恐れ多いのですが
「ディオン様に
お聞きしたいことが………」
「答えれることであれば答えるよ」
「どうして、エルナール辺境伯領に…?」
「サラサ夫人の夫、エクトールと親友なんだ。
旅行がてら、エクトールに会いに来たんだが、肝心のエクトールは、忙しくてな。代わりに、ユージくんが街を案内してくれたんだ。」
「ああ、なるほど。
そのご縁で、我が家に。」
「その縁だな。こちらとしては、
三姉弟に出会えて嬉しく思うよ。」
「ありがとう存じます。」
本当は、リタ嬢が気になるからなのだが……
それは言わない方が良さそうだ。
リタ嬢は、両親の前だと、非常におとなしく、静かにしていることが多いようで、今も静かに会話を聞いているだけだから。
「ディオン様!
ぜひ、こちらをご覧下さい。」
「うん? ユージくん、これは?」
色鮮やかなデザインのものや、シンプルな物、沢山のネックレスに、ブレスレット。
明らかに、女性向けに作られたものなのだが、上品で、華やかなアクセサリーたちだ。
「何!? ユージ!?
それは、リタが作ったものじゃないか!
なぜ、このタイミングで!」
「ユージさんったら!
いきなりは、ディオン様に失礼ですよ!」
リーンダート伯爵夫妻は、そのアクセサリーを見るやいなや、ユージくんを責め始めた。
リタ嬢は、慌てて、真っ青になって、おろおろおろおろしている。
「父上、母上
別に、構わないでしょう?
リタ姉上のアクセサリーを見せるくらい。」
「ユージくん、リタ嬢、このアクセサリー達は、いったい? とても綺麗じゃないか。」
「ディオン様、実は、これ、リタ姉上の手作りのネックレスやブレスレットなどのアクセサリーなんですよ!とても綺麗でしょう?」
「これは、リタ嬢が作られたものなのか!
とても美しいものだな、リタ嬢。」
「い、いえ、恐れ多いのですが…
もし宜しければ、ご覧下さいませ!」
「ああ、じっくり見るよ。ありがとう。」
ユージくんいわく、リーンダート伯爵夫妻は、厄介なことに、リタ嬢が婚約破棄されたことを責めているのだそうだ。
リタ嬢のことが心配だからなのだが、それが、空回りしているのだとか。
まあ、よくありがちな親子関係だが、ずっと、実家に暮らすリタ嬢は、辛いだろう。
「これらは、私の母上が好みそうだな。
もし良ければ、ぜひ、買っても良いかな?」
「か、買って頂けるのですか!?」
「もしくは、これらが、貴女が大切なものなら、特注で頼んでも良いだろうか?」
「は、はい……!
それで、宜しいのでしたら…!」
「ああ、ありがとう。
後日、値段は相談しよう。」
「あ、ありがとう存じます…!」




