叱られるだろうか?
「ユージくん」
「はい、なんでしょう?」
旅館にて、寝る前に、ユージに声を掛けた。
エクトールもレオンも、普段から寝るのが早いため、寝静まっている中、ユージくんだけは、ひとり静かに、窓際のソファで読書しながら、ゆったりと過ごしていた。
彼の持つ書籍の表紙をよくよく見ると、分厚い歴史書のようだ。そういえば、博物館の館長になりたいと言っていた。
ユージくんは、出掛け先でも、勉強するのか、本当に、素直で熱心な子だな。彼の、その夢が叶う日が来るといい。そう思った。
「あの約束通り、近いうちに、リーンダート伯爵家にお邪魔しても良いだろうか?」
「ええ、もちろん。ぜひ、いらしてください。
リタ姉上にも両親にも伝えておきますから」
「ああ ユージくん
本当に、ありがとう。」
「いえいえ、こちらこそ。
来られるのが楽しみです。」
「ようこそ
いらっしゃいませ
リーンダート伯爵家へ」
「ユージくん、おはよう。リーンダート伯爵家に招待してくれて、ありがとう。」
「おはようございます。わざわざ来て下さって、有難う存じます。両親も姉もお待ちしてます。茶会の間にご案内いたしますね。」
普段通りの格好で、騎士服を着た護衛のレオンと共に、リーンダート伯爵家へとやって来た。
その二人の姿に、ユージくんは、目をキラキラとさせて、案内を始めた。
思った以上に、ユージくんに懐かれているな。
ディオンやレオンとしては、年の差があるとはいえ、同性の友人が出来るのは嬉しい。
「父上、母上、リタ姉上
ディオン様とレオンさんが来られました。」
「おお、御二方、ようこそいらしてくれた。
公爵家の皆様方の名は、ご存知でしたからな。
気軽に、お寛ぎください。」
「そうか、ありがとう。
今日は、宜しく頼むよ。」
ふむ、どうやら、リーンダート伯爵は、噂で、ディオンの名を知っていたらしい。
確かに、公爵家や王族の名を知らないようだと失礼にあたるから、仕方がない。お忍び旅行の予定が、意外と名を知られてしまっている。
エルモ兄上には、叱られるだろうか?
「私は、リーンダート伯爵ジェラール・キース・フィン・セイ・ファーレイオ・リーンダートと申します。宜しくお願い致します。」
「ジェラールの妻、エルバ・フリーダ・フィン・レン・ディーセレーム・リーンダートです。
宜しくお願い致します。」
「私は、ディオン。
こっちは、護衛のレオン。
サラサ夫人、リタ嬢、ユージくん達のご両親に会えたのは嬉しいよ。宜しく。」
「子ども達が、みんな、お世話に………
ありがとう存じます………!」
「私からも、ありがとう存じます!」




