優しいお姑さんだな
「ディオン様
おはようございます。」
「リタ嬢、おはよう。
今日は、宜しく頼むよ。」
親友のエクトールとリタ嬢の弟のユージくんの二人に、相談してみたら、かなり驚かれた。
その2人の協力のもとで、エルナール博物館の内部にある喫茶店で話すことになった。
付き添いで、実姉のサラサ夫人も、一緒に。
「サラサ夫人、お久しぶりです。」
「ええ、ディオン様、本当に、お久しぶりね。」
「今は子育てに、忙しい時期なはずなのに、急にエクトールの代わりに。申し訳ない。」
「私の息子は、お義母様が見て下さっているから大丈夫よ。たまには、息抜きがてら、喫茶店に着いて行きなさい、と言って下さったの。」
「あの辺境伯夫人が? 優しいお姑さんだな。」
「うふふ。今や、女傑は、義娘のわたくしにも、孫にも、優しいんですのよ。」
エルナール辺境伯夫人は、サーキス辺境伯家の次女として生まれ、エルナール辺境伯家に政略結婚で嫁入りした貴婦人だ。
幼い頃から、女騎士として育ったため、鉄壁のような女傑として、有名なはずなんだが………
どうやら、身内には、物凄く甘いらしい。
「リタ嬢、今日は、いきなりなのに来てくれて、本当に、ありがとう。」
「エクトールお義兄様やユージくんから聞いて、本当に驚きました。
わたくしとお話してみたいとおっしゃったそうですね?」
「ああ。彼らのおかげで話す機会に恵まれたよ。」
彼女は、突然、初対面なのに話したいと言ったディオンに対して、内心で、警戒しながらも、ふわりと優しく微笑んだ。
義兄のエクトールの親友で、弟ユージが初対面なのに懐いている彼に、興味を持ったからだ。
「改めて、自己紹介を致しますね。
リーンダート伯爵家の次女にあたります、リタ・イレーヌ・フィン・テ・ディーセレーム・リーンダートでございます。
宜しくお願い致します。」
「うん、ありがとう。リタ嬢。」
「サラサ姉様、聞いても良いのかしら?」
「うふふ。彼は、優しいお方よ。今回は、お忍びでしょうけれど、聞いても良いと思いますわよ?」
「はい、かしこまりました。」
何やら小さな声で、サラサ夫人に尋ねている。
まあ、ディオンもレオンも、大変耳が良い為、姉妹の会話は、聞こえているのだが………
ここは、会話が聞こえていない振りをした方が良いのかもしれない。




