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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第六章 モルディオ帝国
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第73話 純白のロングソード


あれから、1ヶ月が経った。


俺はジークに剣術を教えたり、シャルに魔術を教えたり、リラをからかったり。なんとも平和な毎日を過ごしている。


エマは相変わらずアレイナの所で魔術を教えてもらっている。

アレイナも風系統が得意なようで、エマに嬉々として教えている。エマも確実にレベルアップしている。


カルマはジークに鷹剣流の稽古をつけたり、冒険者学校の剣術訓練場に入り浸っている。

同じ超級のライナーと剣の腕を磨いているようだ。なんか妬ける…

ちなみに、カルマはまだ超級だ。鬼纏:迅はまだ未完成のようで、さすがに超越級にならないと完璧には扱えないらしい。


ソフィアはよくシャルと一緒にいる所を見る。王女様同士気が合うのかな?

ソフィアもよく剣術訓練場に行っているようだ。


俺は別に鍛錬をサボっている訳じゃない。俺はやってみたいことがあるから、色々勉強中だ。アレイナからも魔術について色々教えてもらっている。


「…あー…暇だ…」


今日は本当に暇だ。ジークは陛下と外出、シャルは冒険者学校、リラはラングと勉強中だ。


「なにボーッとしているの?」

「アレクさんがジッとしているなんて…」


俺が居間でくつろいでいると、エマとソフィアが入ってきた、


「暇なんだよ…なんもすることがない、エマとソフィアはなんか予定あるのか?」

「私は、今からアレイナの所で魔術教えてもらうよ!アレクも一緒に来る?」

「いや、やめとくよ。アレイナと居ると時々頭痛がするんだ」


アレイナと会う度に頭痛がして誰かの姿と重なる。

誰かはわからない。ただ、懐かしく、寂しく、少し悲しい気分になる。


「アレクに嫌われてるかもってアレイナ気にしてるんだよ?」

「俺じゃどうしようも無いんだよ」


ソフィアを見ると、顎に手を当てなにかを考えている。

そして、何か閃いたようにパァっと顔が明るくなった。


「アレクさん!私とデートしてくださいませんか?」

「デ、デ、デート!?」


エマが横にいるのにとんでもないこと言い出したな。

当のエマも驚いている。


「デートって言ったって、どこいくんだ?」

「えー!アレク行くの?いいなぁ、私明日休みにしようかなぁ」

「あのな、ソフィアのデートはクエストだと思うぞ?」

「そうなの?」


エマはキョトンとした顔でソフィアを見た。


「はい!ロレンスの古城で少しお手伝いをお願いしたくて!」

「そういうことね!頑張ってね!」


いいのか…エマの判断基準はよくわからん。

エマはそのままアレイナの元へ行った。


「んで、なんでロレンスの古城なんだ?あそこならソフィア1人でも対応できるだろ」

「そうですが、面白い話を聞きまして」

「面白い話?」


ソフィアがそんな話を持ってくるなんて珍しいな。


「はい、なんでもあの古城には地下室があるという話です」

「おお、地下室か」


俺が前に行った時は地下は確認できなかったな。

あまりゆっくり探索をしていなかったが、地下の階段くらいわかりそうだが、隠してあるのか…?


「地下室の情報は少なく、未知の領域なので、アレクさんがいれば不測の事態にも対応できるかと思いまして。それに、お宝が眠っているかもしれませんし!」

「お宝…!いいな!冒険者っぽい!」

「そうですよね!ワクワクします!」


未知の地下室か…どんな空間になっているのやら。楽しみだ。


俺とソフィアは特異エリア:ロレンスの古城に向かった。


◇◇◇


〜ロレンスの古城〜


リポップした門番のスケルトンキングはソフィアがあっという間に倒した。

今回は称号持ちじゃなかったみたいだ。

称号持ちってレア個体なのかな?


「俺が来た時は、ゆっくり探索出来なかったからなぁ…改めて見るとしっかりした城だな」

「はい、ロレンスはモルディオと敵対していた国の1つでした。初代皇帝がロレンスを攻略後、城の最上階にある謁見の間に突如特異点が現れ、城周辺を含んだ一帯が特異エリアとなりました」

「なるほどな、戦争敗北の矢先特異点が現れ、出現したモンスターによって城の人間は皆殺しと。だから、地下室の存在は知られていないのか」


これは、お宝にも期待できそうだ。


俺とソフィアは正面玄関を開け、城内部に入った。

モンスターが彷徨いているが大した問題じゃない。


俺は魔力を高め、手のひらに圧縮する。

そして、その魔力を粒子状にして、1階全体にばら蒔いてた。

属性は着いてないただの魔力だ。


「なにをしたのですか?」


部屋全体の気配が変わったことに気付いたソフィアが聞いてきた。


「地下室の入り口を探してくるんだ。ソフィアは見えないだろうが、魔力を粒子状に飛ばして、空気の流れを読んでる」

「なるほど、入り口がある場所は通常とは違う動きをするってことですか」


俺とソフィアは彷徨くアンデットやスケルトンを倒しながら探索を続けた。


しばらくして、


「ここか…」

「この石像ですか?」

「ああ、石像の下に少し隙間ができてる。空気が通っているから、おそらくここが地下の入口だろう」

「本当にありましたね…」

「しかし、どうやって…壊すか」

「ちょ…アレクさん!?」


俺は上級岩魔術『ロック・スピア』で破壊を試みた。

しかし、


「なっ…硬ってぇ防御魔術だ…」

「アレクさん!!ここは亡きロレンスの城ですよ!?重要文化遺産です!破壊活動はやめてください!」

「わ、わかったよ…」


特異エリアになってるんだから、重要文化遺産どころじゃないと思うが…


だが、どうなってるんだこれは。

魔術をぶつけたら魔法陣が発動し、強固な防御魔術が展開される。

簡単には入れてくれないか…


「おそらく、なにか仕掛けがあるんだろ。探してみよう」

「はい!」


ギミックを解いて、先に待つお宝を目指す…

冒険者っぽくていいね!


正面玄関入ってすぐのロビー。

正面の大きな階段の手前には5つの石像がある。

1つの石像を中心に、囲うように4つの石像が置かれている。


亀の石像、虎の石像、鳥の石像、龍の石像、そして中心には、鹿のような生き物の石像。

そして、その石像の付近には引こづられた跡が残っている。

これがギミックだろうか。


「アレクさん、あれを」


そう言ってソフィアが指さしたのは、正面階段を登った突き当たりに飾られている1枚の絵画だった。


『北側に亀、南側に鳥、西側に虎、東側に龍、中央に鹿のような生き物』の絵が描かれていた。



「ゲンブ、スザク、ビャッコ、セイリュウ、そして、中央の鹿のような生き物は、キリンか…」

「どうやら、幻の天滅級モンスター『五幻獣(ごげんじゅう)』の石像のようですね」


五幻獣…天滅級モンスターと言われているが、討伐対象ではない。

五幻獣は知能が高く、かつて人類とも交流があったと言われている。

その力を絶大で、人類に対して牙を向いた時、五幻獣は天滅級モンスターに認定される。

現在、その五幻獣の所在は掴めたいない。

ゆえに『幻の天滅級モンスター』なのだ。


「五幻獣の中でもゲンブと特に交流が深かったのがロレンスです。信仰も含めた意味でこういう仕掛けにしたのでしょう」

「それにしてもだ、安直すぎないか?」

「確かに、簡単すぎますね」


怪しみながらも石像を各位置に戻した。

すると、


〔ガコン…ゴゴゴゴッ…〕

「いや、開いちゃったよ」

「開いちゃいましたね…」


ガッカリだ…もっと2、3日かけて難問を解くようなそんなギミックが良かった…

簡単すぎて、逆に誰も気付かなかったのか。


俺とソフィアは肩を落として、地下室に入った。


「こんな簡単な仕掛けだから、お宝は期待できないだろうな」

「そうですね…さっきからアンデットばっかりですし、大したモンスターもいないです」

「しかし、変わった創りだな…」


螺旋階段を降りると、階段を中心にグルっと円形に廊下ができている。

1周回ってみると、5つの部屋がある。

それぞれ、北西、南西、南東、北東、北、に位置している。


俺とソフィアは、1部屋ずつ隈無く探索したが、めぼしいものはなかった。


「ここが、最後の部屋ですね」

「そうだな」


俺達は北に位置する部屋に入った。


「これは…」

「何かの祭壇でしょうか…?」


部屋は閑散としいるが、奥の中央には1段上がった石畳がある。

俺達はは近付き、その周りを見てみる。


「ここに何かが刺さっていたのか?」

「剣の刺し跡ですね」


石畳の中央には剣が刺さった跡があった。


ソフィアが石畳に上がり、剣の刺し跡をなぞった。


「うわっ!なんだ!?」

「眩しい…!!」


瞬間、辺り一面が光り輝き部屋全体を光で覆った。


「なんだったんだ?」

「なんでしょうか…」


特に何も起こらなかった。

すると、俺の魔導袋に違和感を感じた。


「なんだ…?これは、シャルから貰った…」


違和感の正体はシャルから貰った純白のロングソードだった。

魔導袋から取り出し、柄を握る。


〔バチィ!!〕

「痛ってぇ!!!」


柄を握ると物凄い魔力で弾かれた。

思わずロングソードを手放す。

俺の手は焼け爛れてしまった。


「なんだこれ…『ハイ・ヒール』」

「アレクさん!?どうされました?…その剣は…」

「ああ、シャルから貰ったロングソードだ。この部屋に入って、違和感を感じたから取り出したんだが…魔力に弾かれた」

「剣が魔力ですか…?」


純白のロングソードは薄く光を帯びている。

どこか懐かしい魔力だが…。まさか…持ち主を選んでるのか?


「魔剣…?」

「ええ!?この剣が魔剣なのですか!?でも、シャルさんは魔力を使ってませんでしたし、普通に握っていましたよ?」


そこが謎だ。

イグナスから聞いた話だが、魔剣は持ち主を選び、その者と契約を交わし持ち主は魔剣の魔力が使用可能となるらしい。


「考えられるのは、この剣がまだ未完成だったってことぐらいだな」

「未完成?」

「ああ、ここの部屋に来た時になんらかの力で完成したのかもな。魔剣の性質上、魔剣の意思と親和性が高い者が持ち主に選ばれるらしい」

「魔剣に意思があるのですか?」

「らしいぞ。魔剣に選ばれた時に意思疎通ができるようになる。そして、魔剣の真名を教えられる、そして、その真名を口にした時魔剣との契約が完了し、意思は消え、持ち主と同化するそうだ」


しかし、このタイミングで魔剣が覚醒したってことは、俺かソフィアに関係があるのだろうか。

それか、この部屋に関係があるのか。はたまた、どちらも必要だったのか。


「ソフィア、この剣握ってみろ」

「えぇ…アレクさんの惨状を見た後だと気が引けます…」

「大丈夫だ。すぐ治癒魔術かけてやるから」

「は、はい…」


ソフィアは恐る恐る剣を握った。

すると、


「握れちゃいました…」

「やっぱり、魔剣に選ばれたのはソフィアのようだ」

「でも、意思疎通はできませんよ?」

「まだ、魔剣を扱う技量に達してないってことだろう。十分になれば魔剣の方から接触してくるはずだ」

「でも…世界に10本しかない魔剣ですよ…?それが私にだなんて…」


実感がないのも無理はない。

今確認されている魔剣は、俺の知る限り

イグナスの聖剣とシリウスの火の魔剣だけだ。


「もし、魔剣じゃなかったとしても、これはオリハルコンでできている。ミスリルの剣よりかは良いだろ」


「オリハルコンですか!?魔剣かもしれない…あまり実感がありませんね…。もしかしたら思い違いかもしれません。アレクさん、握ってみて貰えますか?」


なんでそうなるんだよ…

痛いんだよ、あれ。

ソフィアは不安そうな顔をしている。まだ確証を持てないのか。

仕方ない。


〔バチィ!!〕

「痛ってぇ!!!もういいだろ!これはお前のだ!」

「あ、は、はい!ごめんなさい!」


案の定、魔剣は俺を拒絶した。

半ギレになりながら、剣をソフィアに返した。


「しかし…この剣はシャルがアレクさんに贈った物です…私が頂くのは…」

「頂くも何もソフィアにしか使えないんだ。仕方ないだろ」

「ですが…」


ソフィアはシャルと仲がいい分、気が引けるのだろう。


「なら、その剣はソフィアが"預かって"いてくれ。帰ったらシャルに相談するから」

「はい…それなら…」

「じゃ、もう戻るか」

「はい!」


俺とソフィアはロレンスの古城を後にした。



アレクサンダー達は気付いていなかった。

台座の正面に埃かぶったプレートが貼ってあったことを。

そのプレートには

『未完の魔剣〜この剣に、魔力が宿りし時、魔剣として覚醒する〜』と書かれてあった。


アレクサンダーの予想は合っていた。

5つの石像と5つの地下室の位置を繋げると大きな魔法陣が完成する。

そして、魔剣に認められた者、つまりソフィアが台座に上がり未完の魔剣があった場所に現れた。その未完の魔剣はアレクの魔導袋の中で覚醒し、ソフィアと繋がりを得たのだ。


部屋が光で満ちたのは、魔法陣が発動しソフィアを魔剣の所持者として認められたからだ。


魔剣の意思とは、ソフィアが選ばれた理由とは。

それが語られるのはまだ先の話である。


◇◇◇


俺とソフィアは王城に戻った。

居間ではちょうどシャルがくつろいでいた。


「シャル、この剣握ってくれ」

「これは、私が差し上げたロングソードでは…?」

「返す訳じゃない、握って欲しいだけだ」


ソフィアはシャルにロングソードを出した。

そう言うとシャルは渋々剣の柄を握った。


〔バチィ!!〕

「きゃ!!い、痛い…。これは…?」

「この剣はどうやら魔剣だったようだ」

「魔剣ですか…?しかし、私が使っていた時は」

「今日、なんらかの理由で魔剣が覚醒したんだろ」


俺はシャルに今日の出来事を話した。シャルは驚いたように、真剣に話を聞いていた。


「なるほど…確かに、この剣はお父様が一目惚れして冒険者から言い値で買い取ったそうです。その冒険者はロレンスの古城での戦利品と言っていたみたいです」

「やっぱりな、あの台座に刺さっていたのはこの剣だったんだ。それで、魔剣に選ばれたのソフィアだったんだ」


そう言うとシャルはパァっと顔を明るくさせた。


「本当ですか!?それはよかった!ソフィア!大切に使ってくださいね!純白のロングソード…貴女にピッタリ!」


どうやら心配の必要はなかったようだ。


「シャルさん…ありがとう。私はもっと強くなります…!」


ソフィアはミスリルの剣を魔導袋にしまい、純白のロングソードを腰に挿した。


「ミスリルの剣は活躍の機会がなかったな」

「そうですね…予備の剣として常備しておきます!」


ソフィアは嬉しそうに腰のロングソードを撫でながら言った。


まさか、ソフィアが魔剣に選ばれるとは。

ソフィアと親和性が高い魔力…

少し気になるが、世界で10本しかないと言われる魔剣が手に入ったんだ。

嬉しいことだな。


「それ、シャルの剣だ!ソフィアが貰ったの!?綺麗だね!」


エマが戻ってきたようだ。


「美しい剣だ。ソフィアにお似合いだ」


カルマも帰ってきたようだ。

みんなに褒められ、ソフィアは顔を赤くしていたが嬉しそうだった。


そして、俺はみんなにこれが魔剣であることを説明した。

案の定度肝を抜かしていたが、ソフィアならあり得ると納得したようだ。


第73話ご閲覧いただきありがとうございます!


次話をお楽しみに!

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