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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第五章 学生最強決定戦
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第50話 1回戦の行方

 

 前夜祭から一夜明け、俺達はイグナシア闘技場に来ている。

 どうやら一大イベントなようで、観客が大勢入っている。特待生試験並の人数だ。


「エマ、大丈夫か?」

「ん?なにが?」

「いや、なんでもない」


 1年で立派に成長したようだ。大勢の目に晒せれることも気にしなくなった。


「対戦相手はどうなりますかね」

「ソフィアからしたら死活問題だからな」

「私は誰とも恋愛する気はないのですが…」


 カルマとソフィアも緊張は無いみたいだな。さて、誰と当たるかな。


 ◇◇◇


 開会式が行われる。舞台ではホグマンが拡声魔術でルール説明などをしている。

 拡声魔術って便利だよな、確か実況のお姉さんとかアナウンスの声を拡声魔術だったっけ。覚えてみるのもありだな。


 そう言えばこの大会に賞品とかはあるのだろうか。


 観客席には各学校校長だろうか、エバンの横に2人男性が並んでいる。特別席には国王の姿も。


『なお大会で優勝した生徒には、賞金10万Gとイグナシアの宅地が贈られる』


 宅地…?まさかの土地?そんなもんもらってどうするんだ。俺達は卒業するまで寮だぞ…。


「イグナシアの宅地だってよ…!」

「やばいな…!卒業したら、イグナシアに引越しもありだ…!」


 他の生徒たちは興奮を隠せないようだ。そうか、これは本来4か5年生に向けた大会だった。

 卒業後最高の環境で冒険者ライフが送れるよってことか。今の俺には必要ないものだ。


『それでは、対戦表を見てもらおう』


 ホグマンがそう言うと後ろにある魔導具からトーナメント表が映し出された。


「こうなったか…」


 1回戦初戦はソフィアからだ、相手はモルディオ帝国のサンズって男だ。俺はいきなり学校トップとだ。


「ソフィア、いきなり男だな」

「はぁ…憂鬱です…」


 そんな話をしていると1人の男が近寄ってきた。


「ソフィアさん!私はサンズ!この勝負勝てせ頂きます!その後は…ブホ…ブホホ…貴女は私の物です…」


 そう言いサンズはソフィアの豊満な胸を凝視したあと下から上まで舐め回すように見た。キモい。


「ひぃ…アレクさん…」


 ソフィアは俺の後ろに隠れてしまった。あんな目線を向けられたら誰でもそうなるか。

 サンズは俺を睨みつけて、去っていった。


「ご、ごめんなさい…また迷惑を…」

「気にすんな、俺は平気だ」


 そう言うとソフィアは深呼吸し、前に出た。


「では、参ります!」

「がんばれー!!」


 エマが激励し俺達は手を振った。俺達は控え室に戻り、勝負の様子を見守ることにした。


 ◇◇◇


『さぁ!!今年もやって参りました!学生最強決定戦!!!イグナシア、ミアレス、モルディオの3ヶ国の代表者学生冒険者による最強を決めるこの大会!!果たして誰が王者に輝くのか!!』


 特待生試験の時も実況をしていたお姉さんが実況している。人気なのかな?


『さっそくやっていきましょう!!1回戦!第1試合!サンズVSソフィア・イグナシア!!!』


 両選手が武舞台に立つ。


「ブホ…この試合が終われば…国王陛下、いや…お父様にご挨拶にいかなければ…ブホホ…」


 サンズは1人ブツブツ言っているが目線はソフィアの胸に釘付けだ。


「不快ですね、叩きのめしましょう」


 最初は気持ち悪がっていたソフィアだが、段々その感情が怒りへと変わっていった。


『モルディオ帝国のサンズ選手は亀剣流上級の使い手で、その硬さは自称モルディオ1番だそうです!!』


 自称かよ…


『対するソフィア選手は我らがイグナシア王国の若きA級下位冒険者!!虎剣流を超級まで使いこなします!!2年生ながらもA級下位のパーティーに属し、その美麗な剣筋は見る人を魅了します!!』


 上級対超級…

 等級だけ見ればソフィアが優勢だ。しかし、対人戦闘において等級の差は、使える技を示す指標でしかない。

 相手に頭脳がある分、一発逆転もあるという訳だ。


『それでは!!はじめ!!!』


 戦いの合図が響き渡った。


「虎剣流『猛虎』」


 ソフィアが先制を仕掛けた。


「ブホホ…亀剣流『甲真か…ブホォブェ!!!」


 勝負は一瞬だった。


『瞬殺だぁぁぁぁあ!!!正に瞬殺!!!ソフィア選手の虎剣流がサンズ選手の亀剣流を打ち破ったぁ!!若き姫剣士!!!ソフィア!!1回戦突破です!!』


 ちなみに、武舞台には超級の治癒魔術の魔法陣が展開されている為、胴体を真っ二つにしたり、 首を落としたりしなければ死ぬことはないようだ。


 ソフィアが控え室に戻ってきた。


「おつかれ、ソフィア」

「はぁ…少しムキになってしまいました…」

「あれぐらいやらなきゃ!さすがソフィアだよ!」

「さすがだ」


 ソフィアはなにか落ち込んでいるが、エマの言う通りあんな輩は叩きのめすに限る。

 そう思いながら次の試合を見ていた。


『勝者はエルニア選手です!!2回戦進出おめでとうございます!』


 どうやらミアレスのエルニアと言う男が勝ったらしい。あいつもソフィアに言いよっていたな。

 まぁ、ソフィアが負けるとは思えないが。


 ◇◇◇


『どんどんいきましょう!!1回戦!第3試合です!!』


 エマの出番だ。相手はセイヌと言う女性の魔術師だ。


「いってくるね!」

「相手殺すなよぉ」

「殺さないよ!」


 俺達はエマを見送り、試合を見守る。


『選手が武舞台に上がりました!!モルディオ帝国のセイヌ選手!!現在A級下位冒険者で、火魔術のスペシャリスト!!現在火魔術は超級だそうです!!』


 エマは対人戦闘は特待生試験以来か。あの時も上手く立ち回れていたし、心配はないだろう。


『対するはイグナシア王国のエマ選手!!現在大躍進中のソフィア選手と同じA級下位パーティーのメンバーです!!去年の特待生試験の大活躍は記憶に新しい人もいることでしょう!!その美貌から放たれる魔術は正に芸術です!!』


 すごい紹介だな…この実況のお姉さんはただのエマのファンだろ。


『エマ選手は現在…え!?風魔術と聖魔術が、超越級!?』


 観客席がザワつき始める。

 わずか11歳にして、超越級を扱うのはやはり規格外みたいだな。


『たった1年で大きな成長を遂げています!これは期待が高まります!』


 武舞台ではエマとセイヌが向かい合っている。

 エマは人見知りでオドオドしているのをセイヌが苦笑いしている。


「エマさん、お互い頑張りましょう!」

「は、はい!よろしくお願いします!」


 両者戦闘態勢に入る。


『それでは!!はじめ!!!』


 戦いの合図が響き渡った。


 エマは強化魔術を施し、風を纏った。

 風を纏うことで素早さとパワーが上がる。


 対するセイヌも強化魔術を施し、火を纏った。

 火を纏うことで防御力とパワーが上がる。


 拮抗した戦いになるかと思ったが、そうはならなかった。


「まぁ…そうなるだろうな」


 俺はその様子を見てポツリと呟いた。


 エマはセイヌに肉薄し、その拳はセイヌの鳩尾を完璧に捉えていた。


「がはっ…」


 セイヌはその場に倒れた。


『な、な、な、なんだぁぁあ!?何が起こったんだ!?一瞬でエマ選手が消え、いつの間にかセイヌ選手の鳩尾を捉えていました!!!恐るべきスピードです!!勝者はエマ選手!!2回戦進出おめでとうございます!』


 エマは拍手に包まれながら武舞台を降りた。


「ふぅ…相手の火と強化魔術貫けてよかったよ」

「そんな気負わなくても、あの程度の練度だったら強化魔術だけでもいけてたな」

「セイヌさんも頑張っていたんだから、そういうこと言わないの!」


 そう言ってエマは俺の額をチョップした。あのレベルでA級下位か。俺達がS級レベルって言われるのも納得だ。


 今回は単純に相手の熟練度が足りてなかった。エマは中衛、後衛にいる時も常に風を纏って素早く動けるようにしている。

 エマの強化魔術を見て、対抗しようと考えた時点で詰みだ。


 次の試合はライザと言う、イグナシアの4年生が勝利した。

 次のエマの相手だな。


 ◇◇◇


「次は俺だな」

「頑張れよ〜」


 カルマは立ち上がり武舞台に向かった。

 カルマの相手はモルディオ帝国のウルマニという女性剣士だ。さて、どんな戦いになるのやら。


『次の試合は!ウルマニVSカルマ!!』


『モルディオ帝国のウルマニ選手は鷹剣流の超級剣士です!!モルディオ帝国の冒険者学校ではトップの成績だそうです!!冒険者ランクはA級中位!!美しく長い手足からどのような攻撃が繰り出されるのか!!』


 カルマの相手はどうやら学校のトップらしいな。俺と言いカルマと言い引きがいいな。


『対するはイグナシア王国のカルマ選手!!ウルマニ選手と同じく鷹剣流の超級剣士です!!カルマ選手はエマ選手、ソフィア選手と同じA級下位パーティーに属しています!!その剣の腕は誰もが認めるもの!!どんな戦いが繰り広げられるのかぁ!!!』


 武舞台ではカルマとウルマニが向かい合っている。


「よろしくお願いします」

「よろしく頼む」


 一言交わし、互いに剣を構えた。


『それでは!!はじめ!!!』


 戦いの合図が響き渡った。


「てりゃぁぁぁあ!!!!」


 素早い動きで、ウルマニが一気に肉薄する。

 さすがと言うべき速度だ。


「鷹剣流『疾風』!!」


 しかし、


「な…に…?」

「この間の山賊よりは強いな。だが、まだ"壁"は見えていないようだ」


 カルマはいつの間にか肉薄してきたウルマニの背後にいた。


「鷹剣流『旋風』」

「がっ…」


 ウルマニの体に無数の斬撃が襲いかかり、白目を剥いて倒れた。


『うぉぉぉ!!!すごいすごいすごい!!!学校のトップを相手に瞬殺です!!目にも止まらぬ剣さばき!!正に"神速"!!勝者はカルマ選手です!!!』


 ウルマニも十分速かった。ただ、カルマがもっと速かった、それだけだ。


「神速は言いすぎだ…」

「いいじゃねーか、"神速の剣士"カルマくん」

「からかうなよ…」


 どうやらカルマにも良い2つ名ができそうだ。


 次の試合はゴンズと言う魔術師が勝利し、その次の試合はシザスと言う剣士が勝利した。


 さぁ、いよいよ俺の番だ。


第50話ご閲覧いただきありがとうございます!


次話をお楽しみに!

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