少女と、エルフ 5
エルフの村の管理している薬草園は、狼の獣人の村ではなかったものだ。薬草を栽培するということをやってなかったからこそ、獣人の村で過ごしていた頃は、薬草を採取しに村の外までいっていたのだ。この素晴らしい薬草園を見たら薬師のお姉さん———ゼシヒさんは目を輝かせることだろう。ゼシヒさんには、エルフの村で別れてからまだ会っていない。今、どこのエルフの家でお世話になっているのだろうか。
薬草園での薬草の採取は、ランさんより私の方が上手だった。ランさんに私が薬草の採取方法について教えることになった。いつも、ランさんには教わってばかりだから、こうしてランさんに私が教えることが出来ることが私にとって嬉しかった。
ランさんにはいつも私は与えられてばかりだけど、こうしてランさんにお世話になっている分返せているのだと思うと、どうしようもなく嬉しかった。
ランさんと一緒に、エルフの女性に言われた薬草の採取を終えた。予定よりも大分早く私たちが採取を終えたことには驚いていたみたいだけど、エルフの女性は相変わらず友好的な態度は取ってくれなかった。
その後、他の獣人に会いにいっていいか、ということを聞いたらそれならば案内するといわれた。
場所を教えてくれたら私たちだけでいってもよかったのだけれども、そういっても却下されたからもしかしたら私とランさんだけにしないようにしているのかもしれないと思った。
その後、皆に会いにいった。
ガイアス、ドングさん、シノルンさん、オーシャシオさん、シノミ、カユ、それにニルシさんや、男の子の獣人たち、他の獣人の皆、グリフォンたちに、シーフォ、皆に会いに行った。全員ちゃんと元気そうだった。だけど、ちらっと聞いた限り、やっぱり名前を教えてもらえていないのだという。
皆元気そうで、エルフの人たちによくしてもらっているといっていたから、そのことに関してはとても安心している。だけれど、名前を教えてくれないのは何故なのだろうか。
エルフ同士では、名前らしき言葉を言っているのを聞いたともガイアスはいっていた。そのことを考えると名前がないってことはないのはわかるのだけれども。
私たちを歓迎はしているけれど、仲良くする気がない。その理由はなんだろうか。グリフォンたちに聞いたら、エルフたちはグリフォンたちやシーフォが村の外に出るのを嫌がっていて、グリフォンたちやシーフォを警戒している様子を見せているともいっていた。
それに、不思議な魔力がこのあたりには漂っているとも、そんな風にもいっていた。
不思議な魔力。
獣人の皆は魔力をほとんど持たず、種族的に魔法を使えないものばかりで、ランさんだって魔法を使えなくて。だからこそ、そのグリフォンたちやシーフォがいっている不思議な魔力を、感じられるとしたら私だけだと思う。私は少なからず魔法が使えるのだから。
エルフは、魔法が得意な種族なのだからその不思議な魔力の正体を私が知ることが出来たら、エルフの人たちともっと心の距離を近づけられるのではないかってそんな風にも思うから。
―――だから、私はエルフの女性の家にランさんと一緒に戻ってから、一生懸命、その不思議な魔力について探ろうとしていた。でも、魔力を探る、といった行為をどのようにしていいか分からなくて、「うーん…」とうなりながら思考錯誤してやっていた。
「……ん?」
自分の魔力を使って、周りに広げていって、何か不思議な感覚をつかんだ。何かがある? ううん、何かがいる? そんな感覚をつかんだ。私は、その感覚がなんなのか知りたくて、それが、なんなのかわかりたくて。だからエルフの女性の家の扉を開けて、外に立ち、その不思議な感覚の感じた場所を見た。
エルフの女性は、突然、部屋から飛び出した私を追いかけてきたけれど、それを気にしている余裕は私にはなかった。
視線を向けた先にいたのは、あの、おじいさんエルフだった。
不思議な感覚は、あのおじいさんエルフの隣、ううん、肩の上? そのあたりが何だかこう、魔力が歪んでいるというか、他と違うというか、それがわかる。目までおかしくなったのか、私には何かがいるようにも見える。
そうやって、おじいさんを見ていたら、おじいさんエルフと私は目が合った。
おじいさんエルフは私を認識すると、強張った顔になって、そして———、
「そこの娘よ、降りてくるがよい」
と、私は声をかけられた。
私がおじいさんエルフに呼ばれたのは、私が不思議な魔力を認識したからだろうか。それにしてもどうしておじいさんエルフは難しい顔をしているのだろうか。
分からなかった。だけど、このおじいさんエルフに話を聞けたら、おじいさんエルフが難しい顔をしている理由がわかるだろうか。そして、エルフの人たちがどうして名前を教えてくれないのか教えてもらえるのだろうか。そんな期待が湧いていた私はおじいさんエルフの言葉に従って下に降りるのだった。後ろから、慌ててランさんもついてきた。
おじいさんエルフに「そこの女性は呼んでいないのだが」と言われていたが、「子供を一人ではいかせられません」と強い意志で言っていたので、おじいさんエルフは諦めたように息を吐いていた。
おじいさんエルフについていく中で、私は気づいたら意識を失っていた。
――――少女と、エルフ 5
(多分、神子な少女は不思議な魔力を感じて、そしておじいさんエルフに呼ばれた。呼ばれた先で待ち受けるものは、なんなのか)




