祝福あれ
「その令嬢について
他に、何か情報はあるのか?」
「実は、あまり情報がありません。
ディオン様からは、ある意味、無害だけれど、夢見がちな少女だとは伺っていましたが。」
「うーん………
夢見がちな少女なのか。
無害には思えないんだけどねぇ。」
「まあ、はい、そうですね。」
キャンベル伯爵令嬢が夢見がちなくらいなら、確かに、無害なのかもしれない。
だが、一般人も入れる共有のエリアとはいえ、王城という職場に、ガストンを目当てでやってくるので、よく分からない存在なのだ。
せめて、出会いの場でもある夜会等で声を掛けられるなら、まだ、分かるのだが…
うーん……やはり、キャンベル伯爵家に忠告をする必要がありそうだ。
「ディオン様は、この方の相手を3年間も?」
「あー、凄いよね。そのディオンは、休養のために、エルナール辺境伯領に行っているよ。」
「ああ、そうなのですか…
休養のために… 」
ガストンは、納得した。
なんだか、微妙に、疲れるからだ。
自分を婚約者にして欲しいのかもしれないが、さすがに、ディオン様の元婚約者を妻にしたいとは思えない。
なにより、キャンベル伯爵令嬢には、普通に、好いた人と結婚して、幸せになった方が良いのではないか、そう思っているからだ。
「侯爵家から言うのは目立つだろう?
キャンベル伯爵家には私から忠告しとくよ。」
「承知いたしました!
ありがとう存じます!」
「ハシントお兄様
ありがとう存じます。」
ガリアルーズ侯爵家からキャンベル伯爵家への忠告だと、両家とも、目立ちすぎてしまう。
しかし、王家から、貴族家への忠告は、密かに行われるものだ。
キャンベル伯爵令嬢も目立たずに済むだろう。
今なら、厄介なことにならずに済むからだ。
「ハシントお兄様、もし宜しければ、婚約発表を早めても良いかしら?」
「そうだな。その方が良いかもしれんな。
父上に話しておくよ。」
「ええ。宜しくお願い致します。」
急きょ、私達の婚約発表が早まった。
スーウィル王国、第三王女、アンドレア姫様とガリアルーズ侯爵家の嫡男、ガストンの。
予想外の組み合わせに、この発表は、国民達を驚きに染めたが、仲睦まじい二人を見て、納得したようで、次第に、落ち着いて行った。
キャンベル伯爵令嬢ステイシーは、その発表に驚愕のあまり、固まってしまっていたが。
さすがに、相手が王女なので、何も言えずに、婚約発表の会場から姿を消していった。
その2年後。
エルモ様の調べによると
その後、キャンベル伯爵令嬢はというと
ドナル男爵の嫡男フェデリコ殿とお見合いし、恋に落ち、婚約し、のんびりと男爵領地にて、暮らしているという。
ガストンは、その知らせを聞いて、キャンベル伯爵令嬢が幸せそうでなによりだと思った。
「キャンベル伯爵令嬢にも、祝福あれ。」
「ええ。そうね。 本当に、良かったわ。」
最愛の妻となったアンドレアと共に、密かに、キャンベル伯爵令嬢に、祝福を送ったとさ。




