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【連載版】双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。  作者: 池中織奈


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王女、辺境にて。

「ニーナエフ殿下」

「王女様、こちらは———」



 私、ニーナエフ・フェアリーは、今辺境の土地、アナナロにいる。ここは、フェアリートロフ王国と、ミッガ王国の丁度境にある街だ。フェアリートロフ王国とミッガ王国。その二つの国で隣接しているのは三つほどの街だけだ。それ以外は森が広がっている。開拓されていない広大な森が広がっていて、そこには多くの魔物が生息しているとされている。



 フェアリートロフ王国の端に位置するこの街を私が訪れたのは初めてである。フェアリートロフ王国とミッガ王国の仲は悪いとも良いともいえない。何かがきっかけでその均衡が崩れてしまう可能性は十分にある。



 ……フェアリートロフ王国が神子を手にしたということで、その均衡が崩れる恐れは十分ある。フェアリートロフ王国側から、神子が手中にあるということで横暴な態度をミッガ王国にしないとは限らない。

 戦争が起こる可能性が十分にある。いや、それどころかこの国自体が亡ぶ可能性だって十分にある。神子様の言葉のままに、大神殿は動いている。王家だって、神子様の力を恐れて、神子様が好き勝手するのを止められないだろう。



 正直戦争が起こった場合、私が今いるアナナロに関しては戦場になる可能性が高い。その時に備えなければならない、と私は考える。私はまだ十歳で、どれだけ動けるかもわからない。分からないけど、私は王族なのだ。王族の一員として王国の人々を守りたい。そしてフェアリートロフ王国が最悪の状況に陥った場合、神子様を守らなければならないと私は思う。

 神子様が原因で色々と起こっているのは確かだけれども、神子様は私より年下の、小さな少女なのだ。神子であるという事実を抜きにしたら、無力な子供でしかない。神子様があれだけ増長してしまっているのは、今まで暮らした村での生活と、神子様の言うことは何でも聞かなければならないといった風潮の大神殿のせいである。そして、神子様の力が恐ろしいからという理由で、神子様のことを諌めることも出来ない国のせいだ。



 誰かのせいにすれば、簡単なことかもしれない。もし、この国が駄目になった時、神子様のせいでこうなったと押し付けるものは少なからずいるかもしれない。民衆だって神子様が大神殿に入った。美しい神子様で歓迎しているようだが、神子様が原因で戦争が起こったら———どんなふうに手のひらを返すかもわからないのだから。



 ……そんな風に考えるからこそ、最悪の可能性を考えながら私は出来るかもわからないけど、何かあった時、神子様一人に責任がいかないように動こうと思う。

 私だってまだ十歳で、子供だけど、神子様はそれよりも三歳も年下で、私よりもずっと、幼いのだから。




「ごきげんよう」



 だから、そのためにもアナナロで味方を増やす必要がある。辺境の地まで私についてきてくれたのは、侍女が一人だけだ。切り捨てられた王女である、私の価値なんて王女という身分以外何もない。でも味方が一人いる事でどうしようもなく、私には心強い。



 誰か一人でも、信頼が出来て、本音が話せる味方がいるだけでとても安心する。

 ……神子様には、おそらくそういう人間が居ない。神子様の周りには神子様の言葉にただ頷くだけの者ばかりで、神子様自身のためを思って神子様を諌めてくれるような存在は居ない。それは、とても悲しいことだ。



「ニーナ様、このところお休みにもならずに連日動いておられますが、大丈夫なのですか?」

「ええ、大丈夫よ」



 辺境の地に来てから、私は出来ることは何でもやろうと動いている。アナナロの領主の館に滞在している私は、アナナロの地にとっては厄介な存在でしかないだろう。腫物を扱うような態度をされるのは当然なのだ。



 だからこそ、ここで受け入れられるための努力が必要なのだ。

 信頼を勝ち取らなければならない。私が、私自身の居場所を作るために。

 休んでいる暇は、ない。休む暇があるのならば、行動したいと思うから。



 だけど、

「大丈夫って……大丈夫ではないでしょう。まだ、ニーナ様は十歳なのですから、そんなに頑張らなくてもいいのですよ。心配ですから、休んでください」

 そんな風に侍女、ホンデッタに言われた。



 アナナロの領主の館から派遣された侍女も、何人もいるけれど、私は基本的にホンデッタを傍においている。正直まだ味方に出来るかどうかも、分からない。考えたくもない話だが、暗殺される可能性も無きにしも非ずなのだ。正直神子様の機嫌を損ねたからという理由で、神子様第一主義者たちにとって暗殺するだけの原因になるだろう。



 アナナロの領主は、そういう主義者ではなく、寧ろ私のことを守ろうとしてくれている。お父様がそのあたりを考えて、私をここに追いやった。……それは娘に対するお父様の少なからずの愛情故だろうと思うと少しだけ嬉しかった。まぁ、もしかしたらそういう愛情とか抜きに、死なれても面倒だからというのもあるのかもしれないけれど。



「……そう?」

「ええ。ニーナ様は今無理をしていらっしゃいます。私はこのままニーナ様が行動をし続けて、倒れてしまわないのか本当に心配なのです」



 心から私を心配している、という目を向けてくるホンデッタを見ていると、休まなければという気持ちになる。



「心配してくれてありがとう。その気持ちは本当に嬉しいわ」



 心配してくれる人がいる、それだけで私は温かい気持ちになる。この土地で、私が私の出来ることを頑張ろうと、そう思えるのは、ホンデッタがいるからだ。



「ホンデッタ、私、少し、休むわ。だから……時間になったら起こしてね」

「はい!」



 ホンデッタの元気な声を聞きながら、私は眠りの世界へと旅立った。






 ―――――王女、辺境にて。

 (第五王女様は、辺境の地にて行動を起こしている)




 

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