応援してるよ
それから、5時間後。
博識なユージの、展示品や美術品の絵画などの解説を受けながら、ゆっくりと過ごした。
どうやら、彼は、幼い頃から、博物館に通い、17歳という若さで、博物館の資格にも司書の資格にも、合格しているらしい。
「実は、僕は、いずれ、この博物館の館長として働いてみたいんです。まずは、博物館の職員か図書館の司書からでも良いのですけれど。」
「そうなのか! 分かりやすく、素晴らしい解説だったよ、応援してるよ、ユージくん。」
「ディオン様、ありがとうございます!
今は、館長のランス大叔父様に弟子入りして、勉学に励んでいます。あ、ランス大叔父様は、お祖父様の弟君にあたるお方です。」
「そうか!良い先生に恵まれて、良かったな!」
「はい、本当に、有り難いことです。」
「あら? ユージくん?」
「えっ!? リタ姉上!?」
ユージに声を掛けたのは、姉のサラサ夫人にもユージにも、面影が似ている黒髪女性だった。
唯一、違うのは、彼女は、宝石のような青紫の瞳をしているということだ。
「えっと………
リタ姉上は、どうして、こちらの博物館に?」
「私は、そちらの図書館に用事があって来たの。
あ!ユージくんは、お客様のご案内中かしら?声を掛けてしまって、ごめんなさいね。」
彼女は、青年達に気付くと、しょんぼりとした表情になった。なんて、分かりやすい。
リタ姉上と呼ばれていることから、彼女は貴族令嬢であるはずだ。
が、裏表は無さそうな純粋な感じがしている。
「リタ姉上、こちらは、エクトール義兄上の親友ディオン様です。義兄上の代わりにご案内を。」
「あら! まあ! そうなのですね!」
彼女は、透明感のある薄紫の瞳を、キラキラとさせながら、ふわりと微笑んだ。
なんて優しげな、穏やかな女性なんだろうか。
「初めまして、お嬢さん。
貴女は、ユージくんのお姉様かな?」
「はい、お初にお目にかかります。わたくしは、リーンダート伯爵家の次女、リタと申します。サラサ姉様の妹で、ユージの姉にあたります。宜しくお願いいたしますね。」
「ええ。 リタ嬢、宜しくお願い致します。」
なぜか、彼女のことが少し気になりながらも、あまり話せなかった。
彼女は、ディオンが、お忍びだと察したのか、挨拶だけして去って行ってしまったのだから。
もう少し、彼女と話をしてみたかったな。




