少女と国主の手紙のやり取り 4
神子 レルンダへ
手紙をありがとう。レルンダの話は興味深い物が多いな。
ディライからもレルンダの住まう村についての話は色々と聞いているけれど、俺もいつか君の住まう村を見てみたいと思う。きっと俺が見たことのないようなものが沢山あるだろうから。
レルンダにも俺の自慢の国と国民たちのことを知ってほしいなとも思うよ。
それと恋の話だったか。俺はそういうのはあまり経験がない。過去に良い仲になった女の子ぐらいはいたけれど、それぐらい。俺自身は国主の息子だから、簡単に誰かと結婚するとかは考えられなかったけれど。
レルンダは自由に結婚をしていいと言われているんだろう? だったら本当に好きにすればいい。
君の住んでいる村がまだ村のうちに、そういう相手は決めておいた方がいいかもしれないな。もし周りから認識される国になって、レルンダが神子だと周りに広まっている状態だと、誰かと自由に恋愛するというのは難しくなるから。
その時に君が選んだ相手がよっぽどの相手だったら問題はないだろうけれど……、大変だとは思う。
神子と国主という立場は全く異なるけれど、それでも普通とは違う立場という共通点はある。
だから誰かに恋をして、もし誰にも相談できないことがあれば俺が聞くことも出来るよ。実際に会ったことがない相手だからこそ、相談しやすい面はあるだろうから。まぁ、その頃には俺とレルンダも実際に会えているかもしれないけれど。
シュオンガルベ・サフ・レゼッド
シュオンガルベさんから届いた手紙。
シュオンガルベさんの砕けた口調は、本当になんていうか……気のいいお兄さんみたいで、いいなぁと思う。
手紙でだけやり取りをしていても、なんというか……いい人だなと思う。
ディライガルンさんがどうしてシュオンガルベさんを慕っているのかよく分かる。なんだろう、嫌味とかがない。私への手紙も、なんだか自然体というか……文章からもその人柄が分かる。
「ふぅん。神子は兄上に恋愛のこと聞いてるんだ」
「うん、ちょっと聞いてみたの。ディライガルンさんは誰か好きな人とかいるの?」
「特にはないね。僕はどういう相手と結婚したとしても、兄上を第一にするとは思うけれど」
「そうなんだ。何だかディライガルンさんらしいね……」
「そのぐらいの方がきっとちょうどいいよ。恋愛感情に夢中になると暴走する人も多いからね」
ディライガルンさんが手紙を届けに来た時に、そう口にする。
ディライガルンさんって本当にはっきりしているなぁ……とそう改めて思う。
ちなみにシュオンガルベさんの手紙には一切書かれていないけれど、とても忙しくしているらしいってディライガルンさんは言っていた。
……サフ連合国家は、私の居た国――フェアリートロフ王国との緊迫した状況がずっと続いているのだ。
戦争って、考えただけで怖い事だとは思う。人と人が争いあって、そして人が死んでしまうこと……。
私はそういう戦いは知らない。人同士で殺し合いとかは知らない。……だからそういうことは起こらない方がいいなぁと思う。けれど、きっとそういうものはどこかでずっと起こっている。
私が住んでいる場所だって、そういう恐ろしいことって起こる可能性は少なからずあるんだろうなとも思う。
「サフ連合国家はまだまだ混乱しそう?」
「そうだね。まだ続くと思う。いっそのこと、兄上が連合国家自体を纏めるとかもありだと思うんだけど、兄上は乗り気じゃないからなぁ」
「そうなの?」
「うん。兄上はね、凄い人だからもっと国民を増やしたり、もっと大国に成り上がることだって出来る。僕たち、レゼット国の国民は幾らでも力を貸すんだけど」
ディライガルンさんはそう言って楽しそうに笑う。
国主として立派に務めているシュオンガルベさんは、それ以上に上を目指すことはしないタイプのようだ。
周りがもっと上を目指していても、そうではない。
「レゼット国と異なって、この村はもっと大きくなっていく予定なんだろう?」
「うん。誰も失わないようになるべくしたいなと思ってるの。そのためにも力はつけたい」
「神子は兄上とはまた違うね。特別な立場ではあるし、周りから慕われていて、共通点は多いだろうけれど全然違う。きっと神子は人がもっと増えたり、領地が増えたりするのを受け入れるんだろう?」
「うん。もしそういうことになったら……周りと相談しながら考えると思う。受け入れた方がいいって思ったら、受け入れると思う。もちろん、難しそうなら選択をしなきゃだって思うけれど」
「神子が受け入れると決めたら、きっとこの村は受け入れるだろうね。それだけ神子はこの村にとって特別だから」
レゼット国はそのまま進む予定だと、ディライガルンさんは言う。
そういうあり方もきっとディライガルンさんがシュオンガルベさんのことを慕う理由の一つなんだろうなとも思った。
――少女と国主の手紙のやり取り 4
(神子は国主と手紙のやりとりをし、そして国主の弟とまた会話を交わす)




