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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第四章 冒険者学校 その2
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第46話 つまらないクエスト

 

 モル爺こと、鷹剣流元滅級剣士モルガナと模擬戦をすることになり、道場に立った。周りはザワついている。


「誰だあいつ…」

「剣を持ってる、道場破りか?」

「師範に喧嘩売るやつなんているんだな」


 道場破りとか物騒な単語が出たが無視しよう。元滅級と模擬戦…勝てる気はしないがやれることはやろう。


「儂はお主に一撃を放つ、もしお主が儂の剣を止めることが出来ればお主の勝ちじゃ。良いか?」

「勝てたらなにか貰えますか?」


 別になにか欲しい訳じゃない、一応言ってみただけだ。


「ふぉっふぉっ、そうじゃのぉ…世界では語られてない"勇者の話"なんてのはどうじゃ?」

「わかりました、それでいきましょう」


 勇者の話…まさかこんなとこで聞けるとは…勝てばの話だが、俄然やる気が出てきた。

 俺とモルガナは対峙する。


「その黒剣を使って構わぬ、お主の全力を出せ」

「はい」


 俺は今できる最大限の強化魔術を体に施し、居合の構えをとった。


「ほう…居合か…」


 俺は目を閉じ全神経を集中させた。


「これは…無我の境地…?いや、また別の代物じゃのぉ…大した男よ」


 モルガナは木剣を構えた。


「ゆくぞ」


 勝負は一瞬。


「鷹剣流『疾風迅雷』」

「我流居合『無明ノ龍』」


 〔ガンッ!!!〕


「ぐっ…」

「儂の剣を受け止めよったわい!!」


 モルガナが驚く。


「え!?なに!?何が起こったの!?」


 ファナが困惑している。


「一瞬でモル爺が消えて、すごい音が鳴って、気付いたらアレクがモル爺の剣を受け止めてた…」


 エマが冷静に状況を判断している。傍から見たらモルガナが消えたように見えてたのか。道場が再びザワつく。


「うそだろ…師範の剣を止めた」

「あいつ、もしかしてカルマさんのパーティーのリーダーじゃないか?」

「それじゃ、あの人が忘却の魔剣士…」


 忘却の魔剣士の名前はタカハシ村にも広がっていたのか。しかし、


「止められるとは思わなんだ!やるのぉ!」


 このタヌキじじい、手抜きやがった。手を抜かれるくらいなら、ぶちのめされた方がマシだ。


「アレク、じいさんは手を抜いた訳じゃないぞ」


 俺の気持ちを察してか、カルマがそう言ってきた。


「あの人が本気を出せば、木剣でも人を殺せる。だから、力を調整するんだ」

「手を抜いていることに変わりはないだろ」

「そうかもな、でも、俺はあのじいさんにあそこまで力を出させたことはない」


 そうか、なるほどな。殺さないギリギリを見極めていたのか。まぁ、なんにせよいい経験になった。


「モル爺さん、報酬の話は、迷宮から帰ったらお聞きしますね」

「了解じゃ、がんばるんじゃぞぉー」


 俺達はモルガナに手を振りながら道場を出た。


 ◇◇◇


 俺達はファナを自宅に送り、そのまま迷宮へ向かった。


 〜タナカ迷宮〜


「ここがタナカ迷宮?」


 高い岩の壁がそびえ立っている。


「ああ、500年程前にいたタロウ・タナカという魔術師が強力な岩魔術で作った巨大な迷路だ。時が経ち、特異点が迷宮に現れ、タナカ迷宮は特異エリアになったらしい」

「迷路か…めんどうだな…」

「いや、迷路は全て踏破されている。地図もあるから簡単だぞ」


 そりゃそうか500年前の迷路だもんな。


「迷路ってワクワクするね!」

「迷子になりそうです…」

「地図あるのに迷子になる方が難しいだろ」


 確か、大量発生したAランクモンスターの討伐だったな。


「大量発生したモンスターは確かサイクロプスだったな、Aランクでも強力な個体だ、十分に警戒して討伐するぞ」

「「「了解」」」


 それから俺達はサイクロプスを捜索した。しばらくして、


「いたな」

「でも…6体…?」

「多すぎませんか?」

「多いな」


 なんでこんなに多いんだ。

 ここは中層だ、Aランクは時々出るぐらいが普通なはず、それに同じ種がこんなにいるのは異常だ。


「とりあえず、こいつらを片付けるぞ!」


 俺達はサイクロプス6体を討伐した。


「はぁ…はぁ…流石に6対相手はしんどいね」

「はい…まだいるのでしょうか」


 Aランク6体はさすがに堪えるな。


「深層の入口まで行ってみよう、なにかわかるかもしれない」


 中層の最奥、深層の入口に着いた。


「なんだ…これ」

「大量の魔力石?」


 深層入口付近にはなぜか大量の魔力石が置いてあった。サイクロプスは魔力石を嫌う習性があると聞いた。

 これが、入口付近にあるということは。


「サイクロプスが深層に戻れなくなってるんだ」

「えー、そんなくだらないこと?」

「誰かがわざとやっているのでしょうか?」

「だろうな」


 おそらくは、深層を調査する為にサイクロプスを追い出したってとこだろう。


「深層を探索できる力もないのに、何がしたいんだ」

「迷宮の宝目当てだろうな」

「お宝!?」


 エマが目をキラキラさせている。まぁ、迷宮にお宝って聞いたら冒険者なら誰しもが目を輝かすだろう。


「この迷宮にお宝なんてあるのか?」

「ない。だが、ここに来たやつはあると信じきって入るんだ。表層に無ければ中層、中層に無ければ深層ってな」

「なるほど、それでサイクロプスが怖くて追い出した後、魔力石をそのままに中に入ったのか」

「そうなるな」


 馬鹿なヤツもいたもんだ。サイクロプスを追い払った所で待つモンスターはSランクだ。


「大量発生の依頼が来たのは4日前、まだ魔力石が回収されてないということは。死んでるな」

「だろうな」

「はぁ…回収するか…」


 俺達は魔力石を回収し、深層入口近くで様子を伺っていた。


「大量のサイクロプスが戻っていってるな」

「これで万事解決だね!」

「手応えのないクエストでしたね」

「そうだな」


 やりがいの無さを感じながらタナカ迷宮を後にした。


 ◇◇◇


 タカハシ村に戻り、俺達はファナの家の鍛冶屋に向かった。カルマのミスリルの刀を取りに行くためだ。


「ガツさん、剣できてますか?」


 カルマが扉を開け、中に入った。俺達も後に続く。


「おー!カルマ!できとるぞ!ほれ!」


 そう言ってガツは刀型の剣をカルマに渡した。

 カルマは鞘から抜く。

 刀身は細めで少し反った形が特徴的な、刀を模した剣。

 ミスリルを使用したため、淡い緑色だ。


「そのプラチナの剣より軽いはずだ!慣らす為に時間をじっくり取れよ!」

「はい、ありがとうございます。アレク、少し付き合ってくれ」


 カルマはそう言うと新品の剣を持って表へ出た。


「店の前でやってもいいのか?」

「問題ない、新しい得物を使う時はみんなやってる」

「そ、そうか」


 鍛冶屋からガツとファナも出てきた。俺は腰から黒刀を抜き構える。適当な打ち合いが始まる。


「あ!?あの坊主の剣も刀じゃないか!漆黒の刀なんて俺は打った覚えないぞ!」

「色々複雑な事情があってね、あの刀の入手先は分かってないの。でも、アレクにすごく馴染んでるから、あの刀もアレクを気に入ってるんだよ」


 ファナがガツに大雑把に説明した。


「ミスリルの剣はどうだ?」

「軽いな、空気まで斬れそうだ」

「カルマの剣速も今まで以上に上がりそうだな」


 そう言って俺達は打ち合いを終えた。


「ガツさんお代は?」

「いらねーよ!俺の最高傑作が更新したんだ!その剣でもっと強くなれ!」

「ありがとうございます」


 これで、パーティー全員の装備の新調が終わったな。


 さて、あとはモル爺の所で勇者の話か。俺からしたらこれが本命になるな。


「俺はモル爺の所に行くが、お前らは家に戻るか?」

「ん?一緒に行くに決まってるじゃん」

「俺も行く」

「私も同行します!」


 聞くまでもなかったか。


第46話ご閲覧いただきありがとうございます!


次話をお楽しみに!

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