もの凄く、美形さん!
「このお店は?」
「ジーン夫人にひっそりと聞きました。
こちらのお店がオススメなのだそうです。」
ここは、小物や雑貨、アクセサリー等、幅広い種類が豊富な、女性向けのお店らしい。
高級商品というわけでもないから、女性相手にプレゼントしやすいものばかりだ。
確かに、リタ嬢は、高級なものをプレゼントであげたら、戸惑って萎縮してしまいそうだからちょうど良いのかもしれない。
「何のプレゼントが良いと思う?」
「それは、ディオン様が考えた方が良いかと。」
「ああ、そうだよな。考えてみるよ。」
「私は、この店のすぐ側にあります
男性向けの雑貨屋に行って来ます。」
「分かった。ありがとう。」
「うーん………
どれにしようか………」
ディオンは、女性向けにプレゼントするなんて家族以外にしたことがあまり無い。
学生時代に稀にあるが、こだわって買ったわけではないから、どうしたものか………
リタ嬢に、似合うもの………
「あ……… これ………
この染め物のハンカチ、良い気がする。」
王都の職人達の手作りで、普段使い出来そうなシンプルな、青くて、美しい染め物。
中くらいのサイズ、小さいサイズ、両方とも、あるみたいだ。
これならば、渡しやすいのではないか?
「よし、プレゼントは、これにしよう」
「ねえねえ」
「何ですか………?」
「もの凄く、美形さん!
あ、あの、わたし、エレウィ男爵家に養子入りしたばかりの、ミユイって言います!」
お店から出たとたん、突然、男爵令嬢になったばかりらしい少女が声をかけて来た。
制服姿なので、彼女は、まだ学生なのだろう。
その制服からして、高等部だ。
つまり、16歳から18歳くらいだろうか?
「あの、美形さん!
一緒に、ご飯を食べませんかー!?」
「あー、すまないが………
今から、用事があるんだ。」
「そ、そうなのですか………?
残念です………」
少女は、しょんぼりして去って行った。
ディオン自身、さすがに、学生相手に恋愛する気にはなれない。
ガチガチの政略結婚なら受けるかもしれない。
しかし、さすがに、政略結婚の婚約者が、男爵令嬢が相手になることは無いだろう。
エレウィ男爵令嬢だったか?
彼女に良い人が見つかると良いな。
「いかがなさいました?」
「ん? ああ、いや、なんでもない。
エレウィ男爵令嬢に声を掛けられただけだ。」
「ディオン様は、モテますね。」
「………そうか?」




