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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第七章 スアレ防衛戦
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第84話 アレク&エマVS魔龍

 

 俺とエマは魔力を解放した。


『属性武装:雷』

『属性武装:凪(風)』


 俺は雷を纏い、エマは風を纏った。モルディオに滞在している間にエマは凪を会得していた。


「凪使えたんじゃねーか」

「とっておきはギリギリまで取っておくものでしょ?」

「その前に死んだら意味無いけどな」

「そーゆー事言わないの!」


 俺とエマは会話しながら魔龍に一瞬で肉薄した。


「『轟雷龍斬』!!」

「超越級風魔術『暴嵐の刃(ストーム・ブレード)』!!」


 俺は左腕にエマは右腕にそれぞれ渾身の一撃を放つ。しかし、


「硬ぇ…!!」

「超越級でも、両断できない…」


 魔龍の腕を切り落とす事が叶わず、魔龍は両腕を振り上げ俺達を弾いた。


「うおっ」


 空中に投げ出された俺とエマは無防備になる。魔龍はその隙を逃さない。


「ブレスだ!!魔術で相殺しろ!!」

「そんな事言ったって!体勢が…!!」


 エマは弾き飛ばされた勢いで魔龍に背を向けてしまっている。このままじゃ直撃だ。


「くそっ…!『ホーリーチェイン』!!」

「わっ!!」


 俺の手から放出した光の鎖がエマを縛った。それを俺は引っ張り、エマを抱き寄せた。

 魔龍のブレスが俺達を襲う。


「があぁ…!!耐えろぉ…!」

「アレク!!」


 俺はエマを抱きしめブレスから庇う形を取る。エマは無傷だが、俺は背中にブレスの直撃を受けた。


「アレク…!ごめんなさい…治癒魔術を…」

『エクストラ・ヒール』


 エマの治癒魔術で焼け爛れた背中は綺麗に戻った。せっかくのマントが使い物にならなくなってしまった。


「大丈夫…?」

「ああ、直前に風魔術でブレスを受け流したから重症ではないよ。とんでもない威力だな。受け流しきれなかった…」

「そうだね…全ての攻撃が即死になり得る…。正に別次元のモンスター」

「知能がある分厄介だ。こいつらも学ぶからな」


 魔龍は追撃を仕掛けずこちらの様子を伺っている。動きを観察しているのだろう。


「そうか…ブレスは魔力攻撃だ…なら、あれが有効だな」


 俺がブツブツと考え込んでいるとエマが覗き込んできた。


「どうする?」

「そうだな…弾かれはしたが、しっかり刃は通った、ダメージは与えられる。あらゆる手を尽くそう」


 俺はそう言うと自分の周囲に火の玉を浮かべた。


「なるほどね!じゃ、私は限界まで圧縮してみる!」


 エマは聖属性の魔力を圧縮し始めた。


「ガアァァアアア!!」


 エマが大量の魔力を圧縮し始めたのを警戒してか、魔龍は叫びエマに向かってブレスを放った。

 圧縮中は好きだらけだ。だが、


「やらせるかよ!!」

『リフレクト』


 エマの目の前に現れた光の壁がブレスを反射し、魔龍にカウンターを食らわした。


「ブレスも魔力だからな。立派な魔術攻撃だ」


 自身のブレスの威力に魔龍はよろめいた。


「ふぅ…少しはダメージが入ったみたいだな」

「アレク!圧縮できたよ!」

「こっちに撃て!!」

「わかった!!」

「超級聖魔術『ホーリー・オーバーレイ』!!」


 エマは俺に向かって限界まで圧縮された光線を放った。


『リフレクト』


 俺は光線をリフレクトで反射した。威力が増した光線は魔龍に向かう。

 変則的な攻撃に対応できず、光線は魔龍の肩を貫いた。


「ガアァァアアア!!」


 魔龍は叫び翼を大きく広げた。


「うおっ…!」

「風圧がすごい…!」


 そして、翼を羽ばたかせ上空へ。


「おい!!ズルいぞ!!飛ぶなんて!!」

「アレク…そんな子供みたいなこと言わないでよ…」

「まだ11歳だからな」

「もう…うわっ!!ブレス!?」


 魔龍は俺とエマの頭上をぐるぐると周り始め、周りながらブレスを放ってきた。

 動かれてるとリフレクトで当てにくい…。考えたな。


「ズルいよ!!一方的じゃん!!」

「エマ…」


 俺の次はエマが駄々をこねだした。


「さて、どうするか…」


 延々と降り注ぐブレスを躱しながら考える。


「ブレス避けるのは他愛もないし、このまま魔力尽きるの待ったら?」

「なるほどなぁ、じゃ、1週間ずっと避け続けないとな」

「え!?1週間!?」


 ドラゴンの魔力量は無尽蔵かと思える程らしい。1週間ずっとブレスを放出できるとか。


「エマ、俺が数秒あいつの動きを止めるからその隙に撃ち落としてくれ」

「わかった!」


 エマは再び魔力の圧縮を始めた。

 その様子に気付いた魔龍はブレスをエマに集中した。


『リフレクト』

「ほらほら!もっと撃てよ!」


 降り注ぐブレスを片っ端からリフレクトで反射した。当たらなくていい、今はエマを守るのが最優先だ。


「アレク!いいよ!」

「数秒しか持たないぞ!」

「任せて!」


『ホーリー・チェイン』


 俺の手から放たれる無数の光の鎖は魔龍の体を覆いキツく縛った。


「ガアァァアアア!!」

「ジタバタすんなよぉ。馬鹿力がぁ…!今だ!!」

「『ホーリー・オーバーレイ』!!」


 エマが放った光線は見事に翼を撃ち抜いた。魔龍は上空でバランスを崩し、地面に叩き落ちた。


「翼は腕より柔らかいはずだ!切り落とすぞ!!」

「わかった!!」


「我流『龍牙一閃:雷』」

「超越級風魔術『暴嵐の刃(ストーム・ブレード)』」


「ギャァァァァァアア!!!!!」


 俺とエマの攻撃は魔龍の両翼を一刀両断した。


「これで空は飛べねぇぞクソトカゲ」

「アレク口悪いよ…」


 魔龍にダメージは結構入っているはずだ。だが、まだピンピンしてやがる…。


「こちとら魔力に限界があんのに…」

「まだまだ魔龍は元気だね…」


 魔龍はしばらく、動きを止め、こちらの様子を伺う。何か考えているのか…?

 すると、魔龍は俺達に突進してきた。

 ブレスも封じ、空も飛べない。なら、近接戦闘するしかないって訳だ。


「強化魔術限界まで上げろよ!」

「わかってる!」


 俺とエマは限界まで強化魔術を引き上げ。俺は雷をエマは風を纏い直した。


 俺とエマは魔龍に肉薄し、攻撃を繰り出す。ドンッと凄まじい衝撃が起こる。


「やっぱ硬ぇな…」

「ダメージ与えてる気になれない」


 俺とエマの攻撃は魔龍の両手で受け止められた。ギリギリと音がなり、刃が通らない。エマの拳もまるで鋼鉄を相手にしているような衝撃があった。


 一旦距離を置き体勢を立て直す。しかし、


「なっ…」

「はやっ…」


 距離を置いたはずが一瞬で間を詰められた。魔龍の動きが数段速くなっている。


「がはっ…!!」

「ぐっ…!!」


 魔龍の拳をもろに受け、俺とエマは後方へ殴り飛ばされた。


「アレクサンダー君!エマさん!」


 ルイーダ達がいる最終防衛ラインまで飛ばされてしまったようだ。


「超級治癒魔術『エリア・ハイヒール』」

「ルイーダ先生…ありがとうございます…」


 ルイーダの範囲治癒魔術で俺とエマは回復した。


「あなた達が希望よ…。お願いね…!」

「任せてください」


 俺とエマは再度魔龍の元まで戻った。


 ◆◆◆


「な、なんだあれ…たった2人で魔龍と渡り合ってる…」


 戦闘の様子を見ていたブエイムは唖然としていた。


「それに、アレクサンダーのあれはなんだ…?雷…?なんでそんな魔術が使えるんだよ…マ、マイズさんあれ真似できますか…?マイズさん?」


 ブエイムの問いかけはマイズの耳には入っていなかった。


「素晴らしい…アレクサンダー君、エマさん…あなた達は私の想像以上です…。新たな元素を開発したのでしょう…。魔剣士以外のアレクサンダー君の才能…。そして、圧倒的な魔術のセンスを持ったエマさん…。やはり、生かしておいて正解でした…。素晴らしい…」


 マイズは目を見開きアレクサンダーとエマの戦いに魅入っていた。


「さぁ…あなた達の真価をもっと私に見せてください…!」

「マ、マイズさん?」

「おっと、失礼。少々取り乱しました。それで、なんですか?ブエイム君」

「いや、マイスさんはあの雷魔術真似できるかなーって思いまして」


 ブエイムの質問にマイズは顎に手を当て考えた。


「…無理ですね」

「無理なんですか?」

「はい、新しい元素というのは発生する根本を考えなければなりません。私は雷が発生する根本なんて検討も付きません。おそらく彼は人とは違う変わった思考回路をしているのでしょう」

「へー、マイズさんで真似出来ないなら誰にもできませんね」

「ええ、あの魔術は彼だけの魔術でしょう」


 そして、マイズは魔龍に目を向ける。


「ふむ。魔龍の力が増しているようですが。ブエイム君、何かしましたか?」

「え?俺は何もしてませんよ?」


 魔龍の様子を見てマイズは思案する。


「魔龍もまた戦いながら成長しているのでしょうか。これは、どうなるかわかりませんね」


 そう言うとマイズは静観に戻った。


 ◆◆◆


「はぁ…はぁ…段々スピードが上がってきてやがる…」

「…はぁ…そうだね…魔龍も戦いながら成長しているみたい…」


 雷を纏っていてもやっとだ。エマの息が上がってきている。対する魔龍はまだ余裕がありそうだ。確実にダメージは蓄積しているが、それを思わせない動きっぷりだ。


「このままグダグダしていると俺達が不利だ」

「そうだね…」


 他の龍やパンドラの事を考えて全ては出し切らなかったが、これはどうしようもない。この魔龍を倒さないと結果は俺達の負けで終わってしまう。

 なら、今ここで全てを出し切る方がいい。


「エマ、この魔龍はなんとしても倒さないといけない。出し切ろう」

「うん、そうだね。こればっかりは仕方ない。後のことはカルマ達に任せよう」


「「全力だ」」


 2人の瞳に光が輝く。


第84話ご閲覧いただきありがとうございます!


次回をお楽しみに!

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