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無名探偵  作者: 真島 文吉
無名探偵3 ~探偵賛歌~
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赤目探偵(東城蕎麦太郎)と牛袋美耶子 一

 建物内に入ったとたん、田所の鼻を正体の知れない匂いがくすぐった。


 さわやかな果実のような、甘い花の蜜のような、今までいだことのない香り。


 どこから匂うのだろうと首を巡らせると、玄関と直接繋がったホールの先に、香水の棚があった。


 煉瓦の壁と板床に固定されている棚には、色鮮やかな香水のびんが所狭しと置かれている。その中の最も大きな青色の瓶のふたが、開けっ放しになっていた。


「香水というのは神聖なものでね、古代では邪悪なものをはらってくれると言われていたそうだ。だから東城蕎麦太郎は、嫌な客が来た時は最も匂いの強い香水をふんだんに使うのだ」


「失礼、我々は」


「君達のことだよ、嫌な客というのは」


 田所の言葉をさえぎる東城は、赤と白の毛が入り混じる絨毯を靴で踏み、ホールの中央に置かれた長椅子にどっかと腰を下ろした。


 この店には、靴脱ぎ場がない。洋式に土足で上がり込むらしい。


 田所とミワさんは、仕方なく腰を下ろした東城の前に立った。

 ホールには他に椅子はなく、壁際に件の香水の棚と、本棚、それとクラヴィコードという、十四世紀に発明されたピアノの祖先のような楽器があるだけだった。


 田所は話が見えず、頭をかきながら東城に問う。


「どうも誤解があるらしい。俺達は初対面のはずだが、そちらは何をそう、つんけんしてなさるんだね」


「このご時世に刀剣を持ち歩くような男に愛想を振りまくほど、この東城蕎麦太郎は寛容じゃない」


 ミワさんが、「えっ!」と声を上げて田所を見た。


 田所も驚がくに目を丸くして、目の前の青年を見下ろす。


 「東城蕎麦太郎には」と、彼はしつこく自分の名前を強調しながら赤い眼鏡を両手で持ち上げ、その位置を直す。


「凡人よりも優れている点がある。それは目の力だ。観察眼と鑑定眼に優れている。ご老人、君は新聞紙で包装された細長い物を持っているが、それはけっして杖や、そこらの店で買ったほうきの柄などではない。

 君はそれをたいそう力を込めて握っている。誰かに奪われないように、また注目されにくいようにと、なんでもないふうを装って、それでいて大事に握っているのだ」


「何故刀剣だと?」


「推測だ。棒状のもので、一度奪われると手に入りにくく、新聞紙で外見を偽装しなければならぬもの。それ自体は無数にあるが、仮に刀剣だと仮定すると、君の手にあるものの長さは君の背たけで振るうにちょうどいい日本刀の長さと合致する。

 しかもそうすると今君が握っているのは、さやの根元の部分だ。逆の手を刀の柄にかければすぐに抜刀できる」


 何だ、この男は。


 田所はミワさんとともにしばらく唖然と東城を眺めていたが、東城の口元が引き結ばれたままなのをみとめると、少し考えてから新聞紙の塊をくるりと返し、逆の手に持ち替えた。


 即座に抜刀できない持ち方に改めたのを見て、ようやく東城が「座りたまえ」と手の平を差し出す。


 だが椅子がないので、その手の平が示しているのは床だった。ミワさんがそれを無視して問いかける。


「つまりおたくは、このじいさまを見てすぐにそんだけのことを推理したわけかい? すげえな! まるで」


「ホームズは嫌いだ!」


 ぴしゃっと言い放つ相手に、ミワさんがうぐっ、と身を引く。


 東城は床を靴で鳴らし、両膝を手で叩きながら、イライラしたように顔を横に向ける。


 彼が見る方には幅の広い木製の階段があり、青い着物のすそが壁の向こうから覗いていた。


「肉袋君!」と東城が呼ぶと、件の丸髷の麗人がすとんと階段を降りて来る。改めて彼女に見惚みとれるミワさんに向かって、東城は口やかましげな口調で言った。


「昨今は少し洞察どうさつに優れたところを見せると、誰も彼もがシャーロック・ホームズを引き合いに出す。何だ? 世の頭脳明晰ずのうめいせきな男はみんなホームズの真似をして頭脳明晰になっているとでも言うのかね? 実に不愉快だ。しかもさらに不愉快なことに」


 肉袋と呼ばれた女が、東城の背後に立ってその肩に手を置いた。


 着物の趣味は悪いが、確かにぞっとするほど美しい女だ。


 きめの細かい肌に、切れ長の目、それをふちどるまつ毛は長く、ほどよく濃い。細い眉の線もはっきりしている。


 鼻は高いわけではないが、低いわけでもない。涼やかな顔立ちとでも言うのだろうか。


 彼女の細い指に首をなでられながら、東城は切っていた言葉の続きを吐き出した。


「――この東城蕎麦太郎は実際『探偵』なので、余計にホームズの二番煎にばんせんじのように言われるのだ。いまいましい!」


「えっ、じゃあおたく、ひょっとして三村探偵社の」


 言いかけたミワさんが、東城と田所に同時に睨まれて肩をすくめた。「三村……」とつぶやいたのは、麗人こと肉袋だ。


「先生、三村探偵社って例の、前にこの場所に建ってた茶屋で人妻に悪さしてたボケナスどもですよね?」


 絶世の美女の口から吐き出された『ボケナス』という言葉に、ミワさんがあんぐりと口を開けた。


 そもそも肉袋は吉原の女のくせに、既婚者用の丸髷を結い、廓言葉も使わない。普通の遊女ではないようだった。


 先生と呼ばれた東城は赤い眼鏡のつるを右手でつまみ、下方へわずかにずらした。


 田所達を見る彼の目は、刃のように鋭い三白眼さんぱくがんだ。眼鏡さえ外せば中々に男前で、もてそうだ。


「……連中に用があってここに来たのか? 我々は三村探偵社とは身内でもなんでもないんだが……私と肉袋君には、用がない?」


「その言葉が本当なら、そちらの言うとおりだ。俺達は三村探偵社の連中を探してここに来た。連中がどこに行ったか……というより、ここにあった茶屋がどうなったか、ご存知ないかな」


 東城が眼鏡をかけ直し、ふーっと息をついた。どうやら田所達を、武器を持って訪れた、自分達に悪意のある輩と考えていたらしい。


 東城は田所の質問に答える前に、田所達の素性と、三村探偵社の人間を捜している理由の説明を求めた。


 すでに日本刀のことを看破している相手に、下手な嘘をつくのはかえって危険と判断した田所は、まずは自分達の名を正直に伝える。

 さらに自分が個人で探偵業を営んでいることと、三村探偵社がしでかした一連の行為と、それに対する警察の対応などをおおまかに説明した。


 行方をくらました三村探偵社の足取りを追うのが自分の仕事であると話し、携帯している日本刀は実は刀身が竹でできた竹光たけみつで、護身用のこけおどしの品だと、そこだけはさすがにごまかして伝える。


 依頼主の素性も探偵としての分別ゆえに話せないとしたが、おそらく洞察に優れた東城には、ある程度は見抜かれているだろう。


 話を聞きながら肉袋を隣に座らせ、膝枕でごろ寝の体勢に入っていた東城が、ふんと鼻を鳴らして田所から、ミワさんに視線を移す。


「で、君は何だ。田所探偵の助手か」


「俺は出歯亀でばがめだよ。ひょっとしたら事件がどういう結末を迎えるか見届けられるかもしれないと」


「見上げた記者根性だな」


 記者だと、明かした覚えはない。


 そう引きつった顔に書いてあるミワさんを、東城が親切に指さして「ペンだこ。極限まですり減った靴。それから、手に文字が書いてある。備忘録びぼうろくを切らしたな」と指摘する。


 ミワさんはすでに袖を下ろしていたから、外に出ているのはほんの数文字だけだ。


 感心するより、むしろ呆れた顔になった田所が、「それで」と肉袋の尻をなでている名探偵氏に口を開いた。


「俺達への説明は? 三村探偵社のひいきにしていた茶屋は、どうなったんだね」


「私が潰した。ついこのあいだな。元々借金まみれだったのを、店ごと買い取ったんだ。

 さんざゴネていたが、三村探偵社とつるんで悪さをしていることを突き止めて、暴露するぞと脅して黙らせた。茶屋の主人は万佐まんざという男でね、三村探偵社の社長のいとこなんだ。

 人妻とのお楽しみに混ぜてもらったり、彼女らから巻き上げた口止め料の分け前をもらう代わりに、乱交の場所を提供していたわけだな」


「吉原は、男はともかく女の出入りに対しては監視が厳しいはずだ。そんなしょっちゅう人妻を呼んだり帰したりできるものなのか」


「万佐がいちいち迎えに行っていたのさ。吉原の中に店を構える主人が、人妻の身分を保証していたからこそできる犯行だ。すねに傷持つ女をおどして言うことを聞かせるにあたり、吉原の中ほど都合の良い場所はないからな。もっともそんなことをしていたからこそ、私に感づかれたわけだが」


「『外』と万佐の茶屋を泣きながら行き来する女が何人もいれば、何かあると素人にだって分かるからね。私が彼女達の一人に近づいて、三村探偵社が浮気妻をおどしてるってことを聞き出したわけよ」


 ばん、と自分の胸を叩く肉袋の言葉に、田所とミワさんは顔を見合わせる。


 ミワさんが少し遠慮がちに、目の前の二人に向かって口を開いた。


「そのう……お二人さんは、どういうご関係で?」


「この東城蕎麦太郎は、吉原生まれの探偵だ。遊女の母が堕胎に失敗して私を産んだ。吉原の裏方として働いているうちに自分の才能に気づき、吉原の外に出て開業し、大成した後に戻って来た。『赤目探偵』などと呼ぶ連中もいる」


「その眼鏡か。なんで色つきのぎやまんなんかはめてんの」


「目が悪いのだ。遠くが見えないということはないが、色を正しく識別できない。赤い眼鏡をかけることで、裸眼では見えないものが浮上してくる。香水の瓶を眺めている時に発見した」


 「長崎の職人の作だ」と眼鏡を指で押し上げる東城が、少し自慢げに鼻息をもらす。彼の額をなでながら、今度は肉袋が唇を開いた。


牛袋美耶子うしぶくろみやこ。東城先生は肉袋なんてひっどいあだなで呼ぶけどね。遊女だったけど、先生に身請みうけしてもらったから今はどこの店にも勤めてないの。もっとも帰る実家もないから、ここに住んで先生の助手をしてる」


「助手? 嫁さんだろ、その丸髷」


「これは他の男に言い寄られないようにって先生が結わせてるだけ。先生ったら助平のくせに女の子抱いたことないんだよ。身請けしたのに私と所帯持つ気さらさらないし。生息子きむすこ(童貞)だよ、生息子」


 けらけら笑いながらミワさんへ答える肉袋こと美耶子。ゴホン! と大きく咳払いをする東城に、ミワさんがいい弱みを見つけたと、にんまりといやらしく笑う。


「ほぉー、そりゃもったいない。そこな東城蕎麦太郎大先生が、生息子であらせられるとは。こんな絶世の美女を前に、手も足も出ないとは。まっこともったいない話ですなあ」


「そうでしょうそうでしょう。これほどの上玉にはめったにお目にかかれませんのに!」


 二人が調子に乗ってはやし立てるので、東城はすっかり気を悪くして美耶子の膝から頭を上げてしまった。


 田所が彼と同じようにゴホン! と咳払いをしてから、訊く。


「つまり、身請けした女性の行き場所を作るために、地価の低いお歯黒どぶ沿いの店を買い取って建て替えたわけか。それがたまたま三村探偵社のひいきの、茶屋だったと」


「たまたまじゃない。他のあばら屋には貧しい遊女達や、働けなくなった女達が住んでいるのだ。だが万佐の茶屋は借金まみれで商品の遊女も囲えなくなっていて、もっぱら三村探偵社の連れ込む人妻を流用して客を取っていた。

 それでも借金の返済で手一杯だったようだが……とにかく私がヤツの店を乗っ取れば、助かる人妻はいても困るのは悪党だけだ。狙いを定めるなら他になかった」


 ほう、と田所は目の前の探偵の言葉に息を吐いた。


 なにやら扱い難そうな男だと思っていたが、中々筋の通ったことを言う。


「それで、店名が『東城専門耳かき店』か。そちらのお嬢さんが、お前さんだけをもてなすための店と」


「茶屋を買い取ったのだから、何か看板を出せと吉原の顔役に言われてな。探偵社の看板を出そうかとも思ったんだが、足抜けした遊女の捜索依頼がくると気づいて思いとどまった。結局当たりさわりのない、耳かき店にしたわけだ」


 足抜けとは、遊女が店に黙って吉原を脱出することだ。


 昔から足抜けをして連れ戻された遊女は見せしめのために残酷な折檻せっかんに遭い、場合によっては殺されることもあったという。


 田所はここに来る途中で会った、全身に剃刀の傷がある女を思い出した。

 たしか、立てた剃刀の刃の上を歩かせると言う折檻も、吉原にはあったはずだ。


「しかし、優秀だな、東城探偵。遊女を身請けし、吉原に店を構えるほどの金を身一つで稼いでくるというのは、並の探偵にはできんことだ」


「そう思うのは君が並の探偵だからだ」


 その言葉にミワさんが顔色を変えて何か言おうとしたが、東城の次の台詞に、ぐっ、と口をつぐんだ。


「探偵の根は悪の根だ。悪党ほど金を稼げる。東城蕎麦太郎は産まれた時からやっかい者だった。遊女にとって、子をはらむことは恥とされていたからだ。

 母は私をまるでできもの・・・・のように憎み、店の連中も私のことを母の人生を破滅させた鬼子のように言った。

 東城蕎麦太郎には居場所と誇りが必要だった。故郷吉原に居を構え、一国一城の主として胸を張るためなら、私は稼げるだけの金を稼いだ。相手は選んできたつもりだが、しかし依頼主の隙を見つければ、骨までしゃぶるつもりで食らいついた。

 そのあくどさは、三村探偵社と同じ性質のものだ。だからやつらと同じように、女と、建物を手にしている」


 押し黙る男達の前で、美耶子が自分のうなじをなでながら、目をそらした。


 ほぅ、と息をつく彼女の音を聞きながら、田所が一度唇をなめて、うなずく。


「まあ、よいわ。いずれにせよ、俺達が捜している三村探偵社の連中はここにはいないわけだな」


「うむ。茶屋の主だった万佐も私に土地建物を取られた後、どこぞへ消えている。

 私が出した金は全て借金の返済に消え、ヤツの懐には一銭も入らなかったはずだからな。ヤツにしてみれば、私は自分の店を奪い、裸一貫はだかいっかんで追い出した憎い仇だ。

 正直君らを最初に見た時、万佐か三村探偵社が差し向けた刺客だと思った」


「なるほどな、それでお前さんのあの時の態度にも納得がいく。……しかし、まいった。これで手がかりが途絶えてしまったか」


「悪いなあじいさま、無駄足踏ませちまったみたいでよ」


 頭をかくミワさんに、田所は「いやいや」と手を振る。


 そもそもミワさんは、吉原に三村探偵社の連中がいると言ったわけではない。その可能性があると、教えてくれたにすぎないのだ。


 そんな二人を見ていた美耶子が、ふと東城に顔を向けて言った。


「先生、私が前に会った、三村探偵社に連れ込まれていた人妻なら、連中の行き先を知ってるかもしれませんよ。だって連れ込む茶屋がなくなったからって、三村探偵社が金づるの人妻を解放するわけがないじゃないですか。

 絶対に接触を続けてるはずです。……私、彼女から話を聞いて来ましょうか」


 美耶子の言葉に、三人の男達全員が目を剥く。即座に東城が美耶子の肩をつかみ、言った。


「その人妻と会えるのか? 彼女、君に素性なんか話さなかっただろう?」


「いえ、その人、じつは万佐の目を盗んでお歯黒どぶに身を投げようとしてたんですよ。止めてあげたから大泣きして洗いざらい話したんです。そうでもなきゃ、浮気の弱みを握られてる女が他人に秘密なんかもらしませんよ。

 銀座で呉服店をやってるって言ってたから、捜せば見つかるはずです」


「それは、本当かい?」


 田所の声に、美耶子がしっかりとうなずく。


 あごに指を当てて考え込む東城に、美耶子はさらに声をつなげた。


「先生、話を聞いてみれば、三村探偵社は私達が思っていた以上の、とんでもない悪党じゃないですか。先生はやつらの吉原での悪事の拠点を潰したけれど、きっとまた別の土地で同じような被害者が出ますよ」


「東城蕎麦太郎は一個の探偵だ。義賊ではない」


「でもこの人達を、刺客だと思ったんでしょう? ずっとあいつらの報復を警戒してるのって、なんだか莫迦らしくないですか。こっちは何も悪いことしてないのにさ」


「……」


「この人達と、私達の利害って一致してますよね。私、協力できると思うんです」


 美耶子の言葉に、田所はふと嫌な予感をおぼえた。何か、勘違いされているような気がする。


 果たしてその予感は的中し、美耶子の白い手が田所とミワさんの手を、ぎゅっとつかんできた。


「一緒に三村探偵社をやっつけましょう! ゲス野郎に報いを!」


「いや、待て待て! 俺は連中の足取りを追っているだけで……」


「確かに、連中にずっとかかずらっているというのも、なにやら腹が立つな」


 東城の声に、田所とミワさんが同時に顔をひきつらせる。


 赤い眼鏡の探偵は、腕を組んで厳しい面持ちで何度もうなずいていた。


「警察がやつらを糾弾する動きはない。人妻達は浮気の弱みがあるから反撃に出られないし、殺人事件の遺族達の声も司法には届かない。しかし三村探偵社を野放しにするというのは、私と肉袋君にとって、不安材料以外の何ものでもない」


「あの、まだ直接何かされたわけじゃないんだろ? おたくら」


 ミワさんの言葉を無視して、東城が立ち上がる。眼鏡の位置を直しながら、田所を見下ろして言った。


「蛇の道は蛇。探偵には探偵だ。いいだろう、私達の方でも三村探偵社を追ってみよう。ただし君らを信用するには材料が足りない。動き出す前にまずそちらの素性の裏づけを取ることから入らせて頂こう」


「や、ありがたいが、同業者に協力を頼む金が……」


「金の代わりにそちらがつかんでいる情報をもらう。君の依頼主とも会いたい、承諾を取りつけてくれ。東城蕎麦太郎は君より若くて優秀だ。失望はさせないし、させるな」


 相手の言葉の意味を考えて目を細める田所に、美耶子がにっこりとほほえんだ。


 その笑顔をぼうっと眺めるミワさんが「じゃ、とりあえず、これうちの会社の名刺」と懐を探ったところで、田所は額を手でおさえて、絶望した。

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