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第十四話― 夏休み 場外乱闘なアルバイト【前編】(2)

 拳悟と勝、そして由美がアルバイトを始めてから十日ほど経ったある日。

 午前中から気温も上昇し、瓶ビールが飛ぶように売れるそんな真夏の昼下がり。ウエイトレスである由美と柚加利は、注文取りに追われて混み合う店内を忙しそうに駆けずり回っていた。

 肌着やブラウスを汗で湿らせながら、お客一人一人の注文に応対している柚加利。ひたむきに働く彼女の姿勢は、他のアルバイト学生から見たら尊敬の眼差しに値するとても優れたものであった。

 今日もいつもと同じで何事もなく、慌しくとも有意義な一日で終わると思われたが、あるテーブル席からの一声でそれはもろくも崩れ去ってしまう。

「おーい、ねーちゃん!」

 四人掛けのテーブル席に腰掛ける四人の男性。そのうちの一人が偉そうに火の点いたタバコを指で弄りながら、たまたま通りかかった柚加利のことを呼び止めた。

 彼女はウエイトレスらしくその声に反応して接客しようとしたが、そこにいる男性の顔を見るなり表情が一変する。まるでオバケでも見たかのように、血の気が引いてみるみる顔色が青ざめていった。

「おい、どーした? 呼んでるのが聞こえねーのか?」

 タバコの紫煙をぶしつけに吐き出し、椅子の上で踏ん反り返っているその男性。粗暴っぽいリーゼントの髪型のくせに、夏を感じさせるひまわりをあしらったTシャツが何とも不釣合いである。

 彼は目を吊り上げて、口から牙のような八重歯をチラリと覗かせる。それはまさに般若と呼んでもおかしくないほどの強面だ。

 動揺を悟られまいとする柚加利は、無理やり平静を装いつつ普段通りの姿勢で注文を伺おうとする。しかし、強面の男性はなぜか苛立っているようで野獣のような獰猛な目つきで彼女のことを睨み付けていた。

「とうとう見つけたぜ。こんなところでバイトしてるとはな」

「あ、あの、何の、ことでしょう……?」

 柚加利のことを探していたかのような言動。緊迫していく状況の中、あくまでも白を切ろうとする彼女にその男性は激高してしまい店内中に響き渡るほどの怒号を張り上げる。

「すっとぼけるんじゃねー! 俺のことを知ってるだろうがっ!」

 火の点いたタバコを乱暴に投げ捨てて、襲い掛からんばかりに椅子から立ち上がる強面の男性。

 予期もしない非常事態に、お客で賑わう店内がシーンと静まり返ってしまう。ウエイトレスの由美、そして他の従業員たちもただならぬ雰囲気に臆して緊張の息を呑み込んだ。

 強面の男性は凄みを利かせながら、柚加利の目の前にじわりじわりと迫っていく。もう逃がしはしないと、獲物を追い詰めた肉食動物のごとく鋭く尖った牙を剥き出しにした。

 そこへ大急ぎで駆け付けてくるのは、この異変に気付いた大衆食堂の責任者である店長だった。

 彼は表情を強張らせて、理由も聞かずにただ謝罪の大声を発した。その低姿勢こそ、どんなお客様でも神様として扱う飲食店特有のスローガンがあってのものなのだろう。

「お客様、いったいどうなされましたか!?」

 額に冷や汗をにじませて事態の収拾に当たる店長。冷静になるよう丁重に要望した彼だが、事務的な生真面目さがかえって強面の男性の苛立ちを募らせてしまった。

「んだ、てめーは? 部外者はすっこんどれ!」

 強面の男性は高圧的な態度で、店長のもとへどんどん詰め寄っていく。

 ――そんな緊迫したやり取りの最中だった。柚加利はそれに気を取られていて、背後に怪しい影が忍び寄っていることに気付かなかった。

 その影こそ強面の男性の仲間であり、牛乳瓶底のようなメガネを掛けた、太い眉毛を下げた変態丸出しの男性であった。

「へ~、こーんなパンツ履いてるのか。いい物見せてもらったぞ~」

 何をしでかすのかと思ったら、変態男はいきなり柚加利のスカートをめくり上げたのだ。その時の彼の顔つきといったら、頬をほんのり赤く染めて気色悪さ極まりない。

「きゃっ――! 何すんのよ!」

 ショックと恥ずかしさ、何よりも激しい悪寒が全身を襲い、柚加利は耳をつんざくような悲鳴を上げながら背後で屈んでいた変態男に回し蹴りを食らわした。

 相当の威力だったのだろう、蹴りをまともに食らった変態男はうめき声を周囲に響かせて、テーブル椅子をふっ飛ばしながら店内の内壁に激突してようやく動きを止めた。

 突発的だったとはいえ格闘家顔負けの華麗なる反撃。これにすぐさまいきり立ったのは、撃沈した変態男の仲間ではなく何と味方であるはずのお店の店長だった。

「お、おい、オオノくん! お客様に何て失礼なことをするんだ!」

「そ、そんな。だ、だって、あの男が、わたしのスカートを――!」

 柚加利が相手の迷惑行為を主張しても、店長の方もお客様へ謝罪をしなさいの一点張り。お互いが意固地になって決着の見えない言い合いが続く。

 ここへ割り込んでくるのは、ますます表情を鬼のようにした強面の男性。かなり憤慨しているのか、テーブルの上に握り拳を叩き落して店内の窓を震わせるほどの怒鳴り声を咆哮した。

「ゴチャゴチャうるせぇ! 俺はその女に用があるんだ。てめぇの出る幕じゃねーんだよ!」

「申し訳ございません! 今後このようなことがないよう彼女にはきつく言っておきますので、どうかお許しを」

 大切なお店を守ろうとする誇りなのか、店長は恐怖心に負けそうになりながらも、いきり立つお客様を必死になって宥めようとする。――しかし、事態はもう収束できない状況となっていた。

「うせろーっ!」

『ガツッ!』

 骨を打つような鈍い音が鳴り響いた。その瞬間、顎にアッパーカットを食らった店長がほんの数センチほど宙に浮かんだと思ったら、ノックダウンするボクサーのごとくコンクリートの床の上に背中から落下していった。

 暴力事件発生という緊迫感に囚われた店内。お客たちは逃げたくても逃げられず、騒然とする中で身を寄せ合って怯え切っていた。

「あっ、店長――!」

 柚加利は衝撃のあまり両足が竦んだ。それでも責任を感じたのか、震える両足にムチを打って気を失っている店長のもとへと駆け寄った。

 そんな彼女の細い腕を鷲掴みする太くて厳つい右手。不気味にほくそ笑む強面の男性に拘束されてしまった彼女は、身の危険を察知し顔色から血の気が引いていく。

 店長に危害を加えられたばかりか、アルバイト学生まで拉致されるのを厨房にいた男性従業員が黙って見過ごすはずはない。彼らは勝手口から飛び出して、犯罪とも言える凶行を止めようと果敢に立ち向かっていった。

 強面の男性はそれにまったく動じる様子がない。むしろ待ってましたと言わんばかりに、彼女の腕を掴んだまま従業員を一人、また一人と拳をふるって粉砕していった。

 これがきっかけの狼煙だったのか、ついに彼の仲間たちも加勢して食器類やテーブル椅子があちこちに飛び交う店中を巻き込んだ大乱闘が勃発した。

(――大変だ! ケンゴさんたちに知らせなきゃ!)

 店内の隅っこでウサギのように縮こまっていた由美。暴れ回る男性たちの目の届かない隙を突き、彼女は後ずさりしながら拳悟と勝の仕事場である洗い場へと急ぐのであった。


* ◇ *

 まさか乱闘騒ぎが起きているとは露知らず、拳悟と勝の二人は皿洗いもあらかた片付き、肩をポンポン叩いて一息ついているところだった。

 初日早々ちょっとした騒動を起こしていた彼ら。さすがに反省していたようで、それ以降はテキパキとかつ慎重に任された仕事をこなしていたようだ。

「それじゃあ、コーヒーでも買ってくるかな」

 コーヒーブレイクしようと、勝はズボンの後ろポケットから小銭入れを抜き取る。拳悟もお財布の中をまさぐってみるも、残念ながら一円玉と五円玉数枚しか手応えがなかった。

「なぁ、スグル。俺、百円玉がないからコーヒーおごってくれよ」

「はぁ? 何で俺がおまえにおごらなきゃいけねーんだ? こういう場合は普通、貸してくれ、だろうが」

 いかにも嫌そうな顔をする勝と、あからさまに憮然として口を尖らせる拳悟。

 たかが百円、されど百円。二人は貸し借りについて日常茶飯事的な口論を繰り広げながら、自動販売機が設置されている休憩スペースへ向かおうとした。

 まさにその直後、応急処置で修復した洗い場のドアをこじ開ける少女が一人。それはここで述べるまでもなく、店内から息を切らせてここまで走ってきた由美である。

 顔中にびっしょり汗をかいている彼女、それに予期せぬ事態を察したのか、いったい何があったのか?と拳悟と勝もびっくりして彼女の傍へと詰め寄った。

 ぜーぜーと休みなく息を吐き出しながらも、彼女は救いを求める一心で声を絞り出した。

「た、大変なんです! お、お店が変な男の人たちに荒らされているんです!  しかも、ユ、ユカリさんがその人たちに誘拐されそうなんです!」


* ◇ *

 無数に散らばるお皿の割れた破片。乱雑に倒れているテーブルと椅子。そして、うめき声を上げながら苦痛にもだえている男性従業員たち。

 やかましい騒音と耳を押さえたくなる悲鳴が轟く中、大衆食堂”えびすや”の店内は、まさに地獄絵図のような修羅場と化していた。

 戦場のように荒れ果てた店内で、柚加利はまだ強面の男性に拘束されたままであった。彼の握力はとてつもなく強く、非力な女性ではそれを引き剥がすことなど到底叶わない。

 それでも、この修羅場の要因を作ったことへの罪悪感を抱く彼女は、力任せではどうにもならないにしても何とか危機的状況から脱出しようと思案を練る。悩みに悩んで考え抜いた末に出した結論とは――?

『カプッ』

 柚加利が起こした行動とは、お肉にかじり付かんばかりに歯を立てて強面の男性のたくましい腕に噛み付くという女性らしい行為だった。

 こればかりは、さすがに般若みたいな顔をした男性でも目に涙を浮かべて悲痛の叫び声を上げてしまう。余程痛かったのだろう、彼女のことを締め上げていた右手を無意識のうちに離してしまっていた。

「い、いてぇ、ちくしょう、このアマ!」

 歯型と血が滲んだ腕を震わせて、憤怒と苦悶の表情を浮かべている強面の男性。ふーふーと息を吹きかけて、痛いの痛いの飛んでいけーと子供っぽいおまじないを呟く。

 晴れて自由の身となった柚加利は、あっかんべーと舌を出して一目散にそこから逃げ出そうとした。ところが、そんな彼女に襲い掛かる戦闘から離脱したはずの変態男の影があった。

「パ、パンツをおくれ~~!」

「ひぃぃぃ!?」

 牛乳瓶底のレンズを鈍く光らせて、亡霊のごとくゆらゆらと忍び寄ってくる変態の影に柚加利は戦慄のあまり悲鳴を張り上げた。

 泣きながら逃げていく彼女、それを追いかける変態男。二人の追いかけっこはしばらく続いたが、テーブルや椅子が散乱しているこの店内で彼女はついに行き止まりとなる壁際へと追い込まれてしまう。

「へっへっへ~、その大きな胸をモミモミしてやろう~」

 柚加利は背筋が凍り付き、内壁に張り付いたまま動けなくなってしまった。全身がブルブルと震えているせいか、助けを呼ぶ声までも途切れ途切れに震えている。

 わいせつ行為などお構いなし。両方の手のひらを広げてそれこそモミモミのゼスチャーをする変態男は、彼女の豊満な胸部に狙いを定めてついに突進を始めた。

 万事休すか――と思った瞬間だった。

『ガコオォォ~~ン』

 鐘を突いたような重たい音が鳴り響いたと思ったら、それから数秒後、おでこを真っ赤に腫らした変態男が遠のいた意識のまま背後へと倒れていった。

 目を瞑っていた柚加利は何が起きたのかわからず、恐る恐る潤んだ瞳を開いてみる。

 視線に映ったものは合金製の黒光りしたフライパン。そして、そのフライパンを握り締めていた人物こそ、彼女の窮地を間一髪で救ったアルバイト仲間の勝であった。

「ス、スグルくん! 助けに来てくれたのね!」

「まー、こう見えても、女子の友達は大切にする性格なもんでな」

 危機を脱した安堵感から、萎んだ風船みたいにずるずるとひざから崩れ落ちていく柚加利。そこへ駆け付けた由美が、柚加利の冷え切った手をぎゅっと握り締める。

「ユカリさん、もう大丈夫だよ。ケンゴさんとスグルくんが来てくれたから」

「……あ、ありがとう、ユミちゃん」

 柚加利が無事に済んだとはいえ、店内はまだ乱闘騒ぎの真っ最中だった。もうほとんど八つ当たりなのだろう、強面の男性と彼の仲間たちはテーブルや椅子を蹴飛ばしては破壊活動を続けていた。

 ようやく意識を取り戻した店長は荒れ果てたお店の惨状に絶句し、手も足も出ない他の従業員と一緒になって理不尽な暴挙をただ黙って見過ごすしかなかった。

 そこへやってきたのは、暴れん坊たちの前に果敢に立ち向かう拳悟だ。彼は大きく息を吸い込んで店の窓を震わせるほどの怒号を轟かせた。

「いい加減にしろ、このアホどもがっ!」

 時が止まったかのようにシーンと静まり返った店内。由美や柚加利も、従業員の面々も、強面の男性とその仲間たちも、ここにいる誰もが拳悟のことを見つめていた。

「おまえら、メシ食いに来たのか、店壊しに来たのか、どっちだ?」

 鋭い目つきで強面の男性のことを睨み付ける拳悟に対し、強面の男性も負けじと八重歯を剥き出して拳悟のことを睨み返した。

「どっちでもねーな。そこにいる女をおとなしく渡せば、この店に用事はねーよ。てめぇも怪我したくなかったら俺の言うことを聞くんだな」

 この二人の距離はほんの数十センチ。鬼気迫る凄みを利かせたまま対峙し、激しい火花を散らしている。まさに一触即発、どちらが先に手を出してもおかしくない様相を呈していた。

「連れて行きたきゃ、連れて行けばいいさ」

 拳悟の口から囁かれた一言に、当事者の柚加利はびっくり仰天して唖然としてしまう。だが無責任な彼ではなく、歩を進めて彼女の正面に立ち塞がるとバリケードのような格好をして見せた。

「さぁ、俺の後ろにいる彼女を連れて行けよ。この俺を張り倒せる自信があるならな」

 これまで幾多の修羅場を経験しているのか、好戦的な相手にもまったく動じる様子のない拳悟。ニヤリと口角を上げて、不敵に笑う余裕まで見せ付ける彼だった。

 肌を突き刺す張り詰めた空気が漂う中、拳悟と強面の男性の威嚇合戦はしばらく続いた。周囲のギャラリーたちも押し黙ったまま、今にも爆発しそうな彼らの睨み合いをじっと見守るしかなかった。

 まさに導火線に火が点く瞬間か――と思った途端、その火を消火させたのは強面の男性の仲間の一人が慌てて叫んだ一言であった。

「おい、オニタロウ! マッポが来たぞっ!」

 それは不幸中の幸い。お店の従業員なのか、それともお客なのかは定かではないが、百十番通報した人がいたらしく数人の警察官がお店に駆け付けてきたのだ。

 いくら偉そうに気張っていても、警察が相手では引き下がるしかない。強面の男性は悔しそうな顔つきで拳悟に向かって捨て台詞を吐き捨てる。

「ケッ、今日のところは見逃してやるが、また邪魔させてもらうぜ。決着はその時まで取っておけよ」

 散々暴れるだけ暴れて、料金すら払わずにお店を飛び出していったヤクザ紛いの男性たち。わー、逃げろ逃げろーと叫びながら、警察官たちの猛追からあっという間に行方をくらませてしまった。

 降って沸いた災難は去ったが、店内は嵐の過ぎ去った後のような残骸で溢れ返っていた。従業員たちは意気消沈としながらも、その後片付けに追われることになる。

 警察官による事情聴取に借り出されている店長も、何が何だかさっぱりわからないといった感じで、負傷した顎に手を宛てながら首を捻るばかりだった。

 この騒動のきっかけであろう柚加利も、この後事情聴取を受ける羽目になるのだろうが、まずその前に拳悟と勝の二人から呼び出される格好となってしまった。

「ユミちゃん、俺ら、ユカリと話があるから、悪いけど店長によろしく言っておいてよ」

「あ、はい……」

 由美に言づてを一つ残して、拳悟と勝、そして彼らに連れられる柚加利は店内備え付けの休憩スペースへと場所を移動した。

 彼らから椅子に座るよう促されて、腰のみならず肩までガックリと落とした柚加利。その青ざめた顔色こそ、このたびの事件の発端に深く関わっていることを物語っていた。

「ユカリ。ここに連れてこられた理由はわかってるよな?」

 勝から責めるように問いただされて、柚加利は力なくコクンと頭を頷かせる。どうやら、どんな尋問にも正直に答える覚悟はできているようだ。

「よーし、質問その一。あいつらは何者なんだ?」

 拳悟の記憶の中に浮かぶ強面の男性。何事にも物怖じしないあの存在感は、その辺りでブラブラしている優男などではなく腕っ節も度胸も据わった強者であるに違いない。

 果たして、柚加利のことを連れ去ろうとしたあの連中はいったい何者なのであろうか……?

「あの人たちは、夜叉実業の人たちよ」

「――な、何ぃ!?」

 その事実に衝撃を受けたのか、拳悟と勝の二人は驚愕とした表情を突っ返した。

 夜叉実業、つまり夜叉実業高校とは、派茶目茶高校から少しばかり離れた田園地帯に校舎を構える実業系学科の高校だ。

 とかく、工業学科の生徒はすこぶる柄が悪く素行不良とレッテルを貼られる連中も少なくない。ここ最近、教師を半殺しにして退学を食らった生徒もいると噂される悪評の高い学校であった。

 人前でタバコを平然とふかしたり、人の迷惑などまるでお構いなしの暴れっぷり。拳悟と勝はそれに頷き合って納得するも、あの連中の素性を知って内心穏やかにはいられなかった。

「で、質問その二。何だって、そんなヤツらに追われてるんだ?」

 こうなると、次に気になるのは柚加利がなぜ野蛮な連中に狙われているのか?となるわけで、疑問を抱くような声で問い掛ける拳悟に彼女は弱々しい口調でその理由を呟く。

「あの牙を生やした男の秘密を知ってしまったからなの」

 それはいったいどんな秘密なのだろうか?柚加利がそれを目撃したのは、今から二ヶ月ほど前に遡る。


* ◇ *

 二ヶ月前のある日、柚加利は同じ学校の友人宅からの帰り道、たった一人で街路を歩いていた。夕暮れ近い街路の電信柱の下で、彼女は真っ黒な手帳のようなものを発見した。

 彼女はそれを拾い上げるなり、生徒手帳と書かれた表紙に視点を合わせる。するとそこには、鬼も恐れると言われる”夜叉実業高校”の文字が刻まれていたのだ。

 ゾクッと背筋に緊張が走った彼女。しかし、好奇心というか怖いもの見たさというか、彼女は衝動のままに生徒手帳のページをめくってしまった。

 一ページめくった表紙の裏面には持ち主であろう顔写真と名前。そしてどういうわけか、とってもキュートな表情をした猫のキャラクターのシールが貼付してあった。

(あれ、この猫ってたしか……)

 その愛らしい猫の正体とは、当時おたくと呼ばれるマニアに話題沸騰中のアニメに登場する、美少女に変身する能力を持った人気キャラクターなのであった。

 柚加利は手帳のページをめくりながら愕然とする。それはなぜかというと、いたるところに猫のシールが貼ってあり、さらにはハートマーク付きの手書きの似顔絵まで描かれていたからだ。

 それよりも一番驚いた理由こそ、生徒手帳の持ち主が”フクヤオニタロウ”という男子生徒だったことだろう。般若のような面構えとかわいい猫ちゃんの組み合わせは何とも不釣合いで滑稽であった。

「おい、いいか! どんなことがあっても見つけろよ!」

 その刹那、柚加利の鼓膜を打ち付ける男性の怒鳴り声が轟いた。彼女はビクッと肩を揺らせて身構えてしまった。

 数人の仲間を引き連れて、足音を鳴らしながら路地へ姿を現したリーゼント頭の男性。丈の短い学ランを着こなし、口から牙をちらつかせるその容姿は彼女が手にする生徒手帳の写真と瓜二つだった。

 きっと手帳を探しているのだろう、男子生徒は足元をチラチラと見渡している。仲間たちに発破をかけている雰囲気からして、とても尋常とは思えないほどに慌てていた。

「ちくしょ~、あれが誰かの手に渡っていたら、とんでもない失態を晒すことになるんだぞ!」

 柚加利は短い時間の中で熟考した。手にある生徒手帳を渡すべきか、それとも見て見ぬ振りをして足元に投げ捨てるべきか、はたまたトラブルに巻き込まれないようこのまま持ち去ってしまうべきか。

 悩んだ挙句、彼女の選んだ行動は生徒手帳を本人に返すことだった。その方が自分のためでもありまた男子生徒のためでもある、そう判断しての結論であった。

「あの……」

「あ~?」

 呼び掛けられた男子生徒は、牙のような八重歯を剥き出したまま柚加利のことを睨み付ける。威圧してくる眼光はあまりにも獰猛で、彼女を数歩後ずさりさせてしまうほどの迫力だ。

「も、もしかして、さ、探し物ってこれのことですか?」

「何だとぉ~?」

 差し出されたもの、それは紛れもなく血眼になって探していた自分自身の生徒手帳。それに気付いた彼は、ピクピクッと顔面が引きつって学ランで隠れる背中がじっとりと汗で滲んでいた。

 柚加利の手から生徒手帳を奪い取った彼。そして、顔中を嫌な汗でびっしょりと濡らしながら震え気味の声で問い掛けてくる。

「ま、まさか、手帳の中は見てないだろうな……?」

 柚加利の表情に緊張が走る――。猫のキャラクターのファンなんですねと正直に答えてしまったら、きっと恐ろしい目に遭うかも知れない。彼女の中にある第六感がそう教えてくれた。

「み、見てません」

 生徒手帳の中身には一切触れていないと白を切る柚加利。だが、彼女の戸惑いの目線は白々しいほどに虚空へと飛んでいた。

 そのせいか、それをまったく信用しようとしない男子生徒。本当のことを言うよう問い詰めながらじわりじわりと歩み寄り、いつしか彼女を電信柱の隅っこへ追い込んでいた。

「ちょ、ちょっと、わたしをどうする気なの!?」

「正直に答えたら見逃してやる。さぁ、言え。手帳の中を見たんだな?」

 それは誘導尋問と言えなくもなかった。札付きのワルと呼び声の高い、あの夜叉実業高校の不良たちに絡まれてしまっては、そう簡単に見逃してくれるとは思えない。

 とうとうこの圧迫感に耐え切れなくなった柚加利は、解放されたい一心から親指と人差し指を使って”ちょっとだけ”と正直に打ち明けた。

 生徒手帳にびっしり貼られた猫のシールを思い浮かべる彼女、やはり気まずかったのだろう苦笑気味に乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

「そうか。やっぱり、見ちまったのか……」

 フーッと小さな溜め息を一つ零し、血走っていた目を伏せる男子生徒。正直者がバカを見る……。よく耳にするそんなフレーズが、小刻みに震える彼の全身から漂っているような気がした。

「見られたからには、ただで帰すわけにはいかねーな」

「へ……?」

 柚加利の神経にさらなる緊張が走った――。背筋が凍り付き、みるみる血の気が引いていく。

 いつの間にか、男子生徒の顔つきがおぞましい般若へと変貌を遂げていた。飢えた肉食動物のごとく、牙を尖らせた口をバックリと開けて彼女に躊躇いなく襲い掛かっていく。

「うおぉぉ~!」

「ちょっと待ってよ! 約束が違うじゃないのよ!」

 電信柱を背にして追い詰められた柚加利は、決死の覚悟で横っ飛びして猛獣の攻撃を間一髪で回避した。一方の猛獣と化した男子生徒はというと、突進を止めることができずに顔面から電信柱に衝突してしまった。

 彼の仲間たちが一同に唖然としている隙を突き、彼女は不良たちの魔の手から逃走することに成功した。彼が愛らしい猫の隠れファンだったという秘密を抱えたままで……。


* ◇ *

「そんなわけで、あの男がしつこく、わたしの行方を捜していたみたいなの。ここなら絶対に見つからないと思っていたのに、はぁ、最悪……」

 夜叉実業高校には二度と近寄ったりせず、できる限り目立たないように行動していたという柚加利。学校から離れたこのアルバイト先ですらも、それを考慮して選択していたはずだったのだが。

 とはいえ、実際に居場所を突き止められたのは紛れもない事実。逃げ場を失ったことに落胆し、彼女はすっかりうなだれてしまっていた。

 一通りの経緯を聞いてみて、拳悟と勝の二人にちょっとした疑念が浮かんでいた。秘密を知られたにしては、あそこまで大暴れして彼女を拉致しようとする理由がいまいちピンと来ない。

 その辺について尋ねてみると、これはあくまでも友達からの情報だと前置きしつつ、彼女は声を潜めて自分なりの憶測を明らかにした。

「どうもね、その猫のキャラクターのファンたちが集う同好会があるみたいなの。これは予測だけど、そこへ無理やり連れ込もうとしているんだと思う」

 これも友達経由の噂らしいが、そこではファンであることが知られてしまった相手を強引にメンバーに誘い込まなければいけない、何ともはた迷惑な掟があるとのこと。

 あの強面の男性も熱狂的なファンだろうから、秘密を知ってしまった柚加利のことを暴力を振りかざしてでも仲間に引き込もうとしていると暗に予想できなくもない。

「なるほど、そういうことだったわけか」

 コクンコクンと頭を頷かせる拳悟と勝。すべての事情を把握したのはいいが、さて、これからどうするかと頭を悩ませてしまった。

 アルバイト仲間の柚加利を助けたい気持ちはあるが、何と言っても相手はあの夜叉実業高校の不良ども、敵に回すにはあまりにも分が悪すぎる。

 憔悴し切っている彼女の肩にソフトな感じで手を置く拳悟と勝の二人。彼らのドライな微笑みは、面倒な揉め事に関わりたくないとばかりにこの話をここで終わりにしたい気持ちが見え隠れしていた。

「あのさ、これから大変だろうけど、殺されたりしないだろうからさ」

「そうそう、変装しりゃ見つからないだろうし、せいぜいがんばりな」

 ここまで告白させられた挙句、バイバイと逃げられたのではそれこそ理不尽以外の何物でもない。柚加利は彼らの腕にしがみつき、相談に乗ってもらおうとひたすら泣きつく。

 拳悟と勝はあからさまに不快感を示すも、彼女の半泣き状態の顔を見てしまうと男子としての正義感だろうか、それともよこしまな下心なのか、とりあえず相談に乗るまでは了承するのであった。

「とはいってもさ~、どう解決したらいいのか正直なところよくわからんのだ」

 それから数分ほど話し合いは続いたが、拳悟と勝の口から漏れるのはあえて危ない橋を渡りたくない本音から、極力トラブルを避けたいという引っ込み思案な弱音ばかり。

 喧嘩は慣れっこの彼ら二人でも夜叉実業高校の風紀のずさんさ、さらに在学生の乱暴ぶりには一目置いているらしく、見返りといった動機付けになる何かしらのご褒美を求めているようだ。

 すべてを打ち明けた柚加利にとっては彼ら二人が最後の砦。もう藁にもすがる思いで、土下座する気持ちで助けを求めるしかなかった。

「ねぇ、二人とも、わたしを見捨てないでよ。もし、助けてくれるなら何でも言うこと聞くから!」

 その瞬間、ピクリと耳が反応した拳悟と勝。何でもいうことを聞くという大胆不敵な申し出に、これ見よがしに卑しく口元を緩める。

「ほ~う、それはいいこと聞いちゃった」

「ふ~ん、何でも聞いてくれるんだぁ?」

 柚加利はブルッと寒気を感じて表情が強張った。前言撤回しようにも口は災いの元、後悔先に立たずというやつである。

 そういうことならばと、拳悟が人差し指を突き立ててボディーガードを請け負う代わりの交換条件を提示する。

「俺たち二人それぞれと、夜のデートに付き合ってくれよ」

「は? 夜のデート?」

 デート、それが男女交友を示しているのは十七歳の彼女であれば百も承知のこと。それに”夜”という修飾的な文字が加わるとまたニュアンスも変わってくる。

 男女が寄り添って街を歩き、遊園地へ行ったり、お買い物したり、カフェでまったり過ごしたりするデートではなく、いわゆるちょっぴりムーディーな大人のデート、それがにやけ顔の少年たちのご要望なのであった。

 それらしい意味合いを感じ取った柚加利は、恥じらいの赤色をその表情に映しながら冗談じゃない!と声を尖らせて捲くし立てる。

「出会って間もないあなたたちと、そんなことできるわけないじゃない! 女の子を甘く見ないでよ!」

 可憐なる乙女は汗びっしょりで憤りを露にした。ちなみに彼女はこれまで彼氏と呼ばれる男性がいなかったわけではないが、それはそれは高校生らしい清い交際だったという。

 柚加利の拒否権の発動、それはすなわち交渉決裂。拳悟と勝は残念そうなポーズをしながら、さようならと言わんばかりに彼女の傍から去っていこうとする。

「あ、そう。キミがお望みじゃなきゃ仕方がないな。またの機会に声を掛けてちょうだいな」

「自分の身は自分で守るのが常識だもんな。まぁ、せいぜい、がんばりたまえ、ユカリくん」

 柚加利の真っ赤な顔色が絶望にも似た青色に染まっていく。苦渋の決断を迫られたが、逃げ道を失っている彼女にとって交換条件を飲むことを迷っている余裕などないに等しい。

 泣きじゃくりながら拳悟と勝のご要望に応えることを決意した彼女。強面の男性に無理やり洗脳されるよりも、そちらの方がまだマシと判断したのだろう。

「よっしゃあ、交渉成立じゃあ! これは楽しくなってきたぜっ」

「汚い言い方だけど、あなたたちって、ど畜生よね……」

 そんなわけで大人のデートを条件とした、柚加利のボディガードを正式に請け負うことになった拳悟と勝の二人。もちろん、ちゃんと彼女を助けてくれたらという前提ではあるが。


* ◇ *

 ここは大衆食堂”えびすや”の店内。

 ごちゃごちゃしている中で、後片付けに追われる従業員たちの姿ばかりが目立ちお客らしき人の姿はもうそこにはなかった。

 拳悟と勝、そして柚加利は店内に戻ってくるなり警察官から事情聴取を受けたが、口合わせをしていたのか、加害者の名前やそれを特定するような経緯までは公にしなかった。

 柚加利本人にしたら、正直に答えるとこのアルバイト先から解雇されてしまう公算が大きい。後ろめたさを引きずってしまうがそれも致し方のないことだった。

 警察官の聴取も終わって殺伐とした雰囲気がようやく去った店内。すっかり覇気を失くしている店長は、アルバイトの由美の勧めでテーブル席へと腰掛けていた。

 パンチを食らった顎に湿布を貼っている彼。その本音を覗いてみると、怪我の痛みよりも破壊されてしまった店内の修繕費用の方が痛いといったところか。

 頭を抱える店長に気安く声を掛けるのは、そこへぶらりと近寄ってきた拳悟と勝の二人だ。彼らのすぐ後ろには柚加利の姿もある。

「店長。ご無事で何より。お元気ですか?」

「いやー、このたびは偉い目に遇いましたな」

「元気なわけないだろっ! もう少しはデリカシーを持って物を言え!」

 虫の居所が悪いのだろう、店長はあからさまに仏頂面を突っ返す。その睨み付ける目線は、拳悟たちの後ろにいる柚加利へと向けられていた。

「オオノくん。これはいったいどういうことだ!? いくら粗相があったとはいえ、ここまで暴れるなんてどういう連中なんだ、彼らは?」

 店長から質問攻めにあっても、柚加利は伏し目がちに頭を下げて申し訳ございませんを繰り返すしかない。床に散らばる食器の破片が彼女の胸をますます苦しめてしまう。

「わたし、一生懸命に働きますから、アルバイト料をお店の弁償代に回してください」

「ああ、当然そうさせてもらうよ。お詫びの気持ちがあるなら食器の後片付けを手伝ってくれたまえ」

 どうにか解雇という憂き目を免れた柚加利。ホッと胸を撫で下ろし、表情にほんのりと明るさが戻ってきた彼女は由美と一緒になって残骸の破片を拾い始める。

「ユカリさん、元気出していこうね」

「ユミちゃん、どうもありがとう」

 アルバイト女子学生二人がせっせと片付けに勤しむ中、拳悟と勝はというと積極的にお手伝いもせずに店長の傍に突っ立ったままだ。

 店長は不機嫌そうに眉根を寄せて苦言を呈した。アルバイト学生なら、みんなと一緒になってしっかり仕事をこなすようにと。ところが、拳悟たち二人はそんなことよりも……と店長に耳よりな提案を持ち掛ける。

「店長、店長。ここは一つ相談なんですが、またあの連中がやってきたら俺たちが退治してやってもいいですよ」

「俺たちこう見えても、そこそこできる子なんですよ。あの乱暴者をやっつけることができると思うんですよね」

 ピクリと耳が機敏に反応してしまう店長。いつ何時ここへ襲来するかわからないモンスターのことを考えると、拳悟たちの物騒な提案もまんざら無碍にできない彼であった。

 店長は左右に頭を振って周囲の従業員たちの様子を窺う。そして、拳悟と勝を呼び寄せるなり誰にも聞こえないような小声で耳打ちする。

「それは、勝てる自信があるということか?」

「勝てる自信がなきゃ、こんな大見得切ったりしませんよ」

 他の人に感づかれないよう、胸を拳で優しく叩いて余裕を覗かせる拳悟。隣にいる勝もミラーグラス越しの目を鋭くして、大船に乗ったつもりで任せてほしいとキッパリそう言い切った。

 アルバイト学生の頼もしさに破顔し、店長は握手しながら感心の眼差しを送る。しかし、何の見返りもなくこのやんちゃな拳悟と勝が率先的に協力するわけはない。

「成功報酬はアルバイト料の二倍で手を打ちますよ、店長♪」

「な、何だと?」

 従業員から予期せぬ発言が飛び出し、店長は目をぱちくりさせて素っ頓狂な声を上げてしまった。まさか、金銭を要求されるなんて思ってもみなかったことだろう。

 これには不快感を示して、えげつない要求に一切応じようとしない店長。その一方、またとないチャンスを逃すまいと拳悟と勝も組合団体のごとく金銭交渉を繰り広げようとする。

 輪を作って論議を始める三人は指を折ったり伸ばしたりして、それぞれの主張を押し通そうとした。そんな不可解な様子を従業員たちが不思議そうな顔で見つめていたことは言うまでもない。

 それから数分後、白熱した攻防の末ようやく譲歩案がまとまった。店長がわずかに歩み寄りを見せる格好となり、拳悟と勝は給料一・五倍の臨時ボーナスを勝ち取ることに成功したのだ。

 あの不良どもを成敗した報酬が臨時ボーナスプラス柚加利との夜デートとなれば俄然やる気が出るというもの。鼻息を荒くしてニンマリと笑みを浮かべる彼らなのであった。

「とにかく、このことはあくまでも内密に頼むぞ」

「わかってますって、ご心配なく」

「あとは、俺たちに任しといてくださいよ」

 本当にこんな二人組に頼んで正解だったのかと店長は困惑しながら自問自答してしまうが、愛するお店を守るために手段を選んでいられないのが本音だったようだ。

 こうして、柚加利のボディーガードのみならず大衆食堂の警備員も担うことになった拳悟と勝の二人。この一件からすっかり蚊帳の外なのは、主人公ながらも今回のお話ではちょっぴり影の薄い由美一人だけであった。

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