少女と、魔物退治 4
淡く、青色の光を微かに灯していた精霊樹が別の光を灯した。
その光が、私に向かって飛んでくる。私は、シーフォに掴まりながら、その光に魅入られてしまう。
シーフォから、「ひひひん!(手を離さないでね)」という声を聞いて、私は手を離さないようにしなければと必死にしがみつく。魔物からの攻撃の手は緩んでいない。
下を見れば、獣人たち、エルフたち、グリフォンたちが必死に魔物にとびかかっている。
そして、私に飛んできた光は、私の目の前に来た。その光は、不思議なことに、私には形が見えた。透明で、今にも消えそうなぐらい薄いけど、人の形をしているのがわかる。これは、精霊だ。この精霊も、力を失っているのだろう。それが、見ていてわかる。シレーバさんの契約している精霊は、こんな風に見えなかった。何か違いがあるのだろうか。
その精霊は、私の目の前にいて、何かを訴えている。訴えているのは分かるけれど、私には、その言葉は分からない。だけど、こんな状態で、精霊がわざわざ目の前にいるってことは私に力を貸してくれようとしているのではないかと思った。
精霊に力を貸してもらうためにどうしたらいいのか、シレーバさんに聞く暇はない。シーフォが一心に、魔物の攻撃を避けてくれている。切られた魔物の一部が動き、幾ら切られても魔物は動じない。切られた部分から新たな体の一部が生え、魔法は時には食し、時には薙ぎ払う。この状況を打破するために、今のままでは駄目だ。何か、状況を変えなければならない。
私は、精霊の方を見つめる。
この精霊は力を貸してくれようと、ここにいる。なら、私は―――、一つの考えに至った。
私は、私のすぐそばにいる精霊らしい存在に向かって、シーフォに掴まりながら叫んだ。
「貴方の名前は、フレネ! 受け入れてくれる!?」
グリフォン達やシーフォと同じように、精霊も、名前をつけることで契約を結べるのではないか。そんな風に思った。
だからこそ、とっさに思いついた名前を叫んだ。
私の体から、魔力がどっと抜けていく。グリフォンたちやシーフォと契約を交わした時よりも、いっぱい抜けていった気がする。
目の前で、その精霊が――――フレネがさっきよりもよく見えるようになった。
人の形をしている。女の子? 先ほどまでうっすらとしか、なんとなくしか見えていなかったのにちゃんとした形になっている。薄緑色の髪の女の子。それが、私の傍にいる。
「フレネ、あの魔物に思いっきり、攻撃できる?」
契約をしたばかりなのに、そんなことを聞かなければならない状況にちょっと残念に思う。もっとゆっくり契約がなせたらよかったのにとちょっとだけ思った。
「うん、レルンダ。一緒にやろう」
「一緒に?」
「うん。レルンダ、風をイメージして」
「風?」
「そう。私は風の精霊だから」
「風、風で攻撃……」
風の精霊、フレネ。フレネは、私に向かっていう。
風をイメージしてと。そう、フレネが言うってことは私は風の適性が高かったりするのだろうか。分からない。それに、契約をしたら、元気がなかったフレネが元気になったのはなんでだろう。魔物を、倒すことが出来たら聞かなければ。
それにしても、風。風の攻撃。思い起こすのは、アトスさんを探しにガイアスが飛び出して、大人の人たちに追い詰められた時のこと。ガイアスのことを守りたいって行動した時、あの大人の人たちは風の魔法みたいなものを私やガイアスに向けていた。竜巻みたいなものだった。強い魔力のこもった風だった。
そうだ。あれをイメージしよう。
あれをイメージして、そのような風なら。
「イメージ出来たなら、魔力を込めて。あとは私がやるから」
あの時の風を思い出す。そして、シーフォの上に乗ったまま、魔力を込める。イメージするのは、風だ。強い力を持った、強風。あの時の、恐ろしかった竜巻のようなもの。
風が吹く。
先ほどまでこれほどの風は吹いていなかった。だからこの風は、私の魔力によって生み出されたもの。
強い強い、風がその場を支配する。私の魔力が、それにこもっているのがわかる。その、私の魔力のこもった風は、あの魔物の方へと向かっていく。
私は制御できていない。こんな大きな魔力を込めるだけで、その魔法をイメージするだけで精一杯だった。だから、この魔法があの魔物に向かっていってくれているのは、フレネのおかげだろう。
私と、フレネが力を合わせて生み出された魔法は、魔物へと襲い掛かっている。
それは器用に獣人たちやエルフ、グリフォンたちにはふりかからない。それは、あの魔物にだけ向かっていった。
―――少女と、魔物退治 4
(多分、神子な少女のもとに飛んできた光は精霊であった。その精霊と少女は契約を交わす。そして、少女と精霊は風の魔法をなす)




