これは、現実だ
「アンヘリノ兄上
ただいま帰りました。」
「おかえり、レオン。
ディオンは、久しぶりだね。」
「はい、お久しぶりです、アンヘリノ殿」
レオンによく似た、肩まで伸ばした黒髪の青年
オライノース公爵家の嫡男、アンヘリノ。
無表情かつ、のんびりとした雰囲気なのだが、実際は、弟妹たちを猫可愛がりしている。
特に、末弟レオンは、14歳離れているから、25歳になった今でも可愛いそうだ。
ちなみに、レオンは長兄のその姿が恥ずかしいらしいのだが、もはや、すでに諦めている。
「あれ? ところで、アンヘリノ兄上
ジーン義姉上とエディは、何処にいます?」
「今朝から、孤児院に出掛けていてね。
最近、新しい子が入って来たみたいで、様子を見に行っているんだ。」
「ああ、それで見かけないんですね。」
アンヘリノの妻ジーン夫人は、隣国から嫁入りしてきた金髪紫目の美しい公爵令嬢。
ふたりの一人息子、エディは、ふわふわ黒髪に紫目の、これまた美しい美少年で、母と共に、孤児院の手伝いをしているのだ。
見るからに高貴な母子のため、孤児院に住んでいる子どもたちからは遠巻きにされているが、慣れて来た子は懐いていると、聞いている。
「そちらのお客人は?」
「リーンダート伯爵が嫡男ユージと申します。
アンヘリノ様、宜しくお願い致します。」
「リーンダート伯爵が次女リタでございます。
アンヘリノ様、宜しくお願い致します。」
「ああ、サラサ夫人の妹弟なんだね?宜しく。
今日は、ゆっくり休むと良いよ。」
「リタ嬢、ユージくん、私が案内するよ。」
「はい、ありがとう存じます。」
「ありがとう存じます。」
「それにしても珍しい。」
「………何がですか、兄上?」
ディオンが、リタ嬢とユージくんを、しばらく泊まる部屋に案内をしている間に、レオンは、久しぶりに、兄とお茶を嗜んだ。
たまに、兄のことを構わないと拗ねるからだ。
この美形の見た目からして、かなりギャップがあるため、兄がブラコンであることは、あまり知られていないようだが。
「そりゃ、レオンがディオン以外の友達を連れてくるなんて、滅多に無いじゃないか!」
「あー、二人は、ディオン様の友人達ですよ。
ちなみに、リタ嬢は、ディオン様の想い人ですから、見守って下さいね。」
「ディオンが?ますます珍しいじゃないか!」
「やっぱり、兄上から見ても珍しいですよね?
てっきり、夢なのかと………」
「これは、現実だ。しかし、気持ちは分かる。
まあ、見守っていくしかあるまい。」
「はい、宜しくお願い致します。」




