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【連載版】双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。  作者: 池中織奈


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少女と、女史の会話 1

 アトスさんの家を後にして、私はランさんと共に私の家に向かった。



 私はアトスさんの家で話を聞いている間、ランさんの手をぎゅっと握ってしまっていた。ランさんはその手を握り返してくれた。そのことに、安心した。



「ラン、さん」



 そして家についてから、私は口を開いた。

 ランさんと向かい合って座っている。ランさんは、私の言葉を待っててくれている。

 私の頭の中はずっとこんがらがっている。どうしたらいいか分からなくなる。私のせいで今こういう状況になってしまっているのだろうかって、そう思って。



「私……神子かも、しれない」



 私はそう口にする。

 神子、かもしれない。それは薄々感じていることだった。違うかもしれないけど、そうかもしれない事実。それが神子であるかもしれないこと。



 私は、正直どちらでも構わないと思っていた。神子であろうが、神子でなかろうが私は私だと思っているから。今が、幸せだから、どちらでもいいと思っていた。

 でも、神子が現れたから今の生活が変わってきている。他でもない神子が生まれたから。神子、は私にとって特別な存在ではないけれど、周りにとってみれば特別な存在なのだ。



「……ええ。私は、かもしれないではなく、レルンダが神子だと思っておりますが」

「神子が……現れたから、大変」



 神子は、特別。神子が、現れたから……、神子を手に入れた国は強くなるのだと思う。そして、神子を手に入れられなかった国は、神子がいる国に対抗しようとしている。


 神子、という特別な存在が現れたから、色々なところに影響が出ている。




「……神子が、現れなきゃ、猫の……獣人、悲しい、なかった?」



 神子が現れることがなかったら。考えても仕方がない、そんなたらればが頭の中をよぎる。神子が居なければ、ニルシさんたちの村は襲われたりなんてしなかったのではないか。今でも……平穏で、優しい日々を送れていたのではないか。



「……神子が、現れなきゃ、大変、なかった?」



 神子が、現れたからこれからどうなるか分からない。神子を、手に入れた国がどう行動するか分からない。そういって、アトスさんたちは悩んでいた。


 そんな風に、神子がいなければ、悩むこともなかったのだろうか。神子が、居なかったら————、大好きな人たちは困った顔、しなかっただろうか。



「私……皆、会えて、嬉しい。皆、大好き」



 皆に会えて、嬉しかった。皆のことが、大好き。

 私の言葉をランさんはじっと聞いていてくれている。私は、続ける。



「でも……私、人間」



 私は人間。獣人の皆とは、種族が違う。そして、人間は獣人に酷いことをしている。酷いことしている人間の私に皆、優しい。



「……それに、神子、かも」



 神子、かもしれない。人間なだけじゃなくて。皆を、大好きな皆を……困らせている原因なのかもしれない。



「私、幸せ。でも……皆、私いるから……大変?」



 私は幸せ。グリフォンたちも、シーフォもいて、ガイアスとアトスさんや、他の皆もいて。

 ぽかぽかした気持ちを、大好きな人たちが周りにいると、幸せなんだって、それを教えてもらえた。今まで感じたことない、幸せな時間を、皆が与えてくれた。

 いっぱい、いっぱい与えてもらった。



 でも、私は、皆に大変な思いしか与えられてないのではないだろうか。私が居るから———、大変なことが起こっているのだろうか。

 笑っていてほしい。大好きだから。温かい気持ち、感じさせてもらったから。皆が笑っていれば、それで……いいのにって。



「レルンダ」



 下を向いた私にランさんは手を伸ばす。私の手をぎゅっと握ってくれる。

 顔をあげたら、ランさんは優しく笑っていた。



「神子が現れたから、起こっているというのは確かにその通りではあります」

「……うん」

「でも、今、獣人たちに降りかかっている不幸は、いつでも起こりうることでした」



 ランさんは、神子が現れたから起こっているというのはその通りだと前置きした上でそういった。




「人間の一部では獣人を同じ人として見ていないものがいますわ。その一部の中には、国の中心部にいる存在だっております。今回の事は、たまたまフェアリートロフ王国が神子を手に入れたから起こった出来事ですが、他のきっかけでも起こりえた事ですわ。フェアリートロフ王国とミッガ王国は元々仲が良くありません。ですから、神子が現れようが、現れまいが、いずれいつの日か、ミッガ王国は奴隷を求めたでしょう」



 神子が、現れようが、現れまいが、起こったこと。そう、ランさんは説明をしてくれる。たまたま、神子が現れたことがきっかけなだけだったのだと。



「だから、レルンダ」



 ランさんは私の目をまっすぐ見ている。



「自分が居るから、大変かもしれないなんて自分を責める必要はありませんわ。レルンダが例え本当に神子だったとしても、悪いのは国です。獣人を奴隷にしようとしている者達です。レルンダは、自分を責めなくていいのです」

「……でも」

「でも、じゃないです。レルンダのせいではありません。私が断言しますわ。だから——そんな不安そうな顔をしなくて、いいんですよ」



 ぎゅって、された。

 ランさんにぎゅってされて、ちょっと涙が零れた。



「ほんと……?」

「ええ。本当に貴方のせいではありません」

「……私、ここいて、大丈夫?」

「ええ。大丈夫ですわ。寧ろアトスさんたちはレルンダを可愛がってますから、皆さん、居てほしいって思っているはずですよ」

「……私、神子、だったと、しても?」

「ええ。きっと、そうですわ」



 ぎゅってされたまま、優しく背中をぽんぽんって、されて。ほっとした。



「あり、がと。そう、いってくれて」



 体を離して、そういったらランさんは笑ってくれていた。





 ――――少女と、女史の会話 1

 (多分、神子な少女の不安に、女史は答える)




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