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13 暗躍する(出来ているとは言っていない)

主人公はルディアです!

なんか登場場面少ない気もしますが、ルディアが主人公なんです!

「パパ、どうしてお家を出ていくの?」


 引っ越しの準備を終えて神聖国行の飛空艇を待っている間、何度目かになる質問にいやな顔をせずに同じ答えをオクシスは返す。


「神聖国に行くんだよ。そこでちょっとだけ勉強をして、他の国に行くんだ」

「どうして?」

「そうすれば俺たちはまた、家族そろって幸せで楽な暮らしが出来るんだ」


 リズリアは何度目かの質問で納得したのか、「う~ん」と気に入らないようではあるが頷いた。

 落ち着いたのを確認し、オクシスはリズリアを抱え上げると、フィニスに「行こう」と声をかける。

 しかし、フィニスは動かずただ微笑んでいるのみ。


「フィニス、どうした? 具合が悪いのか?」

「いいえアナタ。ワタシは行けないわ。パパとママの手伝いもあるし、神聖国なんて行きたくもないもの」

「そんなどうして今更!」


 慌てたように言うオクシスを無視し、フィニスは自分譲りの珊瑚色を持つリズリアの頭を撫でる。


「元気でね、リズリア」

「なんでママはいかないの?」

「行けないのよ。わかってちょうだい」


 リズリアはまたしても「ふ~ん」とだけ言って特に意見はないようで、「バイバイ」と手を振った。

 けれどもオクシスは愛する()と離れる気はなく、リズリアを抱えているせいで両手が動かせないことに気が付き、もどかしそうにフィニスを見る。


「アナタ、わかってくれるわよね。ワタシはちゃんとここでまってるわ。また会いに来て」

「一緒に行こう。親御さんの事は俺が何とかするから大丈夫だ」

「ううん、いいの。それにさっきも言ったじゃない。神聖国ってワタシ嫌いなのよ」


 一緒に行こうと何度も言うオクシスに対し、フィニスはあくまでもいかないと言って首を横に振る。

 なら行くのを中止にしようかとも思ったオクシスだが、家は売り払ってしまったし、出国に際してこの国の貴族の籍を抜く手続きも終えてしまった。

 必要な荷物は飛空艇の乗員によって既に中に運び込まれてしまっている。

 戻るにも手続きをしている時間はない。


「そうだ、荷物! フィニスの荷物だってこっちに積んでいるじゃないか!」

「ワタシの荷物は別にして、ちゃんとこれから住む場所に送ってあるの」

「どうしてっ! そんなかっ……てな、ことを……」


 あまりの身勝手さにオクシスが怒鳴りつけかけると、腕の中のリズリアがビクリと震えたので、だんだんと声を小さくしていく。


「勝手じゃないわ」


 フィニスは少し怒ったように息を吐きだすと、キッとオクシスを見た。


「ワタシは神聖国行きに反対したじゃない。それなのに絶対に大丈夫だ、未来が明るくなるとか言って、勝手に決めたのはアナタ」

「それは、でもっ本当に俺たちの未来のためなんだよ。わかってくれ」

「わからないわ。あのままでよかったじゃない。家もあって、仕事ももらった。何が不満だったのよ」


 わからないと首を横に振ったフィニスにオクシスは少し苛立ちを感じる。

 フィニスは一代男爵の娘で、平民に近い暮らしをしていたせいか、どうしても貴族の暮らしから抜け出せないオクシスと意見が対立する時があった。

 それでも愛し合っているからこそ乗り越えてきたのに、こんなところでまるで裏切るような行為をしなくても、と思ってしまう。

 今すぐリズリアを置いてフィニスの腕を取りたいが、その瞬間にリズリアまで自分を置いて行ったらと考えると、恐ろしくてそれはできない。


「フィニス、いい加減にわがままはよしてくれ。一緒に行こう」

「行けないと言っているじゃない。そんなに文句を言うのなら見送りもここまでにするわ。行ってらっしゃい」

「フィニス!」


 宣言通りフィニスはクルリと背を向けて歩き出してしまう。

 その背を慌てて追いかけ、なんとかリズリアを抱えたまま片手を伸ばして腕を掴むことに成功し、オクシスはその歩みを止めさせた。


「待ってくれフィニス!」

「離してよ」

「ごめん、でもっ俺は三人で一緒に暮らしたいんだ」


 オクシスは必死に言いつのるも、フィニスは難しい顔をして眉間にしわを寄せている。


「ワタシはあのままでよかったの。あのままがよかったの」

「だから、今までのように楽して贅沢な暮らしが出来るように——」

「そうじゃないって言ってるじゃない!」


 思わずと言った感じに叫んだフィニスに、腕の中のリズリアが驚いて体を揺らし落ちそうになったため、慌てて支えるために腕から手を離してしまう。

 その隙に、フィニスは「リズリアに」といって小さな箱を胸の上に置いて離れた。


「フィニス!」

「じゃあね!」


 駆け出して離れてしまったフィニスを追いかけることも出来ず、茫然と立ちつくしてしまう。

 リズリアが「パパ?」と声をかけたことでハッと正気に戻り、あたりを見渡したがもうどこにもフィニスの姿はなかった。


「どうして……」

「パパ、しんせーこくに行かないの?」

「いや、行く。もう後戻りはできない」

「じゃあ行こ~!」


 明るく笑うリズリアに少しだけ元気をもらい、オクシスは後ろ髪を引かれながら飛空艇に乗り込むために元の場所に戻っていった。




 ◆ ◆ ◆




 王宮内部にある後宮の一室で、プーパは優雅に紅茶を口にしながら報告を聞いていた。

 一通り聞き終わると、「手はず通りね」とふっと笑みを浮かべる。


「あのような小物にプーパ姫(・・・・)のお恵みを与えずともよろしかったのではありませんか?」


 母国から連れてきた侍従とメイドを使ってオクシスをこの国から追い出し、神聖国に籍を移させる。

 それは最近思いついたことではあったが、よくよく考えてみていい事なのではないかと思い、こうして実行しているのだ。

 同じく母国から連れてきた侍女が質問をしてきたので、プーパは機嫌よく答える。


「ウィンターク公爵家に恩を売れるわ。害虫を遠くにやってあげたんだもの。それに、もし使えるようなら、提案(・・)したようにアタクシの母国(ドマナン王国)の貴族に推薦(・・)してあげてもいいわ」

「さようでございますか」


 まだ理解できがたいという侍女に、プーパの機嫌は少しだけ下がるが、説明が足りていないようだと思いなおし言葉を続ける。


「まったく、年頃が合う公爵家の娘がいるっていうのに使えないなんて。とは思っていたのよ。でも、保険にはちょうどいいじゃない」

「保険でございますか?」

「そう。ないとは思うけれど、もしアタクシのウィクトルが王太子になれなかったら、あの子をウィンターク公爵家の当主にするの」


 名案でしょう。と言わんばかりのプーパの言葉に、忠誠を誓っているとはいえ侍女は驚きの表情を浮かべて硬直してしまう。

 そしてやっとの思いで硬直から抜け出し、「そんなことが可能なのですか?」と震える声で言った。


「可能にするのよ。フィディスが死んでしまえばルディアしか継ぐ人間はいないでしょう? だから、ルディアの夫であるウィクトルが当主になれるわ。王太子になれそうだったら、婚約をなかったことにしてしまえばいいんだもの」


 クスクスと楽しそうに笑うプーパに、侍女はそんなことが可能なのかと思わず不安が押し寄せてきてしまう。

 そもそもどうやってフィディスの死を誘導するのかという問題。

 他の公爵家や貴族が黙っているのかという問題。

 婚約の申し込みは既にティルムが国王に打診しているという問題。

 なによりも、ルディアとの婚約は国王が反対しているという問題。


 軽く考えただけでもこれほどの問題があるのにもかかわらず、プーパは出来ると信じて疑いを持つことがない。

 そのしわ寄せは必ず周囲、仕えている自分たちに来ることをいやというほど知っている。


「ウィンターク公爵令嬢を当主にするにあたり、どのような計画があるのでしょうか?」

「それはアタクシではなく貴女たちで考えて頂戴」


 やっぱりか、と絶望感に襲われながらも、侍女の頭の中では次々と計画が持ち上がっては消えていく。

 やはり無謀なのではないかと思った矢先、いずれアーストンは死ぬということを思いついた。

 おいぼれが死ぬのはこの世の通り(どおり)。それならばその時にこちらに都合のいい下地を作っておけばいいだろう。


 侍女がざっくりと計画を練り上げ、頭の中で整理している間、プーパはメイドに新しくお茶を入れさせ、新しい香りを楽しんでいる。

 どこまで行ってもプーパは姫であり、この部屋にいるのは長年を共にした下僕(・・)なのだ。

 だからこそ、表ではプーパ()もしくはプーパ()と言っているにもかかわらず、この部屋の中では姫と呼ぶ。


「プーパ姫、計画の概要ですがお話してもよろしいですか?」

「いつもより時間がかかったじゃない。まあいいわ、話して頂戴」


 許しを得て侍女は計画を話し始める。

 自分自身も多大に希望的観測が入っている事を理解している。

 けれども今はこの計画しか思い浮かばないとばかりに、さも成功するかのように自信満々を装って話せば、プーパは目を輝かせ————なかった。


「フィディスを殺すところまではいいけれど、そのあと本当にその計画通りになるのかしら? あのウィンノエル公爵家当主、クリプトルが後見になるのでしょう?」


 疑問の声に思わずまずい、と思ってしまうが、そこは案があると思いついたことを話していく。


「オクシスに神聖国で功績を上げさせるのです」

「そんなこと可能なの?」

「やって見せますし、あの男も自分の将来がかかっているのですから成し遂げるでしょう」


 侍女の言葉に半信半疑ながらも頷いたプーパだが、功績を上げても普通は家を出た人間を戻して当主権限は与えないのでは、と珍しく(・・・)まともなことを言った。

 そのことに少し驚きつつも感動していた侍女だが、そこでウィクトルの活躍があるのだという。


「詳しく」


 流石に息子が関わっているとなると話半分に聞き流すわけにはいかないのか、プーパの目に真剣な色がやっと宿った。

 そして話を聞いていくうちに、「アタクシのウィクトルなら出来るわね」と謎の自信に満ち溢れ、計画の実行に許可を出す。


「ふふ、これで邪魔なティルムを排除出来て、うざったいカリュアを黙らせることが出来て、尚且つウィクトルに花を持たせることが出来るわ。ふふ、ふふふふふふっ」


 暗くけれども耳障りな甲高い笑い声が響く中で、侍女をはじめメイドと侍従は今後の仕事が山済みだと内心で嘆くしかなかった。

この会話、絶対に暗部とか影とかそういうやつに聞かれてそうですよね?w

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