第53話 ライバル激突
俺とカルマは武舞台へ上がった。
『本日の最終試合!!準決勝!!アレクサンダー選手VSカルマ選手!!!』
会場は大歓声に包まれる。
『どちらも超越級に近い実力を持っています!!どのような戦いになるのか見当もつきません!!先程のソフィア選手とエマ選手は鬼気迫る戦いでした!!ライバル対決!注目です!!』
「ライバル…そうだな、俺はアレクの背中を追ってきた。お前からしたら俺は取るに足らない存在か?」
「馬鹿言うな、俺と肩を並べ、共に戦える戦友。共に競い合えるのは、俺のパーティーにしかいない」
「ふっ…そうだな、言ってみただけだ」
カルマは静かに笑い剣を構えた。俺も剣を構え、カルマを見る。
「「全力でこい」」
『それでは!!はじめ!!!』
「鷹剣流『旋風』」
カルマがいきなり仕掛けてきた。速い…
「くっ…」
「お前に魔術を使う時間は与えない」
激しい剣戟が繰り広げられる。スピードは圧倒的にカルマが上か。
『属性付与:火』
俺はノーモーションで夜桜に火属性を付与した。
「ノーモーションで出来たのか」
「披露する機会がなくてな」
そして、俺は自身に火を纏わす。防御とパワーのアップだ。
カルマ相手にスピード対決は無謀だ。
「チッ…」
カルマが舌打ちをして、距離を取った。
「まだまだこれからだ」
そう言う俺の周りには無数の火の玉が浮遊している。ベリウルの戦いの時にエマが見せた技の火属性バージョンだ。
火の玉からは、熱線が放たれる。
「くそっ…!」
「それにばっか夢中で大丈夫か?」
俺は瞬時にカルマに肉薄し、鍔迫り合いになる。
俺の熱線はカルマの後方から背中に向かった。
「それは無謀じゃないか?」
カルマは跳躍し、熱線を躱した。
熱線は俺に向かってくる。
『リフレクト』
瞬間、俺の目の前に光の壁が出現する。熱線は壁に当たり、跳躍したカルマに直撃した。
「ぐっ…手数が多いな…」
カルマは再度距離を取る。
「さすがに、強いな…魔剣士」
「カルマの剣速は速すぎる…感覚をもっと研ぎ澄まさないとな…」
互いの考えを胸に、再度剣を構える。
「「いくぞ!」」
俺達の戦闘は加速する。観客には最早目で追えないレベルだ。
観客の目の前に広がるのは衝突した際に生じる衝撃とその衝撃音だけ。
『旋風!!』
『龍牙一閃!!』
幾度となく繰り返される剣と剣の衝突。勝負は拮抗していた。
「「おらぁ!!」」
〔ガキンッ!!〕
鍔迫り合いになり、再度距離を取った。
カルマは目を瞑り、鬼纏を集中させる。
「ふぅ…」
カルマの纏う空気が変わった。これは…
『鬼纏・迅』
カルマの体の周りには深紅のオーラが薄ら見える。鬼纏の中でも特にスピードに特化させた、特殊な鬼纏。これが出来る者は超越級にしかいないと聞くが。
「マジかよ…」
「マジだ」
「なっ…!?」
カルマは既に俺の後ろに居た。速すぎる。ギリギリ反応できたが、完全に後手だ。
「ぐっ…」
「鷹剣流『疾風迅雷』」
「がぁっ…!!」
カルマは再度俺の後ろを取っていた。
俺は反応出来ず、背中に斬撃を受ける。
「まだだ」
「鷹剣流『鷹登剣嵐』」
「ぐっ…はっ…」
次は正面から斬り上げられた。反応できない…
俺の身体中から血が流れる。
「おらぁぁ!!!!」
俺は爆裂魔術で自分の周囲を爆破した。
なんとか、カルマと距離を取る事に成功したようだ。
「このままじゃ、負けるな…」
流れた血の量が多く、少しふらつく。
俺は強化魔術を限界まで引き上げる。纏う火も限界まで。
「さぁ、ここからだ!」
「我流『龍牙一閃』」
俺の放った一閃は空を斬った。避けられたか。だが、
「そこだ!『昇り龍』」
「なっ…!」
俺の斬撃はしっかりカルマを捉えた。
「ぐっ…目で追えてないはずだ…」
「予測と経験だ」
カルマは再度距離を置き、機会を伺う。長くは持たない…それはカルマも同じようだ。次で決まる。
俺は居合を構えた。夜桜に纏う火は猛々しさが無くなり、静かに表面を流れる。
夜桜の柄に手をかけ、目を瞑り、極限まで集中力を高める。
「いくぞ」
カルマは鬼纏・迅を限界まで引き上げ、剣を鞘に納める。左足を引き腰を中腰に落とす。手は剣の柄を握った。
カルマ、必殺の抜刀技。
「鷹剣流 奥義『鷹神剣舞』」
「我流居合『無明ノ龍』」
銀色の斬撃と火の斬撃が交差する。
カルマは俺の後方まで来ていた。
「ぐあっ…」
血が吹き出し倒れたのはカルマだった。カルマの体には斜めに深い切り傷ができている。
俺の居合が勝った。
対する俺の体にも無数の切り傷ができていた。血は流れているが、傷は浅い。
「ふぅ…俺の勝ちだ」
大歓声が上がる。
『す、す、凄まじい戦いでした!!!もうなにがなんだか私にはわかりませんが!!すごい戦いでした!!勝者はアレクサンダー選手!!!!決勝進出です!!』
治癒の魔法陣が発動する。俺とカルマの傷は治ったようだ。俺は倒れるカルマに手を差し伸べた。
「またやろーぜ」
「ああ、次は勝つ」
カルマは俺の手を握り立ち上がった。観客席からは拍手が贈られる。なんか気恥しいな。
俺は決勝進出だ。
相手は…
「おつかれ、明日よろしくね?」
エマだ。
正直、カルマよりも勝てるかどうか怪しい。エマの成長速度は異常だ。
「ああ、よろしく。殺さないでくれよ?」
「それはわかんないかなー」
どうやら俺を殺すつもりなようだ。まぁ、お互い本気になれば殺す気くらいにはなるだろうか。
3日目終了のアナウンスを聞いて、俺達は寮に戻った。
◇◇◇
俺は自分の部屋で湯浴みを済ませ、ベッドに寝転がっていた。
「エマと本気の勝負か…」
エマと本気で戦うことに少し抵抗を感じる。そりゃそうだ、エマは俺の恋人だ。
俺が負けても優勝賞金と賞品は手に入るし、俺は別に学生最強の称号なんていらない。
「手加減したら、怒るだろうなぁ」
〔コンコン〕
「アレク?入っていい?」
噂をすればなんとやら、エマが来たようだ。
「いいぞー」
「遊びに来たよー」
そう言いエマは俺の部屋に入ってきた。
「どうした?」
「別に用はないよー、遊びに来ただけ」
そう言って俺の横に座ってきた。
「アレクに勝てるかなぁ」
「どうだろうな、やってみないとわからないぞ」
「ねぇ、アレク」
「ん?」
「手加減しようとか考えてるでしょ」
やばいな。そんなに顔に出てたか。
「顔に出てた訳じゃないよ、アレクの考えそうなことはなんとなくわかるから」
「そうか…」
「手加減したら、私レディアに帰るから」
「え!?」
レ、レディアに帰る…?そこまでなのか。
「私は、アレクを守るために冒険者になったの。だから、アレクの強さに近付くことは私にとってすごく意味があること、だから、今アレクにどれだけ近付けたのか、それが知りたいの」
「もう十分近付いてると思うけど」
「しっかり戦って、実感したい…それでも、ダメ?」
そんな覚悟を持ってこの戦いに挑もうとしてたのか。本気でか…。
エマの思いを裏切る訳にはいかないか、なによりレディアに帰って欲しくはないな。
「わかった、本気でやるよ。どうなっても俺の事を嫌いにならないでくれよ?」
「なるわけないよ」
「俺の事を愛し続けてくれるんだもんな?」
俺はニヤニヤしながらエマとソフィアの戦いの話をした。
「もう!恥ずかしいからやめてよぉ…」
「あれ?俺のそばにいたくて冒険者になったんじゃなかったか?」
「もう!嫌い!部屋戻るから!」
からかいすぎたようだ。エマは頬を膨らませて、部屋から出ようとする。
「エマ」
「ん?」
「明日はお互い、全力を尽くそうな」
「うん!また明日ね!!」
エマは笑顔で部屋から出ていった。明日は忘れられない日になりそうだ。
翌日、学生最強決定戦、決勝が行われる
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