さっそくなんだけど
「リタ嬢」
「はい、ディオン様」
「ちょっと、渡したいものがあるんだ。」
「渡したいものですか? なんでしょう?」
きょとんとしたリタ嬢は、可愛いらしい。
果たして、リタ嬢は、この染め物のハンカチを気にいるだろうか?
想い人である異性に渡すには、シンプルすぎるものではあるが、やはり、普段使い出来る物の方が良いのではないかと思った。
何より、今、リタ嬢は、実家から離れて王都に来てくれている。
もし気に入ったら、ハンカチなら、軽いから、カバンに入れて実家に持ち帰りやすいだろう。
「まずは、温室に行こうか。」
「まあ!こちらは、温室があるのですか?」
「ああ、この屋敷の温室は、花壇が綺麗だから、リタ嬢も気にいると思う。」
「ぜひ、行きましょう!」
色鮮やかな花壇が並ぶ。
今の季節、一番目立つ花は、ラナンキュラスとチューリップだろう。
特に、真っ黄色や真っ赤なラナンキュラスは、華やかで、美しい。
ラナンキュラスや、チューリップを取り囲んで咲いているビオラも、可愛いらしい。
「まあ!なんて綺麗なんでしょう!
とても素敵な場所ですね!」
「温室の花達を手入れしているのは、ジーン夫人だから、詳しくはジーン夫人に聞くと良い。」
「ええ、ジーン夫人に聞いてみますね。」
「さっそくなんだけど
これを、リタ嬢に渡したくて」
「まあ! これって、アイディー工房の?」
「アイディー工房長、メリィーゼ夫人の手作りの染め物なんだ。リタ嬢に似合うと思って。」
メリィーゼ夫人は、伯爵家の三女。
トルデ商会長のヤンさんに嫁入り、アイディー工房を設立し、工房長として、染め物で、小物やら、雑貨やらを製作している。
それなりに有名なブランドものなのだ。
「ディオン様、とても素敵なハンカチを、有難う存じます! 大切に使いますね!」
「こちらこそ、もらってくれて、ありがとう。
リタ嬢に、とても良く似合う。」
「ふふふ。ありがとう存じます。」
「もう一つだけ
リタ嬢に話したいことがあるんだ」
「はい、なんでしょうか、ディオン様?」
「私は、リタ嬢を恋愛的な意味で好いている。
もし良ければ、婚約者になって欲しい。」
「わ、わたくしでも宜しいのでしょうか?」
「貴女じゃなきゃ、だめなんだ。」
「ディオン様………」




