6 お味が微妙になります
今回は少し文字数が短いです(汗
お茶会を終え、ルディアたちがアーストンと合流すると、マルクが話していたことを伝えたが、途中まではスェンスに神官を紹介してもらおうかと考えていたが、料理の話が出た瞬間顔を引きつらせ、「スェンスに頼るのはやめよう」と言い出した。
(そんなに料理の味がダメなのでしょうか?)
「こちらもそろそろ神官に連絡のつく時期だ。そこまで急がなくともいいだろう」
「なぜ時間がかかるのです? 私はすぐにでも手配が出来ると思っておりました」
「通常ルートで接見を申し込んだからな。もちろん、特別ルートもあるが、今回はそこまで急ぎではないだろう?」
「まあ、そうですね」
もともと、魔法を使いたいと言う自分の欲求が始まりなので、ルディア自身も急いでいない。
早いに越したことはないが、確かに特別ルートを使うほどではないのだろう。
ルディアとフィディスは夜会には出ることはないため、アーストンを見送った後、二人で遅めの夕食を食べた。
しかしフィディスはともかく、ルディアは家とは違う味付けや量に戸惑い、そのほとんどを残してしまう。
心配したフィディスがいつものように自分の膝の上にルディアを乗せ、デザートとして配膳されている果物をてずから食べさせる。
ウィンターク公爵領で採れたものの中でも品質の良いものを王宮には配分しているため、家と同じ味に果物に関しては食が進んだルディアはモグモグと一生懸命果物を食べた。
具合が良い時に食べなければ、それはそれで翌日の体調に影響を及ぼすのはわかっている。
(鶏のササミをほぐしたものが食べたいですわ、少しだけ)
果物を食べながらその甘さに、少しだけしょっぱいものが食べたくなったルディアはそんなことを考えてしまう。
もっとも、ルディアの体的に食欲があるのはいいことなので、このことを言えばフィディスは家からジルハを呼び寄せてでも準備させてしまうのは目に見えている。
たとえ出来上がった時にルディアが寝てしまっている可能性が高くとも、翌朝にまた作り直せばいい、そのぐらいの気概で。
なのでルディアはあえて口には出さない。
決して王宮の料理がおいしくないわけではないのだ。
少しだけ慣れない味付けというだけで、わざわざ王宮のコックに喧嘩を売りたくはない。
「それにしても、わたくし、ウィンホルムこーしゃくにしんきん感がわきましたわ」
「どうして?」
接点はほとんどないはずだけど、とフィディスがルディアの頬をつつく。
それを気にした様子もなくルディアは「りょーりですわ」と答えた。
「わたくしも、りょーりはどうしてもだめで、なぜかおいしくつくれませんでしたの。見た目は、きれいだって言われましたのよ? レシピどおりに作ったのに、なぜかふしぎなお味になりますの」
「ふーん?」
そこで少し考えたフィディスはいくつか質問をし、ある質問の答えに「ん?」と言葉を止めた。
「変なものは入れていない?」
「そうですわ」
「変じゃないものは入れたんだね?」
「そうですわね」
フィディスがそこで「原因はそれだと思う」と言う。
ルディアは納得がいかないように頬を膨らませてつついてくる指を阻む。
「だってちゃんと食べられるものですし、体にいいものですわ」
「なにを入れたんだい?」
「ビタミン剤とか、鉄剤とか、亜鉛とかのサプリメントですわ」
「サプ、リメン、と? それは食べ物なんだね?」
「ええ」
サプリメントという聞いたことのない名前にフィディスは戸惑うが、絶対にそれが原因だと確信した。
サプリメントという総称はなくとも、ビタミンや鉄分という知識はコックを中心に広まっている。
恐らくはそれらを加工した何かした薬のようなものだろうとあたりをつけ、フィディスはルディアに重ねて尋ねた。
「そのサプ=リ=メント、というのは美味しいものかい?」
「サプリメント、ですわ。えっと、おいしいものもおいしくないものもありますが、りょーやく口ににふぁ……にがし、ですわ」
「そっかぁ」
ルディアが少し眠くなっているのを察しながら、フィディスはどう説明したものか考える。
言っている事は間違っていないのだが、美味しいものを作るのであれば、サプリメントを入れなければよかったのではないかと思ってしまうのだが、本人には全く悪気がない。
「もし今度作るのなら、コックが見守っているところで、レシピに書かれた材料以外を入れないで作ろう?」
「コックに見守られたことはありませんが、レシピにのっていないものを入れずに作っても、お味がよろしくなかったのですわ」
「ん~?」
どういう事だろう、とフィディスが首を傾げる。
ルディアの前世についてはだいたいの事を聞いているフィディスではあるが、経歴は詳しくともそのほかの事はそこまで詳しくはない。
フィディスが溺愛しているのはルディアであってその前世ではないだ。
記憶の関係で多少性格が変わろうとも溺愛は続くが、それはルディアという個人だから愛情を注いでいる。
触れ合ったことのないルディアの前世には多少情を抱くも、愛情を抱くことはない。
だから、今のルディアに影響している部分以外の個人情報はあまり聞かなかったのだが、これは聞いた方がいいのだろうかと悩んでしまう。
「レシピ通りに作ったけど味が微妙だったんだ?」
「ええ、見た目はとてもおいしそうにできますのに、ふしぎですわよね」
フィディスが頬をつつくのをやめたため、ルディアが頬に手を当てて首を傾げる。
流石にそう言われてしまうとフィディスでも原因が分からないため、今度ジルハに聞いてみると会話を切った。
(絶対調理法がおかしいんだろうな)
ルディアには言わなかったが、フィディスはその考えにかなりの自信を持っている。
先日ルディアのために黄桃用のシロップを作成する工程を見た際、調理方法が少し違っただけでも味が変わるとジルハに言われたのだ。
特に菓子類は材料の量はもちろん、混ぜ方ひとつで出来上がりが変わるという。
(ルディを傷つけずに教える方法を考えないと。私だけなら何を出されても食べるけれど、流石にお爺様に美味しくないものを食べさせるのは気が引ける)
どうしたものか考えているとルディアが小さくあくびをしたことに気が付き、とりあえずルディアを休ませることを優先させる。
「もう寝ようか、ルディ」
「そうですわね」
王都にある邸宅では別の部屋で寝るルディアとフィディスだが、何が起きるかわからない王宮では、少なくとも今夜は一緒に寝ることにしたらしい。
ルディアに先に風呂を譲り、部屋に一人になったタイミングでフィディスは明日の朝食はジルハに作らせるためにウィンターク公爵家に使いを出す。
せっかく体調がよく量を食べることが出来そうであるにもかかわらず、味付けの問題で食べられないのではもったいない。
アーストンにはあとから事情を説明すればいいと考えているし、レンティムはアーストンが説得するだろう。
フィディアというレンティムの同母妹、そしてアーストンの妻がいた時に腕を振るって浮いたコックは、嫁入りとともにウィンターク公爵家に移籍してしまったため今ここにはいない。
そしてそのコックはフィディア亡きあと、アーストンの後援を得て個人の店を貴族街に構えている。
ルディアが風呂から上がり、交代で風呂に入ったフィディスが戻ると、すやすやという静かな寝息が聞こえてきた。
通りでアヴィシアたちが人差し指を口元に当てて「静かに」と言ったはずだ、と納得する。
起こさないよう、音を立てずにベッドにそっと上がると、アヴィシアたちが掛布団を持ち上げてくれるので横になり、ゆっくりと掛けてもらう。
(私の、唯一の光)
もぞりと動き手を伸ばしてルディアの手を握る。
起こさないようにそっと握った手から伝わる暖かさに、フィディスはほっと安堵し息を吐きだすと、自分自身も目を閉じた。
ルディアの料理が【レシピ通りの工程と材料】なのに味が微妙なのは
調理加減(煮る焼く蒸す混ぜるなど)が微妙だからです。
ちなみに、メシマズのモデルは友人です(´;ω;`)




