レオンの調べで
リーンダート伯爵夫妻は、
戸惑いながら、部屋を去って行った。
伯爵夫妻がいては、ユージくんも、リタ嬢も、緊張感があって、話しにくいだろう。
伯爵夫妻からしたら、子ども世代で、ゆっくり話すのだろう、という雰囲気に持っていった。
「レオン、扉の前には、誰もいないな?」
「はい、いないようです。」
「僕達の両親が申し訳ないです…」
「いやいや、ユージくん、構わないさ。」
ユージくんが目に見えて、落ち込んでいる。
彼にとっては、実の両親が、ディオンの前で、やらかしたのが、恥ずかしいのだろう。
ディオンは、まさか、目の前で、あからさまにリタ嬢を下に見ているような態度を取るとは…
と呆れているだけだ。
「リタ嬢の事情は、すでに知っている。」
「ディオン様………知ってらしたのですか?」
「ああ、まあ、レオンの調べで。」
「先程のは、伯爵夫妻には、私の事情を、あえて言ったんだ。公爵家でも合わない婚約者を選ぶ時はあるのだと。恥ずかしいことではない。」
「はい、ありがとう存じます………!」
リタ嬢は、ちょっとだけ目をうるうるさせて、ディオンに感謝を述べた。
彼女は、婚約破棄されて以来、両親から微妙な扱いを受けていた。
彼女の両親は、世間の目を気にするあまりに、新しい婚約者を探そうとはしなかった程だ。
「あのように、両親は、リタ姉上に対してだけ、当たりが強くてですね。サラサ姉上に対しては普通なんですけど。」
「お父様も、お母様も、サラサ姉様が次期辺境伯夫人になったので、誇りなんです。」
「なるほど、だから、あの態度なのか。」
どうしても、貴族では、サラサ夫人とリタ嬢のように、姉妹格差がある貴族令嬢は存在する。
伯爵夫妻は、サラサ夫人を次期辺境伯夫人に、リタ嬢を隣の領地の次期伯爵夫人にしたかったのだが、残念ながら、リタ嬢が婚約破棄に
しかも、隣の次期領主は村長の娘を妻に迎えてしまった、と。
「ご迷惑をお掛けしました。」
「リタ嬢は、謝らなくて良い。悪いのは、
一方的に婚約破棄したビバールだ。」
「ディオン様………」
「隣の領主となったビバールが何か言って来ても私の名前を出すと良い。あのビバールは、私のことも、エルモ兄上のことも知っているから。エクトールにも、隣の領主家と何かあれば、私の名を出すと良いと伝えておく。」
「ディオン様、ありがとう存じます!」
「僕からも、ありがとう存じます!」




