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不倫盟約  作者: 鍵香美氏
第5章 動乱編
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第50話 思考と絶望

   ◇眠り前の思考◇

 土田と話したあと俺は、自室へと戻ってきてある問題について思考を巡らせていた。

 それはもちろん、俺達が行っていた事件の調査についてだ。

 土田との会話で俺達が知りたかった情報は手に入ってしまったが、事件の実行犯を見つけることは、来田の情報を集めるためにも必要なことだ。


 本来の目的は達成したのなら、華音を巻き込まないためにも俺が単独で動くべきだろう。


 しかしそれならば、田嶋が俺に華音を同行させた意味がなくなってしまう気もする。

 その意味は何なのか分からないが、田嶋に何かしらの企みがあるのならば、改めて話し合う必要があるだろう。


 でもまあひとまずは、今日の深夜の呼び出しに集中するのが良いだろうな。

 これは1人で解決できなくはない問題だし、さっきの問題の結論が不透明である限り、華音には変に連絡しない方がいいだろうし。

 別に今日直接連絡してもいいんだが、良くも悪くもさっきの土田のせいで、軽率に会話することの危険性を理解させられてしまったため、中々その行動を行うには勇気がいる。


 それより重大な問題は、今日俺を呼び出した人物について、そしてその人物をどう対処するかだ。

 土田曰く、来田はマフィアとの関わりでアメリカにいるらしいため、まず来田本人であることは考えにくい。

 となってくると、来る人物は本当に想像ができなくなってくる。

 でも来田商事株式会社のパソコンからデータがでてきた時点で、来田側勢力の人物であることはほぼ確定なんだけどな。

 まあこれ以上は考えても無駄か…。

 そう思った俺はある程度の護身用具を用意して、その後はタイマーを午後7時にセットしてから、ひとまず仮眠を取ることにした。



   ◇眠り後の絶望◇


 ゴーン、ゴーン♪ 


 俺のスマートフォンからの独特な重低音で、俺は目を覚ました。

 時間は7時30分、どうやらスヌーズ設定をしてから寝るという行為を何回かしてしまったらしい。

 社会人あるまじき行動だな。

 そう思いながらも俺は、画面のストップに手を動かし、大音量のアラーム音を切った。

 切ったついでに通知を見てみると、華音から7通ぐらいのメールが送られてきていた。

 俺は不思議に思い、恐る恐るメールを確認してみる。

 

 ーー牧野さん、今から夜ご飯一緒に食べない?ーー


 ーー私は丼系が食べたいかな。カツ丼を食べて、今日の勝舞に勝つっ!なんてねーー


 ーー返事がないけどどうかした?もしかして何かあった?ーー


 ーーどうしたの?ーー


 ーーねぇ?ーー


 ーーもしかして私のこと無視してるの?ーー


 ーー今から部屋に行くねーー


 メールはここで途切れていた。

 特に面白くもないダジャレもそうだが、本人は意図していないであろう、メンヘラムーブを醸し出しているこのメールに、俺は少し戸惑ってしまった。

 俺はひとまず落ち着いて、メールに返信しようとした。

 しかし俺が言葉を打ち込む前に、


コンコンコンッ


と壁を叩く音が聞こえてきた。

 メールの内容的におそらく華音だろう。

 意図せぬメールスルーで気まずいと思っていたのに、流れるように俺の軌道修正を阻止してくる現実。

 俺は思わず、

 

『あ、これ終わったわ』


と心の中でそう力無く呟いた。

 






 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

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― 新着の感想 ―
冒頭からここまで読ませていただきました! 「不倫盟約」というタイトルから、勝手に不倫が関わる恋愛ものなのかな?と思って第1話を読んだら、冒頭で妻が殺されるサスペンスだったことに驚きました。あらすじを…
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