想いを伝えるのは自由だ
オライノース公爵家に滞在して10日目。
ユージくんは、エディに着いていって、様々な貴族の子息と知り合っているらしい。
リタ嬢は、ジーン夫人に連れられて、貴婦人や貴族令嬢の集まりに参加しているらしい。
ふたりとも、世間知らずな箱入り息子と箱入り娘なので、新鮮な毎日を楽しんでいそうだ。
おかげで、私は、基本、レオンと共にゆっくり休養しているように思える。
ただ、さすがに、そろそろ、リタ嬢と出掛けてみたい気がするのだ。
しかし、どの場所が良いか、あまり目立ちたくない私は、非常に、悩んでいた。
そもそものこと、ディオンは、想い人リタ嬢と付き合っている訳ではないから、警戒心の強い彼女を誘って良いか、どうか………
「ディオン様………」
「………なんだ、レオン?」
「そんなに悩むのでしたら…
まずは、プレゼントを買ってみては?」
「プレゼント………?」
「ええ。いっそのこと、貴方様の想いだけでも、お伝えしてみては?お優しい方ですから真剣に考えてくださいますよ。」
「プレゼント………」
確かに………
それも良いかもしれない。
想いを伝えるのは、自由だ。
この先に、振られてしまって、気まずくなってしまっても、王都と辺境伯領は、距離がある。
彼女に負担のならない言葉選びが必要だが。
言葉に出さなければ、伝わらない。
進展も、後退もしない。
「レオン、ありがとう。」
「いえいえ、良いんですよ。
私は、ディオン様の幸福も新しく友人になったリタ嬢の幸福もお祈りします。」
「ちょっと、頑張ってみるよ。
明日は、リタ嬢に何か買いに行こう。」
「明日ですね。
それでは、私は、可愛い甥っ子と友人になってくれたユージにプレゼントを。」
「ああ、それが良い。ありがとう。」
「ふふふ。応援してますよ。」




