ご相談がありますの
「ハシントお兄様
いま、宜しいかしら?」
「ハシント王太子殿下
失礼いたします!」
「アンドレア? ガストン?
ふたりとも、何か、あったのか?」
ガストンは、アンドレア姫と共に、王城の奥に住まうアンドレア姫の実兄に会いに来た。
その長兄こそ、ハシント・イジドア・フォン・エレジオン・スーウィル王太子殿下だ。
「ええ。お兄様にご相談がありますの。」
「急ですが、ハシント王太子殿下に折り入って、ご相談がありまして…」
「ふうむ、相談ね、分かった。
君達からの、その相談とやらを聞こう。」
「ハシントお兄様、ありがとう存じます!」
「ハシント王太子殿下、有難う存じます!」
「キャンベル伯爵令嬢をご存知かしら?」
「グレアム殿とドナ夫人の娘達のことかな。
知ってはいるけれど、話したことはないよ。
長女か、次女か、どっちのことかな?」
「長女のステイシーの方ですわ。」
「ふーん………
ステイシー嬢の方ねぇ?
また、何か、やらかしたの?」
キャンベル伯爵家の長女、ステイシー嬢。
どうやら、彼女のやらかし、婚約破棄騒動は、王太子殿下の耳にも届いていたようだ。
それは、そうだろう、ハシント王太子殿下は、親族の末裔、エルモ様、ディオン様のご兄弟を気に入っておられるのだから。
「うーん………
やらかしてはいないのだけれど…」
「うん?やらかしてはいないのか?」
「でも、やらかす寸前だと思うわ。」
「ふうむ? 何が、あったんだ?」
「ディオンとの婚約破棄以降、最近、ガストンの周りに、よく現れるようになったのよ。」
「なぜ、ガストンに?
ステイシー嬢の元婚約者の兄の部下だぞ?
まさか、気にしていないのか?」
「さあ?気にしていないのかしら?
何を考えているか、全く分かりませんわ。」
「私も、正直、分かりません…。
先日は、いきなり、声を掛けられました。
『お買い物に行きませんこと?わたくし、欲しいものがあるのです!』という感じに。」
「なんだそれ………
あまり話したことないのにか?」
「話はあまりした事がないですね。」
ガストンも、正直に言って、分からない。
アンドレア姫様も、うーん………?という感じに分かりやすく困っているようだから。
「まさか、ガストンの地位目当てか?」
「もしも、そうならば、野心家なキャンベル伯爵閣下に似たのかもしれませんね。」
キャンベル伯爵閣下に似た可能性ならあるが、伯爵閣下は、野心家の割に、大人しい方だ。
娘達を甘やかす傾向にはある。しかし、王族を怒らせてまで、行動に移すことはない。
現に、ディオンへの一方的な婚約破棄騒動に、キャンベル伯爵閣下は、カンカンに怒っているという情報なら、入っているから。




