所で俺様からの寵愛を受けれるのだ!感謝して欲しいくらいだ!」と言い放った時にはフェルが本気で殺気を飛ばし、殿下は白目を剥いてひっくり返っていた。
ジョルジョの話ではクレメンティ家の屋敷に監視の兵経由で殿下に連絡を取り、なんとか城への招待へとこぎつけ今回の話を持ち掛けたそうだ。それらの内容は当然の様にジョルジョたちにも漏れ、今回はマリカが部屋のカーテンに隠れるように潜んでたそうだ。
ジョルジョとセレナは隠れる場所があまりなく、仕方なしに1階の階段下の納戸に隠れていたのだと言う。
その話にマリカが少し興奮気味に補足した。
はじめはカーテン越しに隠れてはいたものの、下見に来た殿下の視線に見つかってしまうかも、とドキドキしていたそうだ。
殿下はトイレを見て「なんだこの小汚さは!これも何とかできなかったのか!」と兵士に怒っていて、「1階のトイレは綺麗にしてあります!」と言われそっちを使うことになったとのこと。
それならと殿下が部屋を出たタイミングでマリカはトイレに移動、こっそりと様子を伺っていたそうだ。
殿下が服を脱ぎ出し私に覆いかぶさったので、我慢ができずに飛び出し飛び蹴りを喰らわせたそうで、「怖かったけどやってやりました!」と笑顔のマリカを抱きしめ頭を撫でた。
マリカは「なっ!お嬢様!私はお嬢様よりお姉ちゃんなのです!子ども扱いしないで下さい!」と言いつつも、手を振り払う事はせずに顔を赤くしていた。持ち帰って良いかな?
何となく全容がわかったところで下からの叫び声とドタドタと階段を上がってくる声が聞こえ、それが監視をしていた兵だと確認できた。事情を話すとその内の一人がすぐに城に報告しますと言って出ていった。
それを皮切りに兵士たちが逃げようとしたので鎖を生やして拘束しておいた。
「お嬢様凄いですわ!」
兵士たちが騒いでいる中、マリカは私を抱きしめ頭を撫でてくる。密着すると柔らかいモノがぽよんぽよんするので、セレナ譲りの見事なモノの感触に偉大なる遺伝子の力か……と歯ぎしりしてしまう。
だがまだ慌てる時間ではないはずだ。私はまだ10才、ここから大きく胸膨らませる未来に期待しよう。
そんなことを考えながらうんうんと唸っていると、またも下からドタドタと音がして、兵士たちが上がってきた。兵士の中にはカルロ隊長もいたのでもう安心だとベッドに腰を下ろして眺めていた。
カルロは倒れている殿下を見て頭を抱えていたようだが、まあなるようにしかならないだろう。
手早く兵士に指示を出したカルロは、私の前で膝をつく。
「この度は誠に申し訳ございません。宜しければフェル様とご一緒に城へご足労いただければと……」
私は諦めたようにうなずき、護送の馬車の後ろからフェルに乗ってゆっくりと城へと向かう。
流石に今回のは有耶無耶にはできないよね。
そんなことを思いながら、近づいてくる城を眺めていた。
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