お心次第ですよ?
「ところで、ディオン」
「うん?なんだ、ルーカス?」
「リタ嬢のことは、どう思っているんだ?」
「私は、彼女のこと、気になっているよ。」
「そうか、やっぱりか。」
注文した料理たちが次々と運ばれてくる中で、ルーカスことエクトールが、こちらを真剣に、率直に、真面目に、きっぱりと聞いて来た。
ディオンがエクトールを親友として気に入っているのは、こういう所だ。
貴族流の遠回しな質問ではなく、どんな時も、きっぱり、裏表なく、聞いてくる素直さだ。
「リタ嬢は、いろいろとあったみたいだな。
警戒心が強い女性相手に出会ったことが無い。
どうしたものか、と思ってね。」
「あー、そうだな…あの件か…」
「レオンが調べてくれてね。
彼は、そういう調べ物が得意なんだ。」
ちなみに、レオンだけ、護衛して、仕えている身だから…と別の場所で食べている。
今日くらいは、普通に、私達と一緒に食べればいいのにと思うのだがな。仕方がない。
彼は、ディオンと同じものを注文したらしい。
「リタ嬢が泣き崩れているのを見たよ。
実は、私も、リュージも、婚約話がうまくいっていると思っていたんだが、違った。」
「あの男と、仲睦まじかったと思ったのに、あの男が、浮気したんですよ。姉上は、それを偶然たまたま見かけたそうです。」
リュージことユージは、普段の穏やかな姿から一変させて、冷ややかになった。彼の雰囲気が怒りに満ちて、酷く、冷たい。
ユージは、どうやら、怒ると怖い気質らしい。
まあ、そりゃそうだろう、大事な姉上を大切にしない男に対し、怒りが湧くのは仕方がない。
「ちなみに、その男は、ご両親から甘やかされて育ったために、その娘と結婚、子も誕生。」
「なんというか…
その男は、隣の次期領主なんだろう?
そんな男が領主で、大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないですよ?
密かに、姉上を慕う方々は、自領の次期領主の妻に、姉上がなってくれると思っていたから、カンカンに怒ってるようですし。」
「な、なるほど……
大丈夫じゃなさそうだな…」
「そうか……
それは、まだ、2回しか会っていない私だと、リタ嬢に警戒心されるだろうな…」
「ディオン様は、本当に、リタ姉上のことが気になるんですね…?」
「ああ、そうだよ。」
「弟の僕からしたら、ディオン様ならば、姉上を任せれます。それくらい、信用していますが、リタ姉上のお心次第ですよ?」
「それは、もちろん。
ゆっくり、警戒心が取れると良い。
けれど、どうしたものか。しょっちゅう、彼女と会う訳にも行かないだろう?」
「でしたら、我が家に遊びに来ませんか?」
「それは、いいのか………?」
「ええ、構いませんよ。」




