04話 天狐
誤字・脱字・文法の誤りがあっても、広い心で許して下さいwww
「神隠しの黒幕がわかった」
俺――緋宮慧は告げる。
「…………天狐だ」
「天狐?うそ」
唯衣の声に戦慄が混じる。
「事実だ。天狐本人は異界に居るが、その入り口がN県とG県の境にある。正確には県境辺りにある山寺だが」
信じられない顔をしている唯衣に、続けて説明する。
「精霊は星の守護者だ。ましてや精霊王の目を誤魔化すなんて、神にも不可能だ」
淡々と。
「今まで、神隠しで失踪した人たちもそこにいる。……だが俺たちで助けるのは……」
この言葉を口にするのはいささか辛い。
「無理だ」
「そんな……」
唯衣の表情がくもる。
「相手が悪すぎる」
俺とて相手が天狐でなければここまで弱気にはならない。だが、天狐というのはそれだけ危険な相手なのだ。
「……俺は皇家に出張ってもらおうと考えている」
……。
俺の能力、愛用の短剣、そして奥の手を考えれば決して勝てない相手では……、ない。
だが。
できるなら、危ない橋は渡りたくないし、渡らせたくもない。
「神隠しにあった人たちはどうなるの?」
唯衣が聞いてくる。
正論だ。
だが、あまりにもまっすぐな正論が、今は痛い。
「……皇家に連絡を取って、今の仕事が終わり次第、動いてもらおう。助けないわけじゃない、ただ少々……、時間がかかるだけだ」
そんな、言葉に唯衣が反論する。
「神隠しにあった人たちの家族はどうなるの?今でも待ってるんだよ、神隠しにあった人たちが帰ってくるって」
「……」
俺には答えられない。
できるのなら今すぐにでも助けたい!
そんな感情も理解できる。
しかし、相手が相手なだけにうかつに動くこともできない。
くそ!
……。
「さっきのは何だったんだい?」
!
縁側から声がかかる、美織さんだ。
「え、えっと、自分の使い魔みたいなものです」
まぁ、まちがってはないはず。
でも精霊本人が聞けば間違いなくおこられるな。
「へぇ、なかなか綺麗な使い魔じゃないか」
今の俺たちの雰囲気を察して、声をかけてくれたのだろうか?
なら、ありがたい。
苦笑しながら答える。
「ありがとうございます」
結局、唯衣とはよそよそしい雰囲気のまま一日の終りを迎えてしまった。
そして。
……起こった。
「神隠しだが、……新しい被害者がでたって」
夕食の最中だった。
「唯衣、あんたの友人だよ」
美織さんが。
「今朝、バイトの帰りに」
事実を淡々と。
「失踪したらしい」
説明した。
「美織さん!唯衣を見ませんでしたか!」
朝、起きたら唯衣が居なかった。
俺を起こしにこなかったから、訝しげに思い唯衣の部屋に行ったのだが。
いない。
いやな予感が止まらない!
くそっ、どこだ?
「唯衣かい、見てないけど。どうした?」
俺は昨日のことを説明する。
神隠しの黒幕は天狐だったこと。
県境の山寺に異界の入り口があること。
「間違いないね、うちの馬鹿娘は向かったと思うよ。ちょいと待ってな!」
そう答えた、美織さんが早足で屋敷の奥に行く。
俺も急いで向かう準備をする。
最悪、天狐とやりあうことになるのだ。
唯衣のやつめ!
出かける準備を終えて庭にでる。
美織さんの話しでは、確認したところ四神――形瀬の家に伝わる四体の戦闘用の人形、が無くなっていたそうだ。
ゼビュロスを構える。
……この方法は荒っぽいから使いたくないが。
一刻を争うのだ、贅沢は言えまい。
息を大きく吸い込み、叫ぶ!
「応じよ!」
柄の宝石が輝き、風が流れる。
「応じよ!」
風が轟音をたてて渦巻き始めた。
普段の召喚より早い!
「応じよ!」
よほど強い念を込めていたのだろう。
わずか三度目にして、精霊王シルフィードが降臨する。
俺は、言葉に魔力と、想いを込めて叫ぶ。
それは、もしかしたら絶叫だったかもしれない。
「頼む!俺を、俺を唯衣の元に、俺の大切な人の居る場所まで、運んでくれ!!」
……わずかな間。
シルフィードの顔に、穏やかとも楽しげとも、愛しみともとれるような笑みが浮かぶ。
そして。
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!
渦巻いていた風が俺の体を持ち上げた。
~形瀬唯衣~
ズンッ!
「玄武!」
私を守っていてくれた玄武がバラバラになる。
そんな!こんなに力の差があるなんて!
後悔しても遅い。
昨日の夜遅くに、家を出た。
たいした障害もなかったためか、県境の山寺までの移動は比較的簡単だった。
首尾よく異界の入り口を見つけ、侵入することもできた。
異界で天狐を見つけ攻撃を仕掛けることもできた。
だが、順調に行ったのはそこまでだった。
「どうした人間、もっと足掻いてみせよ」
つまらなそうに言うのは、目の前に居る女性だ。
既に『青龍』、『朱雀』は大破している。
かろうじて動いているのは『白虎』だけだが、それも限界が近づいている。
……どうして!
攻撃があたらない。
当たったはずの攻撃が、そのまま天狐の体を通すり抜けるのだ。
慧が使うような物体透過とも違う気がする、目の前の天狐から気配を感じない。
冷静に考えればそれは狐の得意とする幻術だと気づけたかもしれない。
唯衣とて素人ではない。
十三家、形瀬家の後継者としてそれなりの実戦経験は積んでいるし、妖魔と渡り合ったことだって数え切れないくらいにある。
妖狐を討伐したことだってある。
だが。
信じられないくらいの圧倒的な力の差。
自分が頼りとする四神がいとも簡単に壊されるようす。
これらを前に冷静な判断が下せなくなる。
「震」
天狐の口から力ある言葉が紡がれる。
カッ!
視界の全てを金色の光が埋め尽くす。
とっさに体を真横に投げ出す
立ち尽くさなかったのは、十三家に連なるものとしての矜持か。
ゴウッ!
気づいたときには白虎の上半身が消し飛んでいた。
「白虎!」
自らの力の象徴が崩れていく。
「これで、玩具は全てなくなったのう」
天狐が続ける。
「人間。わらわをもっと楽しませよ。でなければ、お主の友人とやらをばらばらに引き裂いてしまうぞ」
なんてことを!
「次じゃ」
手が振られる。
瞬間。
ドン!
物凄い暴風で体が吹き飛ばされる。
うぐッ。
「つまらぬなぁ。……防げ。でなければ死ぬぞ」
!
天狐が手を振り下ろした。
質量を持った風の塊が自分を押しつぶそうと迫る。
四神は全て破壊された。
自分の手には、この一撃を防ぐ術が存在しない。
慧、ごめん。私、もう無理かも……。
慧が言ったとおり自分では無理だったのかもしれない。
おとなしく皇家を待てばよかったかもしれない。
絶望が蝕んでいく。
頭の中を走馬灯が駆け抜けていく。
考えて、考えて……。
……。
………。
…………諦観が心を押しつぶした。
最後に。
「せっかく帰ってきたのに……。ごめんね、慧。……大丈夫、……私たちだもん、生まれ変わっても、またきっと会えるよ。……さようなら、…………ごめんね」
頬を涙が伝う。
そうして、唯衣は目を閉じた。
厨二的なフラグがいろいろとwww
……キニシナーイ、こういうのは気にしたら負けです、ハイ
さて、次話ですがいよいよ後編です。
厨二&主人公補正が光りますwww、お楽しみ(?)に
では、では~




