山彦
顔に朝日が当たり目覚めた。
遠くに見える山の頂き付近から太陽が顔を覗かせ、暖かな陽光を降り注いでいる。
太陽が顔を覗かせている山とその周囲の山々の雄大なパノラマ。
右を見ても左を見ても素晴らしい絶景が広がっている。
昨晩私は東海岸から西海岸に向けて飛ぶ、友人が所有するプライベートジェット機の機内で行われていたパーティーで、酒をしこたま飲んでいた。
東海岸から飛び立ってあと1〜2時間で目的地に到着って時に、飛び立つ前から酒を飲み続けていた私は機内をフラフラと彷徨い、パラシュートを見つける。
パラシュートを見つけた私は余興を思いつき、友人たちに話す。
因みにパーティーに参加している者たちは全員、私と同じく飛び立つ前から酒をしこたま飲んでいる酔っ払い。
シラフなのはパイロットたちと客室乗務員だけ。
「ヤレー!」「行けー!」「頑張れー!」
酔っ払っている友人たち全員が歓声を上げ、賛同してくれた。
客室乗務員と客室乗務員の連絡ですっ飛んできたチーフパイロットが、止めようとする。
「らいじょうぶ、らいじょうぶ、夜は山から平地に向けて風が吹いてるから、風に飛ばされても平地に降りる、だかららいじょうぶだよ」
チーフパイロットの「偏西風の影響で風向きが逆なんですー!」って言葉を無視しドアを開け、月が照らす大地に向けて飛んだ。
飛行機から飛び出してから約30秒後パラシュートを開く。
パラシュートを開いてから数分、眼下に月明かりに照らされて木々が生い茂る森が見えて来た。
その森が着地点かと思ってたら、その前にバサバサと木に引っかかったような衝撃が身体に走る。
この後、凄まじい眠気に襲われ木にぶら下がったまま意識を手放す。
それで朝日を顔に受けて目覚めた訳だ。
絶景を見ながら私は叫ぶ。
「助けてー!」
た す け て 〜
た す け て 〜
た す け て 〜
山彦が私の叫び声を拡散する。
木にぶら下がってはいた。
ただし、多分だけど数百メートルはあると思われる断崖絶壁の、3分の1くらいの高さのところに生えている木に、私は今ぶら下がっているんだよ。




